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fxdondon presents 世界の政治・経済・財政を考察し、外国為替相場を読み解きましょう

進まぬ円安

日経スタイル
「やはり、経験則通り8月は円が買われるな」。円相場が急騰した局面で投資家から出た声だ。円は一時1ドル=104円台半ばを付け、上場企業が想定する為替レートの平均(約109円)を大幅に上回る水準になっている。
確率は70%――。過去20年間について円高・ドル安になった確率を月別に調べると、8月はそうなる。一昨年も昨年も小幅円高となった。夏休み前に日本の輸出企業が為替予約(先物のドル売り)を増やすことなどが背景とされるが、今年はもっと大きな力が働く。
まずFRBが7月31日、10年半ぶりとなる政策金利の引き下げを決めた。日米金利差が縮小することで円買い・ドル売りを招きやすい。
既に世界の市場は混乱。米利下げが2020年以降に長引くシナリオが意識されるのは自然で、日米金利差の縮小観測から円は一転して買われやすくなっている。市場が混乱してリスク回避ムードが広がる局面では「安全通貨」と目されている円へのマネー集中も起きやすい。
01年は日銀が量的緩和日銀当座預金残高を操作目標にする初期の量的緩和)を始めた頃だが、追加対応の余地があった。だが今の日銀は余力が限られる。誘導対象とする長短の金利ともマイナスにある。米国との緩和競争になれば劣勢になりそうだ。
そういう意味で、07年秋以降の米緩和局面の再現になるリスクにも注意が必要だ。08年には世界的な金融危機も発生。FRB金利の引き下げだけでなく量的緩和にも踏み込んだ。日銀は「緩和負け」した印象を与え、11年に円は75円32銭の戦後最高値を付けた。
FRBが今回、そこまでの対応をするかはわからない。ただ、米中貿易摩擦の激化以外にも、世界経済にはリスクが多く、円買いを招きやすい。イラン情勢の緊張など地政学的リスクも無視できない。英国の欧州連合EU)からの「合意なき離脱」が現実になれば、グローバル経済を混乱させそうだ。

機関投資家 外債敬遠
生命保険など国内保険会社が外国債券の新規購入ペースを落としている。保険会社はこれまで円高に振れると活発な外債投資を続けてきたが、このところ買いにブレーキがかかり、円売りの勢いが弱まっている。
生保は6月に外債を1・2兆円と大幅に買い越し、4~6月には2・3兆円の残高積み増しに動いた。しかし、7月は620億円にとどまり、8月に入っても国内生保による大規模な外債投資の情報は聞こえてこない。
米国債の利回りは低下し、1年分の受け取り金利は日々の為替変動で簡単に吹き飛びかねない水準にある。しかも、トランプ米大統領FRBに対して大幅な利下げ要求を繰り返しており、円高圧力は増す一方だ。
このため、「債券の値上がり益や利息が円高で消えるリスクが大きい」(国内投信会社)として、外債投資を見送る雰囲気が強いという。一方、為替市場では「生保に代わって公的年金が外債購入のために円を売り、隠れ円売り介入に動く」との見方もある。

サンケイ
国内主要企業115社に対するアンケートからは、米中貿易摩擦の激化や主要中央銀行による金融緩和競争を背景とした円高を予想する企業が5割を超えた。比較的安全とされる日本円が買われやすい局面が続き、今後の為替相場の方向性については、「円高」との回答が52%と過半を占めた。「分からない」は21%、「円安」と回答は7%にとどまった。
円高のリスク要因としては、「米中貿易摩擦」や「英国の欧州連合(EU)離脱の帰趨(きすう)」、「中東情勢」などが挙がった。
「来年の米国大統領選まで、トランプ大統領は中国に対し、強気の姿勢を取ると考えている」(保険)、「主要国の今後の金融政策次第では、リスク回避のため円が選好され、円高方向に振れる場面が生じてもおかしくない」(銀行)といった見方が目立った。
来年1月末時点の対ドル円相場の水準見通しについては、「1ドル=106~110円」が46%を占めてトップ。「101~105円」(23%)が続いた。