fxdondon’s blog

fxdondon presents 世界の政治・経済・財政を考察し、外国為替相場を読み解きましょう

相場予想各種

住友商事グローバルリサーチ株式会社
経済部  2018年12月

世界経済の先行きに対する下押しリスクへの懸念が色濃くなっている。「一強」状態だった米国に対して、日欧の景気には弱い一面がみられたという構図の中で、堅調な米景気を背景としたドル買いと、リスク回避の円買いがせめぎ合う状況になり、ドル円は横ばい圏で推移してきた。そうした動きは、円高・円安要因が拮抗している足もとの経済ファンダメンタルズからも裏付けられる。その一方で、足もとのユーロ円レートは、欧州政治・経済リスクなどから、円高方向にある。先行きについては、経済状況に基づくと、引き続き横ばい圏内で推移すると見込まれる。ただし、政治・経済リスクを踏まえれば、円高リスクを考えざるを得ないだろう。
為替レートの先行きについて、検討してみよう。
まず、足もとでの原油価格の下落によって、今後の物価上昇率は鈍化すると見込まれる。これは購買力平価要因や実質金利差要因を通じて為替レートに影響を及ぼす。賃金が上昇傾向にあるとはいえ、日本の物価上昇圧力は弱い。そのため、円高を想起させやすくなっている。
米国の利上げペースが緩やかになれば、円安圧力は当初の想定ほど働かなくなる。欧州についても、予定通り年末に資産買い入れプログラムを終了したとしても、次の利上げが遠のくようなアナウンスがあれば、ユーロ高圧力にはなりがたいだろう。その一方で、経常黒字を背景とした日本の対外資産増加という傾向には大きな変化がないとみられるため、リスクプレミアム要因は円高要因となりつづけるだろう。
こうしたことを踏まえると、為替レートは当面横ばい圏内の推移となるものの、円高圧力がじわりと高まっているといえるだろう。
当面注目されるリスク要因は、貿易摩擦があげられる。2019年には、日米間の物品貿易協定(TAG)交渉が本格化する見込みだ。そこでの注目点は、自動車輸出や為替条項などである。また、米中貿易戦争でも、知的財産権や技術移転などの根深い問題が残されており、交渉が難航することが予想されている。
また、欧州政治では、当面Brexit交渉、イタリア予算問題・政治リスクが懸念材料である。その他にも、ギリシャの債務返済状況、ドイツ政治状況、欧州議会選挙など、市場がリスクとみなしうる項目は数多くある。
こうしたことを考えると、市場にとって先行き不透明感が高まる要因が多いため、円高シナリオをリスクとして意識せざるを得ないだろう。


(株)日本総合研究所 為替相場展望 2018年12月

ドル円相場:ドルが底堅く推移 米中貿易摩擦や景気の先行きに対する不透明感が払拭されないなか、少なくとも当面は113円台を 中心とする神経質な展開が続く見込み。 今後、米中の貿易摩擦激化や景気の先行きに対する懸念が一時的に和らぐ局面では、日米金利差の拡大と株高によるリスク選好の動きに支えられる形で、円安ドル高が進みやすくなる見通し。 もっとも、①2019年春以降も米中の貿易摩擦が 続くと見込まれること、②財政拡大や金融緩和の 効果が減衰するにつれて米国景気が減速し、19年半ば頃にFRBが利上げを休止すると予想されることなどから、来年後半にはドル高一服へ。
◆ユーロドル相場:短期的なユーロ反発余地は小さい。米国の早期利上げ打ち止め観測などから、ドル高に伴うユール安圧力は和らいでいるものの、 ユーロ圏景気や政治情勢に対する不透明感がくすぶるなか、当面はユーロの上値の重い展開が続く見込み。 19年入り以降は、ユーロ圏景気が上向くなかで、秋以降の利上げ着手が意識されるECBと、 利上げの打ち止めが意識されるFRBという金融 政策の局面の違いを反映して、ユーロが堅調さを取り戻していく見込み。
◆ユーロ円相場:ユーロの上値の重い展開 ECBが利上げを急がない姿勢を示すなか、当 面は対円でもユーロの上値の重い展開が続く見込 み。年内はイタリアの財政問題Brexit交渉を巡 る不透明感の高まりなどが、リスク回避の動きを通じて折に触れ円高ユーロ安要因に。 19年入り以降は、ユーロ圏景気が持ち直すなかで、金融政策の正常化を進めるECBと金融緩和の出口に向けて動けない日銀との金融政策の方向性の違いを反映して、ユーロ高基調に復していく見通し。


ニッセイアセットマネジメント
投資環境見通し12月号

米国は保護貿易的な観点から過度なドル高円安には牽制姿勢を強めるものと見られることから、基本的には円高圧力が 続くものと予想します。一方、日米の金融政策格差を材料に、投機筋主導で大幅な円高進行にブレーキがかかるものと考 えられます。以上から1ドル=112円を中心に概ね横ばい圏での推移を予想しますが、米利上げ打ち止め観測が台頭してく る過程ではドル高圧力が弱まり、1ドル=110円割れを試す展開も想定されます。
中国景気減速などを受けた投資家心理の悪化を背景としたドル高や、イタリアの財政懸念等からユーロ安圧力が続いて いますが、今後は減速が続くユーロ圏での景気回復と物価停滞の持ち直しや、米利上げ打ち止め観測の台頭などから、 ユーロが徐々に反発に向かうものと見込みます。
豪州準備銀行(RBA)は12月の金融政策理事会で政策金利を引き続き据え置きました。2018年の金融政策は、堅調な国内景 気ながらも低インフレが続き、中立的な金融政策姿勢が継続する形となりました。声明では、景況感は明るく、鉱業以外の 設備投資や公共インフラ投資の増加が見込まれ、資源輸出も伸びているとしています。不透明要因は家計消費の見通しであ り、家計所得の伸びは依然として低水準で、債務の水準が高いとの前回の見方を維持しました。労働市場の見通しは明るく、 失業率は一段と低下すると見ており、一部には技術者不足が報告されているとし、賃金の伸びがやや上向いていることにつ いては歓迎すべき動向であるとしました。 基調インフレ率は今後数年緩やかな上昇が見込まれ、目標に近づいていくとのRBAの見通しから、市場では2019年の10 月~12月頃には利上げ基調に転じるとの見方が出てきています。
当面は、オーストラリア経済は好調な企業収益などから緩やかな成長基調をたどるものと予想され、底堅い推移を想定し ますが、米中貿易摩擦などの外部要因には引き続き状況を慎重に見守る必要があると思われます。
目先は米中の貿易摩擦問題などを巡り神経質な展開が続く可能性がありますが、貿易黒字や財政 支の動向が下支えになる中、オーストラリア経済が今後も緩やかな成長基調をたどると予想される一方、日本では日銀が積極的な緩和姿勢を継続していることなどから、豪ドルは対円で底堅く推移するものと予想します。


アライアンス・バーンスタイン
世界経済・金融市場の見通し 2018年12月号

2018年はやや減速するも底堅い成長を保ち、2019年も3%前後の経済成長が長期化
2017年は米欧を中心に先進国の総需要が拡大、中国経済の安定などを背景に、世界経済の成長率は 約3%と5年ぶりの高成長。2018年は、貿易戦争などへの懸念で製造業は減速しているが、米国の拡張的な財政政策の支えで、先進国を中心に3%前後の高成長が保たれていると認識。
2018年半ばから製造業や新興国の景気減速がみられるが、米国経済の底堅い成長が支えになり、世 界経済は2019年まで3%前後の経済成長が続くと予想。米国による関税引上げが広がっているが、米国の個人消費や拡張的な財政政策の支えで、大幅な景気減速には至らないと判断。
また、中国では、春先からの金融緩和政策に続いて2019年にかけて1~2兆元規模の財政政策の出動が想定され、中国経済は緩やかな減速にとどまるとみています。中国経済の安定によって、新興国経済を含め2019年の世界経済は底堅い経済成長が持続すると予想。
米国と日本の金融政策姿勢は異なる状況が続く中で、110円付近のレンジ相場が続く見通し。ユーロ米ドルは、政治リスクの材料で上下する中で、1.1台での推移が想定され ます。また、2018年5月に大きく新興国通貨が下落、米国金利上昇や政治リスクの高まりが背景となっていますが、一部の新興国通貨は割安な領域に達しており、資金流出の一服とともにリバウンドする兆しがみられています。
米ドル/円 横ばい
豪ドル/円 円高
ブラジル・レアル/円 横ばい
中国元/円 横ばい
インドネシア・ルピア/円 横ばい
南アフリカ・ランド/円 円高


信金中金 地域・中小企業研究所
為替見通し 2018年12月

為替相場:当面はレンジ相場が続こうが、金融政策の方向性の違いから徐々に円安方向へ 金融市場がやや不安定に推移するなか、安全資産に位置づけられる円へのニーズは根強いものの、米国景気の堅調さを反映したドル買いもみられることから、円ドル相場は狭いレンジでもみ合う展開が続いている。当面はボックス圏での推移が見込まれるが、日米の金融政策の方向性の違いから、徐々に円安基調にシフトすることが予想される。


明治安田アセットマネジメント
投資環境見通し 2018年12月

・米ドル:7~9月期の実質GDP成長率(前期比年率)は前期から減速したものの、引き続き潜在成長率を上回るペースとなって います。FRB議長は政策金利について経済に対して中立的な 水準をわずかに下回ると述べ、現在の利上げサイクルの終了時期を慎重に模索する姿勢を示しています。米ドルは円に対して、 日米の景気格差に加え、米国企業による資金の本国回帰の動きも予想され、底堅く推移するとみています。ただし、日米間の 物品貿易協定(TAG)交渉を巡って為替条項の行方が注目され ることから、上昇局面においても上値は重くなるとみています。
 ・ユーロ:7~9月期の実質GDP成長率(前期比)は前期から減 速し、足元では製造業PMIが景況判断の節目とされる50を上 回っているものの低下基調にあります。ECBは利上げに対する 慎重な姿勢を続けるとみられます。景気動向に加えて足元で はイタリアの2019年予算案を巡るEUとの対立がユーロの下押し材料となっています。ただし、ECBによる将来的な金融政策正 常化を目指す動きもあり、調整一巡後は底堅い動きになるとみています。
・ブラジルレアル:次期大統領による財政再建期待が支援材料 と考えられますが、下落基調にある原油価格が重しになるとみ ています。 ・インドネシアルピア:中央銀行政策金利を引き上げました。 経常赤字に対する懸念は根強いものの、安定した経済成長を 背景に底堅く推移するとみています。
南アフリカランド:準備銀行は政策金利を引き上げました。しかし、景気は低迷しており、上昇一巡後は下値を模索する展開になるとみられます。