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米国債務不履行の高まる懸念

アメリカ・ウォッチ
米政府閉鎖は壊滅的な債務不履行を引き起こす懸念がある為、下院議会はその危険性を防ぐ為、政府に融資し、現在期限切れになっている負債限度を停止する為の法案に投票した。下院での投票結果は、負債限度を一時的に解除するこの法案に共和党が誰も同意しなかった為、完全な党派ラインでの可決になった。この下院の法案が上院議会で通過しない場合、行き詰まりに終わる可能性がある。結果的に米国政府が債務不履行に陥った場合、米国およびグローバル経済に多大なダメージを与えることを懸念し、今月初旬に二人の元財務長官が上院少数派リーダーのミッチ・マコーネルとバイデン政権下の財務長官にコンタクトを取っていた。
これまで知られていなかった会談について報告したワシントン・ポストによると、ジョージW・ブッシュ政権下で財務長官を務めたヘンリー・ポールソンとトランプ政権下で財務長官であったスティーブ.・マヌーチンは今月、ジャネット・イエレン財務長官と上院共和党少数派のリーダーであるミッチ・マコーネルと、現在世界経済を脅かしている債務制限の行き詰まりを解決することを望み、個人的な話し合いを行った。ゴールドマン・サックスで一緒に働いていた両氏は、「バイデン政権が国の債務不履行を防ぎ、世界的な金融危機を引き起こさないように努めている」ため、ポールソンとマヌーチンはここ数週間、マコーネル及びイエレンとの会談を行った。この前代未聞の行動は「連邦債務の前例のない債務不履行」が起きた場合、米国は、可決したすべての法案に関連する支払いに必要なお金を借りることができないため、経済学者や米国のビジネス関係者の間で「広範な警戒があることを反映」している。多くのエコノミスト債務不履行は、金融市場の崩壊を引き起こし、リセッションと呼ばれる経済不況の可能性がある災害につながると予測した。
最近、イエレンは債務の上限を10月のある時期までに引き上げるか又は一時停止する必要があり、そうしない場合、国の財政状況は厳しくなると警告した。ポールソンは先週、米国議会議事堂のマコーネルの事務所で彼と会い、両党で合意に達していない債務制限について話し合った。主にこの問題に関する「マコーネルの見解に耳を傾けた」ポールソンは、共和党の支持なしに、民主党は債務限度を引き上げなければならないというマコーネルの立場を確認した。ポールソンは、その会談で、連邦政府債務不履行の危険性と可能性、それが世界経済に与える影響について「高度な懸念」を表明したとポストは伝えている。ポールソンは2008年にマコーネルや他の議員と緊密に協力し、金融危機に対処した元財務長官である。また、マヌーチンは、債務不履行に陥った場合、どのような壊滅的な状況になるのか、同様の懸念を明らかにする為9月上旬にマコーネルに電話したという。彼は、マコーネルが、債務上限を上げるのは民主党だけで承認する必要があると真剣に考えているとバイデン政権に伝えた。
債務不履行の懸念が高まっている中で、21日下院議会は政府閉鎖を防ぎ、経済的悪影響を避けるため、債務制限を一時停止するための法案を220対211票の完全な党派ラインで可決した。 下院の法案は、12月3日までの資金を政府に提供し、2022年12月中旬まで、連邦借入の制限を解除している。これには、アフガニスタンからの難民とハリケーンでの自然災害の緊急資金が含まれている。この法案に対して、共和党はブロックすると警告している。マコーネルは「米国は債務不履行に陥ってはならない。私たちは決して債務不履行になったことはない。決してそうしません」と宣言した。しかし、彼は、多数派である民主党が「予算調整プロセスを通して債務上限の引き上げを彼らだけで承認しなければならない」と、再度公的に語った。一方、民主党は、負債は両党が追っている責任であるため、これは超党派の問題として解決するべきであると述べている。この大きな違いが、行き詰まりの原因である。しかし、トランプ政権下で共和党が多数派であった時、民主党債務不履行を防ぐ為、3回、債務上限の停止を承認する為の投票で援助したが、共和党は現在「民主党を援助をすることを拒否している」とポストは伝えている。
マコーネルのこの党派的態度は、経済学者も不可解に思っているようである。クリントン政権オバマ政権下で奉仕した経済学者ローレンス・サマーズは、民主党が債務限度を上げるための援助をマコーネルが拒否したことに対して非常に批判的である。サマーズ は「私たちは超党派的な方法でこの債務を引き受けました。 私たちは超党派的な方法で債務を拡大する準備ができています。現実を認めることを拒否することが正当化される理由は理解できません。現実は党派的なものではありません。債務限度を引き上げることは現実を認識することであり、党派的な選択ではありません」とインタビューで語った。
つまり、マコーネルは、この現実を無視した党派的態度を貫いている。従って、多くのメディアは、利己的、子供じみている、彼が知っている言葉は権力だけである、国より党派の有利性を優先しているなど、様々な表現で批判している。この現状は、米国市民に伝わっているが、政府が閉鎖され、政府労働者、契約業者、およびその他への支払いが不可能になった場合、壊滅的な状況になることは目に見えている。財務省は既に、主婦が家計のやりくりをすることに似たような、あらゆる角度からの予算修正をおこなっが、10月初旬に、財布は空になると伝えている。イエレン財務長官は、米国が10月中に請求書の支払いを継続するためのすべてのオプションを使い果たしたので、9月30日までに政府に資金を提供するための法案を通過しなくてはならないと議会の指導者に警告した。経済学者サマーズはマコーネルの態度を的確に描写している。マコーネルは理由を明確に語っていないが、国の保護を優先することより、バイデンを敗北させることが彼の最大の関心のように見える。いずれにしても、下院で通過した法案は上院では60票を必要とするため、可決しない可能性が高い。下院議長ナンシー・ペロシと上院民主党多数派リーダーのチャック・シューマーは最後の土壇場で、どのような戦略を保持しているのか不明であるが、今日バイデンは、緊迫した状況下で民主党のリーダー達と一連の会合を行なっているようである。