fxdondon’s blog

fxdondon presents 世界の政治・経済・財政を考察し、外国為替相場を読み解きましょう

超円安水準(1ドル100円超)の是正に備えよ

今が歴史的な円安水準だと知っていましたか?
実質実効為替レートで見てみよう

鈴木 貴博 : 経済評論家、百年コンサルティング代表

為替レートがどちらにどう動くのか? それが円高だとしたら日本株は本当に暴落するのか? この局面で投資家が気をつけておいたほうがいいことがあります。
それは、今も含めて過去5年間の円相場は歴史的な円安水準にあるということです。
「いや、1ドル105円なんてこれまでの歴史で見ればぜんぜん円高のほうに入る水準じゃないの?」
とおっしゃる人も少なくないと思うのですが、今回は「実はそうではない」という話をしたいと思います。
わたしたち経済評論家が円高や円安を語る際には、多くの人がご存じのドル円の名目為替レートを見るのではなく、日本銀行が発表する実質実効為替レートの推移を見ます。
これは簡単にいえばインフレ率とドル円だけでなく他通貨との関係も加味したレートですが、グラフにすると円の実力が見えてきます。実質実効為替レートは名目レートとは反対に数値が低いほど円安となります。1990年から2000年にかけて実質実効レートは名目の為替レートとほぼ同じ動きをしていたのですが、その後は名目の為替レートと実質実効為替レートが乖離。デフレ経済が本格化して以降、日本円は円安方向にひたすら向かい、2013年に日銀が黒田バズーカをぶっ放した後は1980年代前半よりも円安になったことがわかります。
つまりここ最近の5年間は過去40年間の中でいちばん円安なのです。
そして、日本経済が苦境にあえいだ2011年から2012年ころにかけての1ドル70円台の円高でさえ、実質実効レートでみれば今世紀はじめころと比較してむしろ円安でした。

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1ドル=95円台まで円高が進む可能性は十分ある
「もし円高でも100円が限度」の根拠はない

中村 貴司 : 東海東京調査センター 主任調査役 シニアストラテジスト

今後、アメリカのドナルド・トランプ大統領によるドル安姿勢や、人民元が一段と下落することなどをきっかけに1ドル=90円台に突っ込むという「予想外の円高リスク」はないのでしょうか。
株価や為替はマーケット参加者の感情に左右されがちで、合理的とは言えない投資家の意思決定などにより、適正価格を逸脱したモメンタム(勢い)やバブルが生じると説明しています。為替の話で言えば、急激な為替の変動をもたらす一つの要因として、人間・投資家のバイアスが想定されるわけです。
投資家は、通常、後悔の感情を引き起こす行動を回避したいと思っています。投資での損失を確定してしまうロスカットは、今までの自分の判断が間違いであったことを意識させる代表的なものです。
もう一つ、投資家のバイアスに基づく行動の一つ、「過小反応」について見てみましょう。投資家は自分の相場のシナリオや予想為替の水準が大幅に変更になるかもしれない出来事に直面した場合、心理的な抵抗などにより、「過小反応」をしがちなのです。
例えば、1ドル=105円が当面の底と強く思っていたにもかかわらず、トランプ大統領ツィッターなどでさらなる円高が進行したとしましょう。この場合、これは一過性で「長期で持っていればいずれ円安水準に戻る」と自分を納得させながらも、先行き、状況の変化が顕在化するにつれ、徐々に見方を下方(円高方向)に修正していくバイアスがかかっているため、機敏な対応(反対売買や見通しの修正)が行いにくくなる、と言われます。
投資家は、このように「後悔の回避」や「過小反応」が生じ、「ロスカットを実施しにくくしてしまう自分がいる」ということを事前に認識しておくことが必要です。
最近のドルの高値、安値は2015年~2016年につけており、これはチャイナショックによる為替変動を踏まえたものだといえそうです。2015年以降のフィボナッチ・リトレースメントでは、105円35銭を切ってきたことで、安値である99円02銭が次のターゲットになります。
では、このチャイナショックを超えるようなインパクトがあった場合はどのような節目が想定されるのでしょうか?そこで今回、日本のバブル崩壊後のトレンドを踏まえた1989年末以降のフィボナッチ・リトレースメントを活用してみます。
1989年末以降のザラ場の円高、円安水準を基準に見てみると(安値=2011年10月31日の75円35銭、高値=1990年4月17日の160円20銭)、50%水準が117円78銭、38.2%水準が107円76銭、23.6%水準が95円37銭と計算されます。つまり、より長い期間で見ると、ドル安円高リスクとして95円台もありうると事前に想定することが可能になってくるのです。
個人投資家は、こうした行動ファイナンステクニカル分析の視点を用いることで、突然の不意打ちによる損失を回避できる可能性があることをぜひ知っていただきたいと思います。

 

JA共済総合研究所
調査研究部 研究員 古金 義洋

2005年以降の日米金利差とドル円相場のデ ータから両者の関係を求めると、『ドル円相場=74.1+13.66×日米金利差』となり、日米金利差1.8%程度でのドル円相場は99円/ドルと計算できる。金利差から言えば、100円割れも視野に入ってくる。

 

信金中央金庫 地域・中小企業研究所
内外金利・為替見通し(月刊) 2019.09.03.

米国経済は個人消費を支えに底堅さを維持しているものの、トランプ大統領が対中制裁関税「第4弾」を発動すると表明したことで、先行き不安は一層高まっている。パウエルFRB議長も8月23日の講演(ジャクソンホール会議)で「貿易政策の不確実性に対応することは新たな課題である」と述べ、「成長持続へ適切 な行動を取る」として追加利下げに踏み切る用意があることを示唆した。緩和政策に慎重な政策委員が少なくないため、大幅利下げの可能性は小さいが、Fedは今月のFOMCで2会合連続の利下げに踏み切ると予想される。
米中対立が激しさを増すなか、金融市場でリスクオフの流れが強まっていることを反映し、為替相場円高ドル安基調で推移している。今後、円金利の低下余地が限られるとみられる一方、米国では追加利下げが見込まれる。少なくとも19年中は、 日米金利差の縮小を材料に、円が買われやすい地合いとなろう。

 

住友商事グローバルリサーチ(SCGR)
経済部 鈴木 将之

今秋に向けてリスクが山積するドル円相場

8月に入ってから、ドル円相場は一段と円高・ドル安方向に進んだ。米中貿易戦争の激化と米国が中国を為替操作国に指定したことなどの影響が大きかった。それとともに、実体経済の減速感の強まりと、各国中央銀行の金融緩和への転換もあった。先行きについても、長期化する米中貿易戦争など世界的な景気減速への懸念材料が尽きず、円安・ドル高に転じにくいのだろう。また、注目されるのは、2019年秋に向けて国内外で種々のイベントが控えていることだ。それらがリスク要因になりうるため、円高・ドル安圧力が続くとみられる。
米中貿易戦争の懸念が高まった5月初めに1ドル=110円台を割り込んだドル円相場は、図表①のように、8月にもう一段円高・ドル安方向に進んだ。きっかけは、8月1日にトランプ大統領が9月1日から対中制裁関税(第4弾)を発動すると表明するなど、米中貿易戦争の激化への更なる懸念の高まりだった。また、5日には米国が中国を為替操作国に指定し、その後も中国人民元が1ドル=7元台で推移するなど、米中の対立が強く意識されるようになった。
貿易戦争が短期的ではなく、中長期的なものであり、構造変化を引き起こしうるという見方が次第に広がっているようだ。世界の生産・貿易活動は2018年末ごろから減速している。米中間だけではなく、その他の国にも悪影響が波及しているため、生産の伸び率が輸出の伸び率を上回る「スロートレード」が2019年に復活している。
2017年から2018年にかけてスロートレードから脱却した理由の一つとして、世界的な景気回復によって設備投資が増加し、資本財の動きが活発化したことがあった。今回のスロートレードの復活では、その波及が逆回転したと考えられる。つまり、米中貿易戦争などによって先行き不透明感が高まったことで、企業が設備投資に慎重な姿勢に転じた結果、資本財などを中心に貿易財の動きが鈍っているとみられる。
このような先行き懸念が払拭できない中で、為替市場では、低リスク通貨が選好されるようになっており、円高圧力が高まっている。
米中貿易戦争に加えて、日米貿易協議など貿易問題もある。米中貿易戦争は世界経済の減速を通じて、日本の輸出や第1次所得収支の受け取りを減少させて、経常黒字を縮小させる圧力になる。日米貿易協議も日本の対米貿易黒字を削減することが米国側の狙いであるため、今後経常黒字を縮小させる可能性がある。
しかし、世界経済の減速というリスクが投資家に認識されると、リスク回避姿勢が強まり、円高・ドル安圧力になる。日本の経常黒字が縮小するという実体経済のスピードに対して、金融市場のリスク回避の反応の方が速いため、円高・ドル売り圧力の方が強く表れると考えられる。
米国では、2020年11月の大統領選の1年前となり、選挙運動が本格化する。トランプ大統領は、自身の再選が厳しい状況になれば、外交面で対中制裁などを強める可能性がある。上下両院のねじれ議会の中で、大統領権限で実施しやすい追加関税が、引き続き先行き不透明感をもたらす要因になりうる。
欧州では、10月末にECB総裁、欧州委員会委員長が任期を満了、11月末にはEU大統領が任期を終える。交代時に何かしらの問題が生じたときに、円滑な対応がとれるかどうかはひとつのリスクになる。
中国は10月1日に建国70周年を迎える。中国は、米中貿易戦争や国内景気・雇用問題、香港のデモなど難題を抱えている。
このように、経済成長が鈍化している中で、2019年秋には様々なイベントが控えており、それらが円高・ドル安傾向に拍車をかける可能性があることを考慮しておくことが重要だ。

 

ニッセイ基礎研究所
経済研究部 シニアエコノミスト 上野 剛志

今月、ECBが金融緩和に舵を切り、FRBも追加利下げに踏み切ることが確実視される中、日銀は苦境に立たされている。日銀の対応次第で「緩和負け感」が鮮明になり、円高が進むリスクがあるためだ。しかし、日銀の追加緩和余地は乏しく、「大きな効果が見込めて、副作用の小さい手段」はもはや存在しないと思われる。
日銀が全く動かなければ、円高の引き金を引くことになりかねないが、一方で、本格的な追加緩和に踏み切れば、副作用を強めるうえ、今後、仮に世界経済が失速し、円高が急激に進んだ際の対応余地がその分無くなってしまうためだ。その点、「フォワドガイダンスの延長」は実害が無い。また、「長期金利許容レンジの拡大(下限引き下げまたは撤廃等)」は現状の追認に過ぎず、多少の緩和的色彩を加えることも可能になる。
なお、市場への影響としては、今月、日銀が一切の政策変更を見送った場合には、「緩和負け感」が鮮明となり、円高・株安に振れる可能性が高い。筆者の予想程度の緩和方向への小幅な政策変更が行われた場合も、小幅ながら円高・株安に振れる可能性が高い。欧米中銀の緩和と比べて内容が見劣りするためだ。一方、日銀がマイナス金利深掘り等を主軸とする本格的な追加緩和にまで踏み切った場合は、驚きから一旦円安・株高反応が起きる可能性が高い。しかし、長続きは期待できない。追加緩和の結果、緩和の打ち止め感が出ることで円高・株安方向への揺り戻しが発生する可能性がある。また、金融機関収益への懸念が高まることで、リスクオフの円高・株安が誘発される恐れもある。

 

日本総合研究所 為替相場展望
2019年9月

米国の金融政策に目を向けると、パウエルFRB議長はジャクソンホールにおける講演で、米国の通商政策などが不確実要因になっている ことを強調したうえで、景気拡大を長期化させるために「適切に行動する」と追加利下げを示唆。米国経済の牽引役である個人消費は7月まで堅調に推移しているものの、8月入り後、米中の貿易摩擦が激化するなかで、消費者マインドが悪化。企業部門でも、8月のISM製造業景気指数が好不況の判断の分かれ目となる「50」割れ。今後、個人消費が弱含んだ場合、米国経済が急減速するリスクがあるなか で、FRBは利下げ姿勢を続ける見込み。このため、政策金利見通しを反映しやすい日米2年債利回り格差の縮小が、円高ドル安圧力となる公算大。 ただし、過去の景気後退時のような本格的な利下げ局面とはならない見通し。トランプ大統領は、2020年秋の大統領選挙で再選を目指しているため、景気への悪影響を度外視してまで対中貿易戦争に傾注することは考えにくいことに加え、FRBの利下 げが景気下支えに作用することで、景気失速は回避される公算大。市場では9月のFOMCを含めて 年末までに残り2回、来年末までに5回程度の利下げをすでに織り込んでいることを踏まえると、米国金利の低下余地は限られ、1ドル100円を割るような一方的な円高ドル安が進むことはない見込み。

 

トランプ対中関税第4弾で1ドル=100円割れへ
緩やかだが円高、ユーロ沈没、元は底割れ

唐鎌 大輔 : みずほ銀行 チーフマーケット・エコノミスト

これまで発表してきた対中関税1弾から第3弾、金額にして2500億ドル分については関税率が25%から30%へ引き上げられ、これから予定される第4弾のうち約1100億ドル分については9月1日から15%、家計部門への影響度が大きい財(約1600億ドル)については12月15日から15%になる。
なお、第4弾については当初発表時から「25%」を最終ゴールと見ていた。今後は第4弾の断続的な引き上げ、最悪の場合、この部分についても「25%」そして「30%」へと歩が進められる(すなわち対中輸入すべてに30%が課される)ことが懸念される。
そもそも7月利下げの理由が「貿易政策の不透明感に端を発するダウンサイドリスク」だったことを思えば、利下げが「保険的なもの」で終わる保証はどこにもなかった。
今後、関税が本当に30%まで引き上げられるのであれば「貿易政策の不透明感に端を発するダウンサイドリスク」はリスクを超えて実体経済を本格的に毀損するレベルに入ってくる可能性もある。それを実感する頃には「保険的な対応」ではなく「堂々たる利下げ局面」に入っているであろうし、アメリカの金利もドルも一段と切り下がっている公算が大きい。
かつて東洋経済オンライン記事『日本企業の対外直接投資の流れは止まらない』でも述べたように、対外直接投資を通じた円の売り切りが幅を利かせていることの影響も引き続きあろうかと思われる。
しかし、足元の動きに関してはもっと分かりやすい理由もある。常に「相手がある話」の為替の世界では「相対的にマシ」であることが買われる理由になる。そこで国際決済銀行(BIS)の公表する日次の名目実効相場(NEER)を見ると、ドルは年初来でプラス2.4%、前年比でプラス1.5%と上昇していることが分かる。つまり、為替相場全体を見ると円高であり、かつ、ドル高なのだ。
アメリカの経済が失速して金利が下がる中でも経済・金融情勢が他国に比して「相対的にマシ」である以上、ドル相場は下がらない(そもそも下がっても金利はまだ高い)。同期間に人民元が年初来マイナス1.2%、前年比マイナス0.9%、同様に、ユーロがマイナス0.9%・マイナス0.7%、英ポンドがマイナス3.0%・マイナス3.1%と軒並み売られていることが明示的だ。
本来、世界最大の経常黒字を備え、緩和余地も限定的なユーロはドル売りの受け皿として期待すべき存在だが、大黒柱のドイツにリセッション懸念がくすぶり、域内3番目の経済大国であるイタリアで政治空白が発生、ブレグジットの行方もわからずじまいという状況では買うに買えない。それだけ悲惨な状況に賭けて金利面での見返りがあればよいが、南欧諸国以外の長期金利がおおむねマイナス圏に沈没しているという、いかんともしがたい現状がある。
かかる状況下、通貨高の按分は世界最大の対外債権国通貨で金融緩和による応戦余地が乏しい円に回ってきやすい。上述の名目実効相場を見れば、同期間の円がプラス5.8%・プラス5.2%と騰勢を強めていることがその証左だ。緩やかながら1ドル=100円割れに向かって地合いは固まりつつあると見る。

 

ドル/円 大局的には米財政赤字で決まる

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上記の細々とした理由付けもさることながら、大局的には米国が財政赤字(財政緩和)をどこまで膨らませるかによってドルの価値(あくまで対円)は決まる。

2016年 年初 120.21円 年末 116.97円  ▼3.24円 
2017年 年初 117.49円 年末 112.71円  ▼4.78円
2018年 年初 112.61円 年末 109.65円  ▼2.96円

米国が財政赤字を拡大させた過去3年間では、年始にお酒に酔いしれて何も考えずにドル/円の売りをポチっとクリックしても、年末には3円程度の為替差益が得られた。もちろん、スワップ金利は負担しなくてはなりませんが。
ただ、FXをしている者で、1年間放ったらかしなんて奴はいないでしょう(大笑)

2016年 年初 120.21円 安値  99.16円  ▼21.05円
2017年 年初 117.49円 安値 107.32円  ▼10.17円
2018年 年初 112.61円 安値 104.66円  ▼ 7.95円

と、7円以上の収穫が得られる時期があるものです。
今年2019年の8月迄の例では、
2019年 年初 109.68円 安値 104.86円  ▼ 4.82円 
と、現在まで5円に満たないが、上記相場予想の中で100円割れを予想する者が多い中、年内7円以上儲けられる時期が来るんじゃないでしょうかね。

ただ、それにも前提があります。スイングトレ-ダ-に求められる含み損の許容額です。
2016年 年初 120.21円 高値 121.69円 △1.48円
2017年 年初 117.49円 高値 118.61円 △1.12円
2018年 年初 112.61円 高値 114.54円 △1.93円
と、2円程度の含み損には耐えられることが前提でした。
今年2019年の8月迄の例では、
2019年 年初 109.68円 高値 112.41円 △2.73円 
と、現在まで3円の含み損に耐えられる証拠金が必要です。

「FXは儲からない」、「FXで勝てるのはごく少数」なんて言われます。個人的な推測ですが、そう言う人は円売りで参加した人たちでしょう。だから、アホなんです。
年初スタ-トを基準として円売りを語るなら、
2016年は21円のリスクを抱えて、2円弱の儲けを狙う。
2017年は10円のリスクを抱えて、1円強の儲けを狙う。
2018年は8円弱のリスクを抱えて、2円弱の儲けを狙う。
どうです?アホでしょ?いかに割に合わないか、それがすべてです。
FXで儲けていくためには、多少負けても仕方がないんです。「小負大勝」なら。日々の相場がどう動くかなんてわかりませんからね。しかし、大局は掴んでおかなければなりません。やってはいけないことは、「小勝大負」なんですから。