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円安進行が期待できないワケ

ニッセイ基礎研究所
経済研究部 シニアエコノミスト   上野 剛志

円安進行が期待できないワケ
4月に入り、米国や中国の経済指標改善などを受けたリスクオン(選好)の円売りからドル円はやや円安ドル高となったが、足元でも112円付近に留まり、ドルの上値は重い。
その最大の理由は米利上げ観測の低迷だが、FRBは利上げを当面見合わせる姿勢を強調しているため、今後数ヵ月にわたって利上げ観測の盛り上がりは見込めない。一方、これまで円安の原動力となってきたリスクオンについては、米中通商協議が合意に至ればさらに強まり、もう一段の円安を促す可能性はある。ただし、今後は日米・米EUの通商協議がリスク要因として意識され、リスクオンの円売りを抑制しそうだ。さらに、既に主要国株価の割安感が薄れておりリスクオン地合いが高まりづらくなってきたこと、シカゴ投機筋の円売りポジションがたまってきており、円の買い戻し圧力が発生しやすくなっていることも円安進行を抑制するだろう。従って、3ヵ月後の水準は現状程度と予想している。ドル円が方向感を取り戻すには、米金融政策への見方が利上げか利下げに大きく傾く必要がある。

三井住友DSアセットマネジメント
市川レポート

2020年の大統領選挙で再選を狙うトランプ米大統領は、実質的な成果をあげるため、日本に対し比較的強い姿勢で臨むことが予想されます。米国の日本に対する要求としては、①農産品の大幅な関税引き下げ、②自動車の非関税障壁の撤廃、③サービス分野の交渉拡大、などが考えられます。
日本は米国に対し、農産品や液化天然ガスLNG)、防衛装備品などの購入拡大を提示し、物品貿易の交渉を主軸に置くとみられます。ただ、農産品の関税引き下げは環太平洋経済連携協定(TPP)の水準を限度とし、また、安全基準や金融規制の緩和など法改正を伴うものは受け入れないとの姿勢を示すと思われます。協議が難航すれば、米国は為替条項や、米国が輸入する自動車の数量規制や関税引き上げを切り出す恐れがあります。
米国は、メキシコとカナダとの間で締結した「米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)」に為替条項を導入しています。ただ、通貨安誘導の疑いだけで直ちに制裁関税が発動されるような強制力のある内容ではありません。そのため、為替条項がUSMCAに盛り込まれたものと同程度であれば、日本にとってそれほど脅威ではないと考えられます。そもそも、世界の為替市場で米ドル、ユーロに次ぐ取引量を誇る日本円を、日本の意向のみで円安誘導できるという発想自体、非現実的なものです。