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fxdondon presents 世界の政治・経済・財政を考察し、外国為替相場を読み解きましょう

インフレと為替相場


インフレとは、モノやサ-ビスの価値が上がり、お金の価値が下がり続ける状態のことです。
インフレ指標の代表的なものに消費者物価指数がありますが、普通の人はその結果をみて、「物価が上がった、下がった」とだけ捉えます。しかし、肝心なことは、物価上昇が示す裏側には通貨価値の下落が継続的に続くということがあります。
例を挙げると、現在は米国で液晶テレビが1,000ドル、日本では1ドル120円で12万円だとします。米国でインフレ率2%、日本で0%が20年間続いたとすると、20年後に米国では液晶テレビが1,486ドルになり、日本では12万円のままとなります。もし、為替レートが1ドル120円のままだったら、日本では1,000ドルで液晶テレビが買えることになります。その時、日本で液晶テレビを買って米国に売れば、手数料・運送料を除くと486ドルも儲かることになります。
しかし、こういう状況が永遠に続くことはなく、やがて裁定が働いて日本の物価が上がるか、円高方向に進んで物価差が為替レートで調整されるというのが購買力平価の導く結果になります。
通貨の究極的な価値は購買力であり、購買力平価は理論的にも現実的にも超長期では該当するという見解です。
実際に為替レートが変動相場制になってからドル円相場の40年以上の推移を見ると、一過性の円高ないし円安に振れる時期こそありますが、長期的には購買力平価に合致した円高ドル安という変動になっています。

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短期的には、為替レートが投機的な作用の影響により購買力平価から乖離して推移することがありますが、購買力平価から大きく乖離した為替レートが超長期的に続くことはなく、やがては調整されていることが確認できます。これからも日本より米国のインフレ率が高く続くとなると、長期的には円高バイアスがかかることになります。
つまり、為替相場購買力平価から大きく乖離している時は、いずれ購買力平価の水準に向かって動くだろうという相場の将来の方向性を知る手掛かりとなるわけです。

米ドルは言わずと知れた世界の基軸通貨です。各国政府が外貨準備として米ドル建資産を保有し続けたり、機関投資家が投機運用目的で米ドル建資産を保有するなどして、購買力平価が導く本来の通貨価値を歪めています。世界的にリスクオフの投資環境にならない限り、米ドルは過大評価、日本円は過少評価されています。
そこで、各国政府が外貨準備として用いない、購買力平価為替相場に反映されやすい通貨を例にとった方がわかりやすいでしょう。

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FXで取引通貨としてよく用意されている新興国通貨である、南アフリカ・ランドとトルコリラを例にしましょう。
インフレ率は日本の比にあらず、高インフレであることがわかります。
では、対円での為替レ-ト推移です。

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2007年は円キャリ-トレ-ドと言われた円安相場が終わろうかというあたりです。
南アフリカ・ランドのインフレによる通貨価値減価は緩やかなものとなっていますが、トルコ・リラの通貨価値減価は大きめです。トルコでは再びインフレ率が10%を超えてきていますので、通貨価値減価が大きくなって当然と言えるでしょう。
ついでに、アルゼンチン・ペソの推移も加えてみました。ひたすら、通貨価値減価が続いています。これを加えた理由は、個人的にトルコ・リラがこれから辿るであろう先例となり得るからです。
トルコ国債などソブリン格付けは、「投資不適格級」「ジャンク級」へ格下げされており、トルコ・リラ建資産を新規に取得保有しようとする政府、公的機関、機関投資家は皆無の状態です。既存投資家(以前にトルコ国債10年債などを取得した者)は、この10年で様変わりしたトルコにただただ茫然だとか・・・。そりゃ、10年前には1トルコリラ80円を超えていた為替レ-トが、現在では30円を割れているんですから、「わが身を削って、トルコに貢献した」という誇り以外は何も残りません。

ただ、FXトレ-ドでは、一部のトレ-ダ-には重宝されています。通貨価値減価をほぼ約束されたトルコ・リラ・は、円高トルコ・リラ安の推移を裏切らないからです。
米ドル/円の動きに比べて、トルコ・リラ/円の相場での変動額自体は少ないため、円買いトルコ・リラ売りポジションでの絶対額での儲けは少ないのですが、安心確実に儲けることができるようです。