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原油「マイナス価格」に現実味

原油市場の新たな恐怖:「マイナス価格」に現実味

ウォ-ルストリ-トジャ-ナル
新型コロナウイルスの世界的な大流行が原油市場を根底から揺さぶっている。
米原先物は年初から価格が半減。現物は場所によって下げ幅がさらにきつい。石油貯蔵施設は世界的に満タンで、これ以上貯蔵する施設が見つからなくなりつつある。輸送が困難な地域では、生産業者はそう遠くない将来に、顧客に代金を支払って引き取ってもらうしかない状況に追い込まれる恐れがある――事実上、価格がマイナス圏に沈むということだ。
原油価格の崩壊はエネルギー業界に深刻な打撃を与えており、エネルギー関連のデリバティブ取引に使用される算出モデルにも影響が出ている。先物取引所運営大手の米CMEグループは、エネルギー関連の金融商品でマイナス圏への価格転落にも対処できるよう、ソフトウエアのプログラミングを組み直していると明らかにした。
市場関係者によると、問題の1つが、余剰石油を貯蔵する能力が限られているという点だ。新型コロナの封じ込めを目指した措置により、需要は過去最低水準に落ち込んだ。工場は閉鎖され、車や飛行機でのヒトの移動が止まった。そのため製油所は稼働率を低下させており、原油在庫が急速に積み上がっている。
米エネルギー情報局(EIA)の統計によると、米原油在庫(4月3日終了週)は1520万バレル増と、増加幅は過去最大に達した。ガソリン在庫も1050万バレルの急増となる一方、製油所の稼働率は2008年9月以来の水準まで低下した。
過剰在庫により、貯蔵施設の空きが不足し、石油パイプラインも詰まった状態になっている。タンカー船が利用できない地域では、生産者は余剰分の破棄という極端な選択肢を余儀なくされる恐れがあり、これには顧客に代金を支払って引き取ってもらうことも含まれる。こう指摘するのは、ゴールドマン・サックスコモディティ(商品)調査部門責任者、ジェフリー・カリー氏だ。「道路と同じだ。路上を走っている車が多ければ渋滞を引き起こす」
原油には、多岐にわたる目的に沿ってさまざまな種類があり、それぞれのグレードは、濃度や硫黄含有量、受け渡し拠点や製油所への輸送のしやすさなど、複数の要因によって値付けされる。硫黄分が多い重質油は、米ウエスト・テキサス・インターミディエート(WTI)など硫黄分が少ない軽質油に比べて、安い価格で取引される。なぜなら、使用するための処理に手間がかかるためだ。足元では、石油パイプラインで輸送される原油もディスカウント価格で売られている。行き場がなくなった原油がパイプライン内に滞留しているからだという。アナリストや市場関係者が明らかにした。
一部地域の原油価格は最近、1桁台まで落ち込んだ。S&Pグローバル・プラッツによると、アルバータ州ハーデスティのウエスタン・カナディアン・セレクト(WCS)は4月1日、バレル当たり約8ドルにまで下落した。WCSは通常、石油パイプラインか鉄道経由で米国のメキシコ湾沿岸や中西部に運ばれる。米ミッドランドのWTIスポット(随時契約)価格は3月30日にバレル当たり10ドル強に、ミッドランドのウエスト・テキサス・サワー(より製油が難しいWT原油)は同7ドル前後にそれぞれ下落した。あるコモディティ商社は先頃、ワイオミング・アスファルト・サワー原油について、マイナス価格で値付けした。
マイナス価格に身構えているのは、現物原油を扱うトレーダーだけではない。エネルギー関連のデリバティブ商品を売買するトレーダーも同じだ。INTL FCストーンのエネルギー取引部門共同責任者、マーク・ベニンゴ氏は、原油デリバティブ商品がマイナス価格で取引されたのは見たことがないとした上で、実際にマイナス圏になった場合のシナリオを数週間前頃から検討し始めたと話す。
同氏は「考えなくてはならないことだ」とし、「オプションはゼロで止まるよう設計されており、それが損失の上限となる。ゼロを割り込んだら、状況は一変する」と述べる。
S&Pグローバル・プラッツ・アナリティクスのグローバル責任者、クリス・ミジリー氏は「減産は市場の需給バランスを著しく変えるには到底十分ではない」と話す。
エネルギー会社が生産停止に追い込まれれば、価格が持ち直す可能性があるとの声も聞かれる。原油価格の急落は石油生産関連企業を直撃しており、シェブロンエクソン・モービル、ダイアモンドバック・エナジーは、設備投資の削減を表明。シェール業者のコンチネンタル・リソーシズは先頃、4~5月に生産量を約3割減らすとともに、四半期配当を停止すると明らかにした。ホワイティング・ペトロリアムは連邦破産法の適用を申請した。
一方で、正常化に向かいつつある中国に希望の光を見いだすアナリストもいる。同国では、2カ月の都市封鎖措置を経て、消費者が慎重ながらも再び移動を開始した。
だが、世界の石油需要は日量数千万バレル規模で減っているとして、悲観論もくすぶる。
RBNエネジーのラスティ・ブラジエル最高経営責任者(CEO)は「いつ需要が元に戻るのが、本当に想像もつかない」と話す。


誤解しないで欲しいのは、私たちの自動車に入れるガソリン・軽油がマイナス価格になるわけではない。ガソリン税など税金分がゼロになるわけではなく、また精製コストや輸送費、人件費、設備費などコストがかかるので、安くても1リッタ-数十円という販売価格になる。
あくまで、黒くてドロドロし、臭くて「ただ燃えることができるだけの液体」の原油のことである。
原油を濃縮圧縮してコンパクトに保管貯蔵できればいいのだが、それはできない。そして、おいそれとテキト-な場所に溜めておくこともできない。原油は「ただ燃えることのできる液体」だけに引火する恐れもあるので、今では燃えない水より溜めるのも厄介であり、環境を汚染するデストロイヤ-でもある。
原油を引き取ってくれるのなら、タダで差し上げます」、そう言われても引き取れない事情がある。原油の「マイナス価格」はともかく、「ゼロ価格」は一時的にもあり得そうに思えます。

前に書いた記事に、「米国がくしゃみをしたら、世界はどうなる?」、そして、「米国と中国が、いや世界全体がくしゃみをしたらどうなる?」、その答えが原油相場に示されるわけです。