fxdondon’s blog

fxdondon presents 世界の政治・経済・財政を考察し、外国為替相場を読み解きましょう

トルコリラ

ドル円の適正値というのはだいたい現在、108.8円くらいです。面倒くさいので109円です。
ドル/トルコリラは現在5ドルくらいです。常識の範囲で考えても言っても6ドルくらい。ドル/円も円が買われても105円が限界だな、と思うのです。
105÷6=17.5円
最悪のシナリオを考えても17円までしか売られないのです。個人的には20円を割るのも難しいと思っています。』

これは、某ブログの記事の引用です。トルコリラを買って儲けようとしているようです。
この設定レ-トの矛盾についてですが、まずドル/円。109円が適正値?このような考えの人って多いのでしょうか?そこに、まず落とし穴があります。
そして、「常識の範囲」でとありますが、この「常識」って何の基準なんでしょうかね?
こういう人たちにはすべて、インフレという概念が不足しています。通貨安の要因は大きく2つに分けられます。投機的にその通貨が売られること、そしてインフレによって通貨価値の減価が進むこと、です。インフレの概念が不足しているため、現在の通貨価値はそのままで、金利差分だけ儲かるというような考えのようです。
私fxdondonの考えるトルコについての「常識」とは、対外債務の不履行、つまりデフォルトです。別に驚くことはありません。トルコは過去2回、対外債務の不履行(デフォルト)を起こしています。初のデフォルトなら驚くかも知れませんが、新興国と呼ばれる国がデフォルトしても、「またか」ぐらいの驚きでしかありません。
デフォルトの定義により、国家破産すなわち国債の返済が完全に拒絶されることだけでなく、国債償還日の繰り延べ(リスケ)や、一部には通貨の切り下げ(デノミ)もカウントした国を挙げてみます。

対外債務のデフォルト
トルコ 1982年、1987年
ロシア 1991年、1998年
アルゼンチン 1982年、1989年、2001年
ブラジル 1983年
南アフリカ 1985年、1989年、1993年

ロシアでは、1998年1月には通貨ルーブルを1000分の1に切り下げるデノミ、7月にはIMFからの支援を受けるなどしたが状況は好転せず、1998年8月にロシア政府はデフォルトを宣言。99年末までに満期を迎える短期債を長期債へ強制転換、また90日間の対外債務支払いの停止(モラトリアム)を敢行。国外への資金流出(キャピタルフライト)が加速していたが、これも預金封鎖で制圧した。総額390億米ドル相当のデフォルトは、90年のブラジルに次ぐ規模でした。
ブラジルでは1985年に軍政から民政へと移行したが、長年の放漫財政のツケやオイルショックの影響が後を引き、経済が崩壊。1990年のデフォルト(620億米ドル相当)は人類史上最大とされている。
完全なる政府破綻、つまり債務不履行(デフォルト)となると、長期金利(≒インフレ率)は数百パーセントを超えます。80年代のブラジルやアルゼンチンでは1000%を超えるインフレ率を記録しました。

では、トルコリラに絞って、トルコリラの遠い昔から振り返ってみましょう。
1990年は、1トルコリラ=45000円でした。90年代半ばに欠けて、経済政策の失敗などで通貨価値は暴落、1997年には1トルコリラ=1000円を割る水準にまで円高リラ安が進みます。その後、アジア通貨危機、ロシアデフォルトなど、90年代後半の世界的金融不安で更にリラの価値は下落していき、トルコ国内は極端なインフレと財政赤字で経済低迷が続きました。
IMFの融資を受けるなど立て直しを図るものの上手くいかず、2005年にデノミを行ってからようやく通貨価値が安定しはじめ、経済もそれなりに回り始めました。とはいえ、近年になってもインフレ率は10%以上が続いており、新興国の中でも高めです。日本との相対的購買力平価に従えば、為替レートは円高リラ安が続くことになります。

トルコリラ円の長期推移
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これじゃ、過去20年ぐらいの馴染みのある為替レ-トがわかりませんよね(苦笑)

なので、2000年から2009年の推移
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この10年間で1トルコリラが、190円から60円に下落しました。
1991年の45000円から2009年に60円になるなんて現実離れしているとしか思えませんが、「事実は小説よりも奇なり」ともいうべき現実です。
しかし、1トルコリラ60円というのも、高インフレによる通貨価値減価が進み、現在2018年の23円という通過点にあります。

2010年から2017年の推移
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はっきり言って、日本がトルコのインフレを上回ることはありませんので、円高トルコリラ安は続きます。
それを補完するのが、高金利という甘いエサです。インフレ率<金利 となれば、理屈では運用益が見込めそうです。
ところが、そうもいきません。デフォルトとなれば、その通貨の価値はゼロになってもおかしくはないからです。つまり、対外通貨との交換価値はないということです。トルコ国内ではトルコリラが使えたとしても、それを外貨と交換することができない状況に陥ります。

それに加えて、新興国と呼ばれる国々に投資(買い持ち)するのは、長期的には「安物買いの銭失い」というコトワザの通りだと思います。