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日本企業の業績悪化を警戒 住友商事グローバルリサーチ

住友商事グローバルリサーチ 経済部

令和の始まりとともにドル円レートは円高・ドル安に振れた。これは米国発の貿易戦争というリスクが強まったことに起因する。それとともに、2018年秋頃からの日米欧中などの景気減速傾向とそれを受けた米欧の金融引き締めの先送りなど、実体経済為替相場に影響を及ぼしていることも重要だ。先行きについて、貿易戦争の拡大・継続や景気の先行き不透明感などを踏まえると、当面4月時点の1ドル=111円台に比べて円高傾向が続くとみられる。
主要国・地域の金融政策の姿勢が修正されてきた点も注目される。はじめに動いたのは、景気減速懸念が強まっていた欧州のECB(欧州中央銀行)だった。2019年3月7日のECB理事会では、政策金利を少なくとも2019年末まで据え置くこと、新たな資金供給制度(TLTRO3)を9月から実施することが決められた。4月10日のECB理事会後、ドラギ総裁は、必要ならば検討していくと、マイナス金利の副作用の軽減について言及した。これは、3月末にドラギ総裁がマイナス金利の副作用に触れたことで、市場のマイナス金利見直し観測を高めてしまったことへの対応だった。これらの動きは、すぐにマイナス金利政策の変更を意味するものではないものの、金融緩和の長期化を市場に意識させるには十分だった。
また、米国のFRBも金融引き締めの一時停止を発表した。3月20日FOMCでは、事実上の2019年の利上げ見送り、9月末までの保有資産の縮小の停止が決定された。2018年12月のFOMCで年2回程度の利上げを想定していた時とは一変している。5月1日のFOMC後の会見では、パウエル議長が「金融政策を動かす強い必要性はない」と発言したこともあり、市場では、早期の利下げ観測が後退した。一方、5月のFOMCでは保有資産のポートフォリオについて議論しており、今後の金融緩和の出口政策が意識されつつあった。しかし、6月になると、パウエル議長の「適切に」対応するとの発言によって、貿易戦争の悪影響や今後の景気後退を懸念する市場の思惑と重なって、市場では利下げ観測が高まっている。
米国景気の堅調さとリスク回避の円高が共存する中では、クロス円で円高が進むなど、日本企業にとっての海外事業リスクもくすぶり続けている。直接的な顧客との取引が米ドルであっても、その先の間接的な顧客が現地通貨を使用しているため、いずれかの段階で、円と現地通貨の交換(クロス円)での円高が日本企業の業績に悪影響を及ぼしかねない。
クロス円での円高が進むことは、観光を通じて国内の非製造業に対する悪影響を及ぼしかねない。このように、これまでとは異なった経路から、円高の直接・間接的な悪影響が日本企業の業績に打撃を与えかねない点に注意が必要だろう。