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ロイタ-コラム
マイナス金利に苦しむ欧州銀、迫る景気後退の時限爆弾

大槻奈那 マネックス証券 執行役員チーフ・アナリスト
欧州の銀行株が乱高下している。
何が問題なのか。2014年に欧州中央銀行(ECB)が導入したマイナス金利は、もちろん元凶の一つだ。デンマークでは今月、一定額以上預金者が対象ながら、貸出金利がマイナス0.6%の住宅ローンが登場して話題になった。ユーロ圏でもドイツの一部の銀行は0.5%の住宅ローンを提供している 。欧州では、少なくとも14銘柄の投機的格付企業の債券がマイナス利回りで取り引きされている。
さらに問題なのは、こうした利回りの低下で、不良債権が発生した時のバッファーが枯渇しつつあることだ。
2010─11年の財政危機後、欧州の不良債権問題は景気回復と債権売却などで徐々に落ち着いてきた。それでも、貸し出しに占める不良債権の比率はギリシャで41%、ポルトガルやイタリアでも8─9%と、日米に比べてまだ高い。欧州連合(EU)全体の不良債権額は 2019年3月時点で77兆円と、日本の10倍以上だ(ちなみにEUの貸出総額は日本の銀行の約4倍)。
さらにこのところ、地政学リスクの拡大などからクレジットリスクへの市場の警戒感は高まりつつある。これまで拡大基調にあった欧州のローン担保証券(CLO)市場は極めて低調だった 。報道によると、米国では今月、約2カ月前から資金を募っていた3社がレバレッジドローンの販売を中止した 。貿易摩擦の高まり、不安定な原油価格、景気後退リスクを懸念する投資家が質へと逃避していることが背景だ。
忍び寄るダウンサイドに備えるべく、今年4月 、欧州委員会不良債権に対する統一ルールを決めた。例えば、無担保貸出が新たに不良債権になった場合、3年以内に貸出に対して100%の資本を積まなければならない。
欧州では、足元で製造業を始めとする様々な経済指標が鈍化している。イタリアでは、ポピュリスト政権が空中分解し、政治的にも不確実性が増している。報じられているドイツの財政出動がどこまで景気を浮揚できるのか。
次の景気後退まで残された時間は多くない。欧州の金融システムには試練の時が近づいている。

第一生命経済研究所 調査研究本部 経済調査部 主席エコノミスト 田中 理
9月ECB理事会で、預金ファシリティ金利の10bps引き下げ、階層化は検討継続も導入見送り、資産買い入れの再開決定、具体的な制度設計は後日発表するとみる。この他に、既に発表した貸出条件付長期資金供給オペの第三弾(TLTRO3)の条件緩和(優遇金利はオペ期間中の預金ファシリティ金利の平均+10bps、例えば10bpsの上乗せ金利をな くすなど)、時間条件型から状態条件型へのフォワード・ガイダンスの変更なども考えられる。
この段階での資産買い入れの詳細決定が難しいのであれば、ひとまず買い入れを決定、もしくは 近い将来の買い入れ決定を強く示唆し、具体的な制度設計や技術条件は今後詰める形で発表することも可能だ(過去にはそうした手順を踏むケースが多い)。この場合、10月末で退任するドラギ総裁が資産買い入れの再開を決定し、11月に就任するラガルド次期総裁に具体策を託すことになる。 金融政策の変更は、事務方スタッフなどの検討を元にチーフ・エコノミストであるレーン理事が提案し(総裁、副総裁、4名の理事の役員会内では事前にすり合わせがされている模様)、それを役員会のメンバーと19名の各国中銀総裁(投票権を持つのは役員会の6名+輪番制の中銀総裁15名の 計21名)の多数決で決定される。