fxdondon’s blog

fxdondon presents 世界の政治・経済・財政を考察し、外国為替相場を読み解きましょう

購買力平価、そして経常収支

購買力平価」は机上の空論で、経常収支の増減は実需を伴ったものなので確実に為替相場に影響を及ぼす、な~んてことが言われます。
しかし、貿易取引でやりとりされるモノ、サ-ビスの価格にはすでにインフレ分が加味されたものであり、無縁であるとは言えません。
では、経常収支の増減が「確実」に為替相場に影響するかと言えば、それも正しくはありません。
観方を少し変えてみましょう。経常収支は、家計簿のようなものです。貿易収支で言えば、輸出は他人のために働いて金をもらうので、いわば給料とかボ-ナスです。輸入は他人に働いてもらって対価を支払うので、いわば消費です。経常収支の黒字は、「日本人が外国人のためにたくさん働いてたくさん対価をもらい、自分たちは質素に暮らしたので金が貯まった。それで、外国の銀行に預金したり外国の株を持ったりする事が出来た」という事になるのでしょうかね。毎年質素に暮らして使い残した分を外国の銀行に貯金したりしたため、残高が非常に大きくなっている、というのが巨額の対外純資産となるわけです。つまり、日本の対外純資産が巨額なのは、毎年日本人が勤勉に働いて倹約に励んだ結果です。日本企業が海外に工場を建てたとしても、主に日本企業は外国の銀行に預けてある金を引き出して海外に工場を建てたというだけの事ですからね。
為替相場に影響するのは、あくまで自国通貨を外貨と実際に交換する時であって、貿易収支黒字、経常収支黒字というのはあくまで計算上の数字でしかありません。ドル建てで輸出し、ドル建てで輸入し、輸出超だったのでドルはそのままキャッシュもしくはドル建て資産で保有した、なんてケ-スは、為替相場に影響しません。ドルが世界をグルグル回っただけの話ですから。しかし、経常収支黒字ということは、いくらかでも獲得した外貨を自国通貨へ交換するので、為替相場に影響するということですね。
日本の場合、購買力平価(低インフレ)、経常収支黒字、高貯蓄と、円高バイアスがかかっていることは疑いの余地もありません。円安バイアスがかかるのは、投機的な円キャリ-取引の拡大と円建て貿易取引(日本側の輸出)の拡大となります。海外企業が日本円を受け取って、日本円をそのまま寝かすことはありません。必ずと言っていいほど、自国通貨へ替えるでしょう。つまり、円売りです。幸い、米ドルの基軸性は高く、ユ-ロも第二の基軸性があり、日本円の出番はないでしょうが。

主要国の指標を比べてみる。
コアインフレ率
イギリス       2.30%  2018-03
米国            2.10%  2018-03
中国            2.00%  2018-03
オ-ストラリア      1.90%  2018-03
ドイツ           1.60%  2018-03
カナダ          1.40%  2018-03
ユーロ圏       1.00%  2018-03
日本             0.90%  2018-03
スイス           0.60%  2018-03

家計貯蓄率
日本             50.10%  2017-12(ボ-ナスの影響か)
スイス           14.10%  2017-12
ユーロ圏       12.21%  2017-12
ドイツ            10.20%  2017-12
イギリス          5.30%  2017-12
カナダ            4.20%  2017-12
米国               3.40%  2018-02
オ-ストラリア         2.70%  2017-12