fxdondon’s blog

fxdondon presents 世界の政治・経済・財政を考察し、外国為替相場を読み解きましょう

次回のリスク回避時のドル/円の底値はいくらなんでしょう?

円の強気派にとって外国為替で重要な指標は、別に政府や民間家計債務残高、金利、経済成長率(GDP)でもない。債務残高や経済の成長で通貨の価値が決まるなら、日本円は先進国通貨の中でも最弱になっているはずです。例えば、トルコとの比較でも明らかです。

トルコと日本の経済指標比較

                     トルコ      日本
GDP年間成長率      7.3%    2.0%
インフレ率         10.23%    1.1%
コアインフレ率    11.44%     0.9%
政府債務対GDP       28.3%    253%
10年物国債          12.3%   0.06% 
経常収支            -4152M$    2兆0760億¥
家計負債対GDP      17.3 %     57.1%
若年者失業率        19.9%      4.2%

債務残高とか経済成長率とか雇用統計とか、それは国の経済の断片的な材料でしかなく、それらがミックスされ導き出されるインフレ(デフレ)の結果がすべてです。インフレ指標は、モノに対して貨幣の価値はこのぐらい減価していますよと教えてくれているわけですから。
相対的な評価でレートが決まる外国為替市場では、すべての通貨が同時に下落する事態はあり得ない。 ざっくり、日本円の価値は年1%失われていますよ、と減価しているものの、トルコリラは年10%も減価していますよ、ということで、トルコリラ/円の相対的評価は年9%トルコリラが減価(下落)しますよ、ということになります。
しかし、それは本来の通貨の実質価値を表すものでしかなく、反論もあるでしょう。
「インフレ=通貨安」と考えればデフレ下の日本の円が独歩高になってもおかしくない状況でしたが、金利の安い円を借りて金利の高い諸外国の通貨を買い金利差の利ざやを稼ぐ「円キャリートレード」隆盛の時代は円は売られて円安でした。だから、購買力平価なんてものはアテにならないと。
まぁ、購買力平価に対する考えは、相場を短期的に捉えるか中長期的に捉えるかの違い、ハイリスク気運が高まる時期と冷める時期の違い、によるのかもしれません。
おそらく、2015年にドル/円が125円に到達したことについて、「円キャリートレード」全盛の2007年の124円を超えたので、やっぱり購買力平価の考えはあてはまらないと観る人もいるのでしょう。
しかし、私fxdondon的には、日米金融政策が真逆であったことや、2011年に日本政府が多額な為替介入で外貨準備ドルを抱え、中国政府も年々多額の外貨準備ドルを貯え、かつ民間金融機関も多額なドルを抱えて、安定したドルの大規模なロングポジションを生み出していたにもかかわらず、ドル/円はたった「125円にしか」円安ドル高は進まなかったと解釈しています。
参考までに、国際決済銀行(BIS)が公表した年次報告書で、日本の銀行のバランスシート上のドル建て資産は2016年末で約3兆5000億ドル(約390兆円)に膨らみ、ドル建て負債2兆5000億ドルを約1兆ドル上回る水準のドルの大規模なロングポジションを生み出していた。これに、生保や年金筋を加えた金額は不明だが、2007年当時よりもドルロングポジションが増えていたのは間違いないでしょう。
ただ、これはあくまで邦銀、本邦機関投資家だけの動向であり、他の海外勢もドルロングポジションを生み出していたであろうから、ドルは相当買い支えられていたはずなのに、ドル/円はたった「125円にしか」円安ドル高は進まなかったというわけです。130円を超えても不思議ではないと思えるのに125円で頭打ちだった、それは日米のインフレ格差でドルの価値が減価したのだというのが、購買力平価を考慮した円強気派の考えです。
そして、円強気派の最大の注目点は、次回訪れるドル/円のレ-ト底値はどのくらいなのだろうということ。
投機的なリスク回避による円買い(円買戻し)金額なんぞ、誰にもわかるはずもありません。上記のドルロングポジション保有者がどこまでの危機意識を持つかによって金額も変わってくるでしょうし、安全通貨であるスイスフランへ逃げるべきか日本円に逃げるべきかの避難先の選択度合いによっても円相場は変わってくるでしょう。
日本の政府や企業、個人投資家が海外に持つ資産から負債を差し引いた平成28年末時点の対外純資産残高は349兆1120億円、日本に次いで対外純資産額が多かった中国は210兆3027億円、3位はドイツで209兆9234億円だった。ざっくり、代表的な債権国の余剰対外資産は、日本が3兆ドル強、中国とドイツが2兆ドル弱といったところ。日本勢や中国勢は日本円へ逃げる度合いが高そうで、ドイツ勢はスイスフランへ逃げる度合いが高そうとか、勝手な想像。ただ、次回の危機的状況が中国発だとしたら、地政学リスクを考慮すると日本円よりスイスフランかも? ロシア発でもスイスフランかも? まぁ、その時になってみないとわかりませんが。(苦笑)

先日、某銀行マンのFX仲間(銀行内ではFXをやっていることを内緒にしているみたいです)の人から、ドル/円の推移と中国の外貨準備高の推移が似たような動きになってるよ、と言われました。
比べてみると、2014年、15年にピ-クを迎え、それ以降に下降、う~ん、似ていると言われれば似てるかも?

ドル/円のレート推移
イメージ 1


中国の外貨準備高推移
イメージ 2