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イタリア連立政権「同盟」と「五つ星運動」が対立

イタリア連立政権が崩壊し、欧州の不安要因がまた一つ増えた。『AP』『CNBC』『SWISSINFO』などが報じている。

イタリアのサルビーニ副首相は8日、自身が党首を務める極右「同盟」と左派「五つ星運動」との連立政権が政策の対立により崩壊したとして、解散総選挙を要求した。サルビーニ副首相は「イタリアはもう『NO』には耐えられない。今こそ『YES』が必要だ。もうたくさんだ。選挙を行わなければならない」と語った。コンテ首相はこの要求をうけ、議会を招集する可能性があると語ったが、サルビーニ首相に対する怒りを隠さなかった。サルビーニ副首相が議会の取り組みを妨害しているとし、また、なぜ連立政権を終わらせるのかサルビーニ副首相は国民に説明しなければならない、と語った。
「同盟」の党首でもあるサルビーニ副首相は数週間前まで、政権は5年の任期を全うすると語っていた。しかし同時に、停滞する経済を活性化するために必要な政策を「五つ星運動」が停滞させているとも批判していた。
そのような中で7日、イタリアとフランスを結ぶ高速鉄道の建設計画についての議会採決をめぐり対立が加速した。イタリアでTAVと呼ばれるこの大規模インフラプロジェクトは「同盟」が推進しており、欧州の国々とイタリアの間の鉄道網をさらに整備することを目指していた。「同盟」はイタリア経済とその中核である北部の産業にとってTAVが必要だと主張していたが、「五つ星運動」は同計画の費用負担が重すぎ、かつ不必要だと反対していた。翌8日、サルビーニ副首相とコンテ首相は会談したが、その後サルビーニ副首相は声明を発表し、その中でTAVについての議会での対立の結果、連立政権は明らかに崩壊したとし、早期の総選挙を要求した。一方コンテ首相は両議会の議長と会談して、議会の開催時期について検討すると語った。
選挙のタイミングは大きな問題となる。秋には予算案を提出する必要があるためだ。EUの中で第三位の規模を持つイタリア経済はこれまで、かろうじてEUの財政規律に抵触することを回避してきた。選挙のタイミングがサルビーニ副首相の思惑通りに決まるかどうかはまだ見えていない。イタリア人が休暇を取り、議会も休会する8月にイタリアで選挙を行うことは、政治的にもリスクを伴うためだ。またイタリアの議会制度では、マッタレッラ大統領のみが議会の解散権をもつが、2020年度予算編成をこの秋に進める必要がある中で、夏に選挙を行うことに大統領は前向きでないかもしれないとみられている。
五つ星運動」リーダーのディマイオ氏はサルビーニ副首相の声明に対して、「五つ星運動」はいつでも総選挙に応じる用意があると述べた。同氏は声明で、「準備はできている。政府のポストにこだわる気は全くない」と述べ、また、サルビーニ副首相を「国を欺いている」と批判し、イタリア国民はすぐにもサルビーニ副首相に背を向け始めるだろう、と語った。しかしサルビーニ副首相が早期の選挙を要求しているのに対し、ディマイオ氏は「五つ星運動」が推進する議員削減を成立させた後に選挙を行う意向を示した。議員削減についての投票は9月に予定されていた。
五つ星運動」は「同盟」よりも議会において多くの議席を占めてはいるが、最近の世論調査によれば「同盟」の支持率は「五つ星運動」のほぼ2倍となっている。「同盟」はこの支持率を次の選挙につなげようとたびたび連立政権を脅かしてきた。極右「同盟」の党首でもあるサルビーニ副首相の反移民姿勢と、移民救助船などを運航する非政府組織と対立する姿勢が「同盟」の支持率を上昇させていると考えられている。極右「同盟」の支持率は昨年のイタリア総選挙では17%だったが、今年5月の欧州議会議員選挙では34%に上昇し、現在の支持率は38%とされている。一方、左派「五つ星運動」の支持率は逆に下落し、昨年のイタリア総選挙時の33%から、今年5月の欧州議会議員選挙では17%に下落し、現在も17%前後にとどまっているとされる。