fxdondon’s blog

fxdondon presents 世界の政治・経済・財政を考察し、外国為替相場を読み解きましょう

EU 創設以来の正念場

EUの加盟国から議員を選ぶ欧州議会選挙で議席を増やしたEUに懐疑的な各国の政党が新たな会派を結成すると発表し、今後、さらに影響力を増すことが予想されます。
これまでEUの統合を支持する中道の2つの会派を合わせると過半数となる状況が続いてきましたが、先月の議会選挙では初めて過半数を割り込み、一方でイギリスやフランス、それにイタリアでは国境管理の強化など、EUから主権を取り戻すことを掲げる政党が第1党となりました。
EUそのものや中道政党に対する有権者の不信感が根強いことが浮き彫りとなる中、躍進したフランスの極右政党「国民連合」のルペン党首はこうした勢力のうち、イタリアやドイツなど合わせて9か国の政党で新たな会派「アイデンティティーと民主主義」を結成すると発表しました。
会派は最終的に76人となり、議会で4番目に大きい会派になるとしています。
ルペン党首は、これは政治の地殻変動だと強調したうえで、必要に応じてEUに懐疑的なほかの会派とも連携していく考えを示しました。

NHK特集 ヨーロッパを率いるのは誰か?揺らぐ2大大国

ヨーロッパをけん引してきた2つの大国、ドイツとフランス。しかし、ドイツのメルケル政権、フランスのマクロン政権ともに国内での支持離れが進み、足元が揺らいでいます。混迷するヨーロッパの未来、一体誰が率いていくのでしょうか。
(ベルリン支局長 野田順子

メルケル政権“崩壊の危機”
自国第一主義や反EUが台頭するヨーロッパ。この中で比較的安定していると見られてきたドイツに、今月、激震が走りました。メルケル政権を担う2大政党のひとつ、中道左派社会民主党の党首が、突如辞任を発表したのです。
社会民主党で史上初の女性党首となったナーレス氏の在任期間はわずか1年1か月余り。辞任のきっかけとなったのは5月に行われたヨーロッパ議会選挙でした。
社会民主党の得票率は前回、5年前より11ポイントあまり低い15.8%に落ち込みました。
社会民主党はドイツの2大政党の一角としてドイツの戦後政治をリードしてきました。
ところがここ数年、支持率の下落に歯止めがかかりません。メルケル首相との連立政権に参加したことで独自性を失い、党内には『自分たちが主張してきた政策の成果がメルケル氏にかすめ取られている』といった不満がくすぶっています。
またメルケル首相が率いる中道右派キリスト教民主同盟も、支持率の低迷に直面しています。
現政権の任期は2021年までありますが、連立相手の社会民主党の混乱や後継者の不人気で、メルケル首相の政権基盤の侵食が進んでいます。

仏の“希望の星”にも逆風
一方のフランス。さっそうと現れた希望の星、マクロン大統領も、強い逆風に直面しています。
就任当初、「フランスとドイツは改革の機運を作ることができる」とドイツに協力を求めました。
メルケル首相は「強いフランスがなければ、ヨーロッパもドイツもうまくいかない」と連携に積極的な姿勢を歓迎。多くのドイツ国民も、マクロン大統領が掲げるヨーロッパの将来像に共感し、大きな期待を寄せました。
それから2年。事実上の信任投票となったヨーロッパ議会選挙で、マクロン大統領の政党はEU懐疑派のルペン党首が率いる極右政党・国民連合を下回る結果となりました。去年11月の燃料税引き上げをきっかけに反政権デモが全国に拡大し、逆風をまともに受けた形です。
中小規模の国々がひしめくヨーロッパ。“超大国アメリカや中国と対抗していくためには個々の国々では歯が立たず、EUのもとに団結する強いヨーロッパが必要だーードイツやフランスはヨーロッパの統合が欠かせないと考えてきました。
しかしどこまで統合を進めるのかをめぐって、独仏間には深い溝があります。
マクロン大統領が提唱するEU改革の柱は財政面での統合強化です。具体的には通貨ユーロに加盟する国々の間で共通の予算をつくり、豊かなドイツなどの北部の国々が持つお金を財政難が続くギリシャやイタリアといった南部の国々に振り分けよう、という考え方です。
しかしドイツ国民の間では「自分たちの支払った税金が放漫財政の国々の穴埋めに使われることになるのではないか」との警戒感がぬぐえません。メルケル首相もマクロン大統領の提案には冷ややかです。
さらにドイツとフランスの溝はEUの人事をめぐっても表面化しています。ヨーロッパ議会選挙を終えたEUは今、主要ポストの後任選びの時期を迎えています。
メルケル首相はEUの執行機関のトップ、ユンケル欧州委員長の後任に最大会派のトップになった同じドイツ人のウェーバー氏を推しています。
しかしマクロン大統領は「政治経験が足りない」などとして公然と反対しています。
ユーロ危機やウクライナ問題で指導力を発揮し、「ヨーロッパの盟主」と呼ばれるようになったドイツ。しかしその間、ユーロ危機で緊縮財政を主張し続け、南ヨーロッパ諸国から反発を生んだほか、中東などからの難民受け入れも、EUに懐疑的な感情を高めるきっかけとなりました。
さらにギリシャ政府がドイツ政府に対し、第2次世界大戦中のナチス・ドイツによる占領などに対する賠償金の請求を行う考えを示すなど、歴史問題も再燃しています。
「強すぎるドイツ」に対する警戒感を抑え、ヨーロッパ内のバランスをとる意味で、ドイツはフランスというパートナーが必要です。
一方、フランスにとっても、ヨーロッパで突出する経済力を持つドイツの後ろ盾が欠かせません。過去に繰り返し戦火を交えてきたかつての“宿敵”との友好関係はEU発足の原動力となり、その理念は今も失われていません。
EUは現在、28もの国々の集合体になりました。しかし今年10月にイギリスが離脱すれば、ドイツとフランスの2か国だけでEUのGDPの40%強を占めることになります。政治的にも経済的にも、この2か国が協力してEUを引っ張っていくしか道がないのが現状です。
世界では今、アメリカのトランプ大統領が国際協調から背を向け、ロシアや中国がEUの周辺国にも影響力を強めようとしています。
!EUが国際社会の重要なプレーヤーとして存在感を保っていけるのか。ヨーロッパ統合の軸となってきたドイツとフランスはEU創設以来の正念場を迎えています。