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米財政赤字、1兆ドル突破へ ①

日経新聞
2018/10/16
財務省が発表した2018会計年度の財政収支は、赤字額が6年ぶりの水準に悪化した。大型減税による歳入減で、赤字幅は20年度に1兆ドルを突破する可能性がある。
18会計年度(17年10月~18年9月)の財政収支は赤字額が前年度比17%増の7790億ドル(約87兆円)に膨らんだ。連邦法人税率を35%から21%に引き下げた影響で、法人税収は前年度比22%も減少した。
トランプ米政権は法人税率を大幅に引き下げても、企業業績の回復で一定の税収を確保できると主張してきた。
大型減税は18会計年度の途中の18年1月から始まっており、減税による歳入減は19会計年度以降さらに大きくなる。超党派で構成する米議会予算局(CBO)の予測では、19年度の財政赤字は9800億ドル、20年度には1兆80億ドルと大台を突破する。財政赤字が1兆ドルを超えるのはリーマン・ショックの直後を除いて例がなく、税収が増えやすい好況時に財政収支がこれだけ悪化するのは極めて異例だ。
リーマン・ショック後の財政赤字時は、FRB米国債を大量に買い入れて長期金利の上昇を食い止めてきた。FRBは17年秋以降、保有国債を圧縮する「量的引き締め」に転じており、現時点で債券安の歯止め役はいない。
米経済は「双子の赤字」の懸念も強まる。17年のモノの貿易赤字は7962億ドルと既に9年ぶりの水準だったが、18年は1~8月の累積で前年同期比8.6%増とさらに悪化した。大型減税で消費や投資が増え、輸入を大きく押し上げた。好況時は、通常なら貿易赤字が悪化しても税収が伸びて財政収支は改善する。「双子の赤字」は、米経済のバランスが欠けていることを示しており、市場にゆがみをもたらす。
トランプ政権の大型減税は「いいとこ取り」が難しく、米経済のどこかに必ず副作用をもたらす。
トランプ大統領は「1980年代のレーガン政権を上回る大型減税だ」と誇ってきた。ただ、レーガン政権時も米国は「双子の赤字」に陥り、1985年の日欧との「プラザ合意」でドルを大幅に切り下げて切り抜けた。日本はその後に円高不況、バブル経済と波乱の時代に突入する。米経済のゆがみは世界経済全体を揺さぶることになる。

もう3ヶ月ぐらい前の記事になりますが、米国の「双子の赤字」問題は永遠に採りあげられるネタですね。

米国の財政収支赤字
2014年 6042億ドル
2015年 5771億ドル(前年比▼)
2016年 7317億ドル(前年比△)
2017年 7495億ドル(前年比△)
2018年 7790億ドル(前年比△)
2019年 1 兆ドル(暫定)(前年比△)

今、将来の『ドル危機』を予想する著名投資家、アナリストが口にするネタが、この「双子の赤字」、とりわけ財政赤字の拡大です。
『ドル危機』とは、別に米国政府のデフォルトを予想するものではない。米国危機をあおるような者、危機を増幅して米国が潰れるなどと騒ぐ者もいるが、それは無視して構わない。そうではなく、『ドル危機=ドル安』という認識でいいでしょう。
ただ、今回の米国の政府債務上限問題はもめる。今回は、特にトランプさんが財政赤字を大幅に増やそうとしているので、かなり議会でもめるでしょう。

さて、ドル/円相場。
ドル/円相場は、主に米国の財政収支状況で決まる。そのへんのところは、各自確認してもらえればわかることですね。

ドル/円 為替レ-ト
2019年
始値  109.68 高値 ?  安値 ?  終値 ?
2018年
始値  112.61 高値  114.54 安値  104.66 終値  109.65 始値比▼2.96
2017年
始値  117.49 高値  118.61 安値  107.32 終値  112.71 始値比▼4.78
2016年
始値  120.21 高値  121.69 安値  98.66 終値  116.97 始値比▼3.24

過去3年、米国の財政赤字拡大局面では、年初のレ-トは年末のレ-トより3円~5円程度下落しています。これは同時期を比較したものなので、規則性や方向性がよくわかります。
この過去3年のレ-ト推移から考察すれば、2019年の始値は109.68円なので2019年年末のレ-トは106円を割りそうだと推測できます。ただ、2019年の財政赤字の拡大幅が過去3年よりもケタ違いに増えますので、100円を割り込むような推測もおかしくはないと思えます。
ですから、米国は現在でも政策金利を引き上げているのでドル高になるという観方が、いかに的外れであるかを物語っています。
ただ、それがまったくウソだということではなく、年間である時期の高値、ボラを高める要因で金利状況は確かに変動要因です。しかし、金利上昇以上にインフレが上昇しているわけですからドルの通貨加価値は減価します。一年を通して観れば、財政赤字が前年より増え続けていく局面ではドルの減価が進みます。
では、本当に米国の財政収支の赤字が拡大するだけでドル/円の為替レ-トが決まるのでしょうか?それも厳密に言えば違います。そもそもドル安円高に働く基本的要因があるから、米国の財政収支状況が色濃く反映されるということです。
その基本的要因とは、日米インフレ格差が大きく影響します。日本より米国のインフレが上回る、通貨価値の減価が円よりドルの方が進むということがハッキリしています。
そして、人口動態です。これも前提があるのですが、対外純資産国、経常収支黒字国を維持しての日本の人口減と、米国の人口増という要因です。ここではざっくり人口減は通貨高、人口増は通貨安と表現しますが、米国は「人口ボーナス(配当する側)」、日本は「人口オーナス(配当を受け取る側)」ということになります。米国で人口が増えているので通貨高に動くという勘違い、錯覚に陥りそうですが、そこは注意が必要です。
この2国間の根底にあるインフレ、人口動態の違いが、ドル安円高の流れをつくっていると言えるでしょう。
余談かも知れませんが、米国が人口減に転換したとしてもドル高には作用しません。日本とは逆に、ドルは減価し続けます。対外純負債国、経常収支赤字国を維持しての米国の人口減は、ハッキリ言っておしまいです。
資産を抱えて人口減になっていくのと、負債を抱えて人口減になっていくのとでは、まったく逆の現象が示されます。