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来年ドル・円は円高傾向か、米経済失速で金利低下

ブル-ムバ-グ

2020年のドル・円相場は、3回の利下げにもかかわらず堅調だったドルの強さに陰りが出て、円高傾向がやや強まるとの見方が出ている。市場関係者からは米経済失速による金利低下、米中貿易問題や11月にある米大統領選といった不透明要素によるリスクシナリオを想定する声がある。
みずほ銀行の唐鎌大輔チーフマーケットエコノミストは、11年目に突入した米景気拡大が1年後も続いている可能性は低いと指摘。米経済が失速すれば、米金利が低下して円高になると予想した。欧州中心にマイナス金利への懐疑論が広がる中、日本の長期金利がプラスになれば、「ある程度戻るフローもある」とみており、日本国債への一部資金回帰が円を支える可能性を指摘する。
シティグループ証券の高島修チーフFXストラテジストは、年前半を中心に「米中問題や米大統領選などの不透明要因でリスクオフが強まるシナリオの場合に、1ドル=100円前後への下振れ余地を内包した状態」を見込む。
ブルームバーグが集計した金融機関の来年末の予想中央値は105円で、最大98円の円高予想もある。
四半期に1円の円高が進むイメージで年末着地を104円と見るのは、三菱UFJ銀行グローバルマーケットリサーチの内田稔チーフアナリスト。相対的な金利水準の高さからドル安相場にはならないが、米金融当局の短期証券買い入れによるドル資金需給の緩和や米利下げ再開観測でドル高圧力が弱まり、内外金利差縮小やインフレ期待低下による日本の実質金利上昇が円高進行の追い風になると考える。  
為替市場にとって来年最大のイベントは11月の米大統領選だ。野村証券の後藤祐二朗チーフ為替ストラテジストは、米中や英国の政治リスクの後退と世界的な景況感の底打ちを理由に3月末を112円と予想するが、その後、米大統領選が重要なファクターになるとし、「アップサイドがまだあるのか、もうないならドル・円ショートに振るのかを決めたい」と述べた。
JPモルガン・チェース銀行の佐々木融市場調査本部長は、イデオロギー的に強い民主党候補者が勝利する可能性が高まれば、米国株の大幅下落を招き、レンジを越えて円高になる可能性はあると指摘。三菱UFJ銀の内田氏は、民主党はそもそも対中強硬姿勢であるため、仮に同党候補が勝った場合でも、「バイデン氏以外なら大統領選後も米中緊張は続く」ことを前提に置く。
フラッシュクラッシュで始まった今年のドル・円相場は、104円46銭から112円40銭と8円弱の値幅にとどまり、過去最小レンジを3年連続で更新するのがほぼ確実。先週は米中貿易戦争と英国の欧州連合(EU)離脱という2大政治リスクが後退したが、ドル・円は109円台後半止まりだった。
JPモルガンの佐々木氏は、円は実質実効ベースで2割程度割安で、ドル・円のフェアバリューは90円程度だが、「日本からの大きなフローがドル・円を押し上げ、止めている」と分析。こうした対外投資フローや日米インフレ格差の縮小、円キャリー取引の衰退といったドル・円が動かない構造的要因は来年も変わらないとの見方を示した。みずほ銀の唐鎌氏も、来年のレンジも狭く、今年の「二の舞もなくない」とし、レンジ相場を完全に抜け出すには、日本銀行によるマイナス金利政策の解除などが必要とみている。