fxdondon’s blog

fxdondon presents 世界の政治・経済・財政を考察し、外国為替相場を読み解きましょう

リスク資産に「買われ過ぎ」シグナル-JPモルガン

ブル-ムバ-グ
FOMCの利下げによる資産押し上げ効果を期待する投資家はやり過ぎているかもしれない。JPモルガン・チェースのストラテジストらによると、多くのリスク資産が「買われ過ぎ」のシグナルを発している。資産運用会社の米国株先物のポジションはここ数年で最もロングになっている。
複数の中央銀行が今年、金融引き締めから緩和方向へとUターンしたため、リスク資産も安全資産もそろって値上がりした。フェデラルファンド(FF)金利先物は31日の0.25ポイントを皮切りに、FOMCが年内に0.8ポイントの利下げを決めるとの予想を示唆している。
しかし、アバディーン・スタンダード・インベストメンツのマルチアセットチームは今週のFOMC会合を控え、失望に備えて株式と新興国債の保有を減らしている。戦術的資産配分責任者のケン・アダムス氏は「今はセンチメントが振れる可能性がある環境なので、それを踏まえたポジションを取る必要がある」と語った。
米株先物のロングに加え、テクノロジー株のショートポジションは急減、ジャンク債の上場投資信託ETF)のショートは2年ぶり低水準。JPモルガンの顧客資産調査によれば、新興国ソブリン債のオーバーウエートポジションは2005年並みの高水準にある。ニコラオス・パニギリツオグル氏らストラテジストは26日のリポートで「低金利環境の恩恵を受けた資産は、中銀が今後数カ月のうちに市場の緩和期待を裏付けなければ、売りに見舞われる恐れがある」と指摘。同社は利回り2%超の1カ月物米財務省証券を通じた現金(米ドル)保有の拡大を勧めている。
「誰が裸で泳いでいたかは引き潮になって初めて分かる」というウォーレン・バフェット氏の警鐘は、最近ではほとんど耳にしない。金融緩和の波が世界の金融市場に打ち寄せているからだ。
連邦準備制度と世界各国・地域の中央銀行は、経済成長の下支えとインフレ率の押し上げを試みているにすぎないが、当局による金利低下容認姿勢は、既に割高な資産価格を押し上げ、高利回りの追求をあおり高いリスクを伴う。
UBSグループのセルジオ・エルモッティ最高経営責任者(CEO)は先週、一層の緩和政策が資産バブルを生成させかねないと警告。ブリッジウォーター・アソシエーツのレイ・ダリオ氏やグッゲンハイム・パートナーズのスコット・マイナード氏といった著名投資家も同様に警鐘を鳴らしている。
マイナード氏は「米金融当局からのメッセージははっきりしている。最重要事項は経済成長と成長サイクルの延長だ。これは今年の積極的な利下げの可能性に扉を開くだろう。資産価格つり上げの時期に向かうと思うが、それは結局のところ持続可能ではない」と指摘した。
裸で泳いでいる可能性があるのはどこか。既に厳しい視線を集めている資産クラスを以下に挙げた。

レバレッジド・ローン
格付けがジャンク級(投機的水準)の企業に通常利用されるレバレッジド・ローン市場ほど懸念を集めている市場はほとんどない。レバレッジド・ローン債権は高い利回りに引きつけられる投資信託や年金基金、保険会社などの機関投資家の手元に直接もしくは証券化商品の形で行き着くことが一般的だ。
しかし、レバレッジド・ローンの残高は米国だけでも1兆ドル(約108兆円)を超えており、企業債務の急増を後押ししている。調査会社コベナント・レビューの試算では、企業買収などにレバレッジド・ローンを利用する企業は、負債EBITDA(利払い・税金・減価償却・償却控除前利益)比率が7.7倍と、4年前の5.5倍から上昇。多大な投資マネーが供給の限られる債権を追い求めるため、企業側は低めの金利で借り入れでき、寛大な条件を引き出させており、債権者を保護する抑制と均衡が損なわれている。

プライベート・クレジット
世界的な利回り追求の動きは、かつて銀行だけの領域だった市場にも広がっている。特に資本市場に通常アクセスできない中小企業向け融資が顕著な例だ。いわゆるプライベート・クレジット市場は約7660億ドルの規模に拡大し、近いうちに1兆ドル台に達するペースだ。
UBSによれば、次の不況ではプライベート・クレジット投資での損失はレバレッジド・ローン投資の損失とは比べものにならないほど大きくなる恐れがあるという。

ゾンビ企業
緩和マネーは、それがなければ閉鎖されたはずの一部企業の温存につながっている。そうした企業は、債務返済コストを長期にわたって営業利益でカバーすることができず、成長見通しが限られると定義される。国際決済銀行(BIS)によると、これらの企業は現在、先進国の非金融上場株の約6%を占めている。

ソブリン債
欧州で屈指の高リスク国債でさえも、前例のない水準に値上がりしている。わずか数年前に史上最大規模の債務再編を実施したギリシャの借り入れコストは今、過去最低水準にあり、指標10年国債利回りは先週2%を下回った。
イタリアは今月初めに2年債利回りがマイナス圏に低下し、10年債利回りは今年初めの3%超から半分の水準となった。政治的リスクはいずれも弱まっているが、両国は依然として膨大な債務を背負っている。

株式
米企業の収益見通しは精彩を欠き、通商問題を巡る懸念が残るものの、S&P500種株価指数の予想株価収益率(PER)は17倍だ。インターネット株バブルが破裂する前の25倍強には及ばないが、ウォール街のベテランの一部は特定分野でリスクが高まりつつあると警告している。リサーチ・アフィリエーツ創業者のロブ・アーノット氏は最近、大手ハイテク企業株のバブルの可能性を指摘。フェイスブックアマゾン・ドット・コム、ネットフリックス、グーグルの親会社アルファベットで構成されるFANG銘柄は2013年以来1167%上昇し、S&P500種の10倍強のペースだ。

不動産
ブルームバーグ・エコノミクスによる今月の分析では、カナダとニュージーランドの不動産市場が住宅価格の調整に対し最も脆弱なことが分かった。 住宅価格と賃料や所得の比率、インフレ調整後の住宅価格、家計債務を考慮に入れた「住宅バブル・ダッシュボード」によると、オーストラリアとノルウェースウェーデン、英国も懸念を集めているという。