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今のところ、カナダの利上げは年内多くて2回

トロント 15日 ロイター] - カナダ銀行中央銀行)が政策の自由度を失いつつあるように見える。中銀は利上げをゆっくりと進めると約束しているものの、米金利上昇の影響で国内の金融環境が想定以上に引き締まってきているからだ。
カナダ経済は、借入額を過去最大に膨らませた家計部門が住宅購入を活発化させ、成長をけん引してきた面が大きい。しかし借り入れコストが高騰し、足元で住宅販売や与信の伸びが鈍化しているだけに、今の状況には問題がある。
15日公表された4月の中古住宅販売は5年来の低水準を記録し、住宅在庫は2015年以降で最大に増加。3月の家計の借入額の前年比伸び率は3.44%と7年ぶりの低さとなり、住宅ローンの増加率も過去3年で最低だった。
苦境を感じているのは消費者だけではない。トムソン・ロイターによると、非金融部門の社債発行は4月までの1年間で前年よりも33%余り減った。バンク・オブ・アメリカメリルリンチが動向を追っているカナダ製造業の社債利回りは、4年半ぶりの高水準に達している。
こうしたカナダの金融環境の引き締まりは米金利上昇が原因だと、アナリストや投資家は口をそろえる。
債券運用大手ピムコのカナダ資産運用責任者エドデブリン氏は「カナダ中銀にとっての懸念は、米金利上昇が国内のターム物金利を中銀の金融政策で誘導したいと考えているよりも大幅に押し上げてしまう事態だ」と述べた。
米国債はその市場規模の大きさやドルが世界の主要準備通貨であることから、各国の債券利回りに際立った影響を及ぼしてきた。ただカナダは米国との経済関係が緊密なゆえに、米国債がカナダの金利を動かす力は一段と強い。
両国の金融政策を比べると、米連邦準備理事会(FRB)が15年以降に6回利上げして政策金利は現在1.50─1.75%。今年全体では3回を想定しており、一部の市場関係者は4回になると見込んでいる。
対照的にカナダ中銀は昨年7月からまだ3回利上げをしただけで、政策金利は1.25%にとどまっている。また追加利上げには慎重な態度を表明し、年内の利上げ回数は多くて2回というのが市場の見方だ。
ところがこの中銀の姿勢にもかかわらず、カナダの債券利回りは米国に追随して上昇を続けている。住宅ローンの指標として注目度が高い5年債利回りは2.30%を超え、7年ぶりの高水準になった。米5年債利回りは2.91%と09年以来の高さで、米10年債利回りも節目の3%を突破した。
カナダの5年債と政策金利の差は1年前の約53ベーシスポイント(bp)から106bpとおよそ5年ぶりの幅まで拡大。4月には中銀が政策金利を据え置いたにもかかわらず、大手のトロント・ドミニオン・バンクは期間5年の住宅ローン金利を45bp引き上げ、5.59%に設定した。それ以降もいくつかの大手行がローンの提示金利を引き上げている。
中銀が昨年終盤に行った見積もりでは、1年以内に残高ベースで半分近くの住宅ローンが設定金利改定を迎えるが、その時期に金利上昇が起きている格好だ。
ケンブリッジ・グローバル・ペイメンツのグローバル市場戦略ディレクター、カール・シャモッタ氏は「カナダの金融環境は恐らく、中銀が予想していたよりも急速にタイト化しつつある」と指摘する。
折しも中銀のポロズ総裁は今月に入って、家計債務が過去最大に上っている状態が経済にもたらすリスクについて警鐘を鳴らした。昨年第4・四半期の家計債務は2兆1000億カナダドルを超え、可処分所得の170%前後になっている。
TDセキュリティーズのシニア金利ストラテジスト、アンドルー・ケルビン氏は「レバレッジ比率が非常に高いので、1回の利上げごとに経済へのマイナス効果が大きくなっていく」と話す。
今後は中銀の金利コントロール能力低下がさらに鮮明になりそうだ。ケルビン氏は「中銀はこれまでも消費者や企業の借り入れコストを完全に制御できたことはなかった。そして米国とカナダの金融政策がややかい離し始めているため、コントロール能力の低さがより浮き彫りになりつつある」と説明した。(Fergal Smith記者)


[オタワ 16日 ロイター] - カナダ銀行(中銀)のローレンス・シェンブリ副総裁は16日、米国の通商政策に関する懸念が企業投資の抑制につながっているとし、北米自由貿易協定(NAFTA)再交渉を巡る先行き不透明性が、カナダ中銀が金利を低水準に維持していることの理由の1つになっているとの考えを示した。
シェンブリ副総裁は、国内の消費需要により企業はフル稼働に近い状態になっているとしながらも、NAFTAの将来を巡る先行き不透明性で投資と輸出が阻害されていると指摘。
「経済はほぼフル稼働しているとわれわれは考えており、インフレ率もわれわれの目標を下回るか、近い水準にある。それでも政策金利が中立金利よりも低い水準にあるのは、NAFTAに起因する足かせに備える必要があることが一部要因となっている」と述べた。
シェンブリ副総裁の発言は、NAFTA再交渉協議が妥結すれば、中銀の利上げに道が開かれる可能性があることを示唆している。中銀は2017年7月以降3回の利上げを実施したが、今年4月は金利据え置きを決定している。