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中国潰し 「シナグジット」

米輸入企業は今まで、中国製のアパレル、靴、おもちゃ、家電、オフィス用品などの商品を輸入してきた。これらの商品は追加関税徴収の対象となった。一部のメディアは、米消費者は家計的な負担が増え、不安を抱くようになると報じている。しかし、この言い方はまさに虚言であろう。
米市場で販売されているアパレルやベッド用製品を例では、米国の百貨店やファッションショップは中国製の商品で溢れ、中国製ではないものを探すのが至難の業だった。しかし、中国のアパレル加工企業で近年、各種コストの高騰で価格を押し上げ、中国製品を輸入する米小売り企業の利益が目減りした。このため、現在米国で、インド、スリランカインドネシアベトナムカンボジアなどで生産・加工されたものが増えた。価格が少し高くなり、デザインも微妙に変わったが、米消費者が気にする様子はない。
この例から、中国企業が「オンリーワン」の製品・技術を全く持っていないという事実が示されている。

10年近く世界一の座を維持している中国の特許の大半が登録から5年以内に放棄され、ほとんど無価値であることが分かっている。中国では「発明」「実用新案」「デザイン」の3種の特許が存在する。ブルームバーグ向けにまとめられた特許・商標を扱う上海の法律事務所JZMCのデータによれば、2013年に認められたデザイン特許のうち昨年時点で91%強が放棄されている。同年の実用新案特許の放棄率は61%、発明特許は37%だった。これに対し、米特許商標局によると、13年に認可された米国の特許では85.6%が保有維持費が支払われており、中国とは対照的だ。
JZMCのル・チュンフォン特許弁護士は「デザイン特許が放棄される率がこれほど高いという事実に驚いた。考えられているよりこうした特許は実際には価値がないということだ。デザイン特許の保持率があまりにも低ければ、より大きな制度的な問題ではないかという疑問を招くことになる」との見方を示した。
中国での高い特許放棄率は同国の特許政策が裏目に出たものとみられている。中国は自立した技術大国を目指す取り組みの一環として、企業や大学の特許出願に補助金を提供するなどの特許奨励策を実施している。これにより出願件数が急増し、8年前に国内特許の出願数で日本を抜き世界トップに躍り出た。以来トップを守り、昨年だけで180万件が認められた。
一方、これらの特許政策は登録後の補助がなく、保有者は増え続ける特許の手数料の支払いを余儀なくされる問題がある。発明特許1件の保有手数料は年900元(約1万4800円)だが、保有を続けると最大8000元にまで引き上げられる。それ以外のカテゴリーでも年600元から2000元へと増える。
こうした状況下で、発明特許よりも審査が甘いデザイン特許などは出願件数が増加する一方、米国の特許を文字通りコピーしたものなど質の低い特許が蔓延することになった。
米トランプ政権が、米企業の知的財産権を中国が侵害しているとして警戒を強めるなか、中国企業による米国での特許出願件数もここ数年で急増。米特許関連情報サービスのIFIクレームズ・パテント・サービシズによると、華為技術(ファーウェイ)と京東方科技集団(BOE)が17年の特許取得数で中国勢の1、2位を占めた。しかし、特許の放棄率からみると、中国が目指す技術大国への道のりは険しい。中国の特許の質は年々向上しているが、依然として米国の同業には遠く及ばないとみられている。(ブルームバーグ

米アパレル産業とベッド用品メーカーはすでに数年前からサプライチェーンを中国から他国に移した。ただ、サプライチェーンを移すことは短時間にできることではなく、それに巨額の投入と数年間の時間が必要である。
一方、米本土にも、日用品メーカー、オフィス用品メーカーなどが多数ある。米国内のメーカーは過去20年間、安価な中国製品が原因で、価格面で競争力を失っていた。しかし近年、原材料費、人件費、物流費、販売費等平均コストにおいて、「メイド・イン・チャイナ」と「メイド・イン・USA」の差が徐々に縮小しているとのことである。
米政府が来年、2000億ドル相当の中国製品に対する追加関税の税率を10%から25%に引き上げる場合、価格競争に勝つのは米国内メーカーかもしれないとの観測まで浮上している。米企業・製造業の復活、雇用の拡大は、まさにトランプ大統領が対中貿易制裁を発動した理由であろう。
いまだ、米国の対中貿易赤字は巨額にのぼる。米政府の対中追加関税措置は長い期間を経て、関税措置を使って中国製品の流入に「赤信号」を提示し、そのサプライチェーンを強制的に中国から他国に移転させるという回り道をさせる。中国を中心とした世界産業チェーンの一部も他国に移転され、いよいよ中国は「世界の工場」の時代に別れを告げなければならない。
同時に、対米輸出の減少により、巨額の対米貿易黒字によって拡大し続けた中国のドル建て外貨準備の減少も予測される。中国当局が外貨規制を一段と強化するとみられるが、どこまで抵抗できるかはわからない。