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揺れる新興国

ブルームバーグ
世界の金融市場で新興経済国への信頼感が急速に低下し、一部新興国がデフォルト(債務不履行)に陥った場合の保険料が2008年の世界金融危機以来の高い水準に跳ね上がった。市場関係者らは、新興国をめぐる不安の連鎖に歯止めがかからなくなったと説明しており、新興国をめぐる懸念が長期化するのは避けられない情勢だ。
頭文字を取って「BATS」と呼ばれるブラジル、アルゼンチン、トルコ、南アフリカ4カ国がそれぞれ国債の償還などを行えなくなった場合に備える金融商品クレジット・デフォルト・スワップCDS)のコストが急上昇している。
CDSコスト算出の基礎になる9月の「インプライド・デフォルト確率」によると、5年以内にアルゼンチンがデフォルトする確率は、マクリ政権が満額償還を求める債権者との法廷闘争終了時以来の高い水準である41%、トルコはリーマン・ショックなどに端を発した世界金融危機以来の31%、ブラジルは16年の後半に同国最悪のリセッション(景気後退)が深刻化して以来の18%、南アフリカは16年11月の米大統領選挙以来の15%にそれぞれ上昇した。
国債だけではない。新興国株の指標であるMSCI新興市場指数は6日、弱気相場入りに向けて続落。通貨バスケットは17年5月以来の安値近くで取引された。1月の高値に比べ19.7%低い水準だ。
JPモルガン・プライベート・バンクのグローバル投資ストラテジスト、アナスタシア・アモローゾ氏はブルームバーグ・テレビで「貿易戦争が関心を集め、米金融当局が世界の他の国や地域に比べて圧倒的に速いペースで金利を引き上げる限り、一段のドル高を支持する環境にある」と語り、新興国通貨は下落が続くとの見方を示した。
クレディ・スイスのストラテジスト、カスパー・バーソルディ氏はトルコとアルゼンチンについて「リセッションや高まる政治リスクにさらされる可能性がある中、中期的に重大なデフォルトリスクを抱えている」と解説する。
さらに大きな問題は、市場心理の冷え込みだ。群集心理に支配された状態では、個々の国の相対的リスクや潜在的リターンがどうあれ、この局面で買いを選択する投資家は大やけどを負う心配があり、全ての新興国を同一視して見境なく売る動きが強まっているのだ。
資産運用世界最大手、米ブラックロックのマネーマネジャー、パブロ・ゴールドバーグ氏は「新興国をめぐる信頼感の危機が起こっており、連鎖している。短期的な為替の変動を踏まえると、思い切って手を出すのは難しい」と話す。
ドイツ銀行のアジアマクロ戦略責任者サミール・ゴール氏は、「もはや新興国の経済ファンダメンタルズ(基礎的条件)だけの問題ではない。混乱の波及が問題になってきている」と指摘した。SMBC日興証券はリポートで、新興国リスクが数カ月続くリスクを再認識する必要があると警告した。
トルコの大手民間企業と金融機関、政府が発行する外貨建て債合わせて160億ドル(約1兆7800億円)相当が来年末までに満期を迎える。その大半は金融債。また、通常の債券とイスラム債があり、額面は最小で1億ドル。通貨リラが急落する中でトルコの銀行や企業が事業を続けるために必要な外貨を引き続き調達できるかどうかに関心が集まっている。

中国本土の社債市場でデフォルト(債務不履行)が一段と増えつつある。もし投資先が不履行となったら多くの資金が回収できないと覚悟した方がいい。これがブルームバーグ・ニュースが2014年以降に不履行に陥った公募債84本を分析して得た結論だ。
同年に中国本土初の社債不履行が容認されてから、今年8月27日時点までに元本もしくは利息の支払いが不履行となった803億元(約1兆3000億円)相当についての返済率は17%。
世界的には無担保優先債の保有者には約半分の資金が返済されているとムーディーズ・インベスターズ・サービスは指摘する。
中国の低い返済率は、償還期限までのクレジットリスクを評価するメカニズムがまだ発達していないことを浮き彫りにしている。本土市場では債券保有者と発行体の間での債務再編合意はまれで、デフォルト債は売買されないのが一般的だ。不履行となった債券が救済されるとの想定の一掃を当局は図るが、政府介入の思惑も市場に残っている。