fxdondon’s blog

fxdondon presents 世界の政治・経済・財政を考察し、外国為替相場を読み解きましょう

来年2019年にドル高相場は一変するかどうか

●景気下振れを示唆する経済指標が見られれば、FRBは迅速に現在の利上げ姿勢を修正する可能性があるだろう。
足もとでの米国経済の良好さは、昨年末に実施された大型減税による一時的な側面も強い。米国以外の主要国では、既に成長ペースの鈍化傾向が現れており、その影響が今後は米国に及んでくることが考えられる。こうした点を踏まえれば、来年に入ってからではなく年内にも、FRBの利上げペースの鈍化や来年に入ってからの政策金利の頭打ち観測が市場に広がり、ドル安、米長期金利低下など金融市場の大きな動きへと繋がる可能性があることに留意しておきたい。
●深刻化する米国の双子の赤字問題。米国の経常収支(財貿易収支にサービス貿易収支、所得収支などを加えたもの)のGDP比率を見ると、2017年は-2.4%だった。これは2011年以降の平均値-2.5%とほぼ同じ水準であり、足もとで経常赤字が大幅に拡大しているわけではない。問題は足もとの状況ではなく、先行きの経常収支が悪化していくと予想されることだ。国際通貨基金IMF)の見通しによると、2018年には同比率は-3.0%、2019年には-3.4%とさらに悪化し、1987年の水準に並ぶと予想されている。 その背景には、海外経済と比較して米国経済が良好さを維持し、その結果、米国の輸入が拡大するとの見通しがある。
米国の財政赤字についても、経常収支と似た構図だ。リーマンショック後の急激な景気悪化による税収減と景気対策によって、2009年の財政収支のGDP比率は、2009年には一時的に-10.8%と2桁に乗せた。しかしその後は改善傾向を辿り、2017年の同比率は-3.7%と、2000年代の平均値-4.7%よりも低い水準にある。
財政環境の悪化は、政府の資金調達の拡大を通じて長期金利を押し上げ、経済活動に悪影響を与える。2018年下期に米財務省が発行する財務省証券の総額は7,690億ドルと見込まれているが、これは前年同期と比べて+63%の大幅増加だ。
中期的に米国財政収支の歴史的な悪化傾向が続き、それが貿易・経常赤字の拡大をもたらすとの期待が金融市場で強まっていけば、いずれは米国が海外から円滑に資金調達ができるかどうか、大きな懸念が浮上することになろう。それはドルの信認低下を伴う形で、ドルの大幅下落と、長期金利の大幅上昇を生じさせかねない。
野村総合研究所 金融ITイノベーション事業本部エグゼクティブ・エコノミスト

この方の観方は、大方私fxdondonの観方と共通しています。
要点は、
●米国の政策金利の頭打ち観測でドル安
双子の赤字の拡大はドル安
ということになります。
上記について、私fxdondonが補足しますと、「双子の赤字」のひとつ経常収支赤字拡大は通貨安に結び付きやすいと言えます。それは、投機的にというよりは実体的に、ドルが貿易取引決済などにおいて他の国の通貨に換えられやすくなるということです。
そして、財政赤字拡大はソブリン格付けにおいて、大きな影響を及ぼします。格付け会社財政赤字拡大を非常に気にします。米国政府がドル建て債務を膨らます、日本政府が円建て債務を膨らます、こういった自国通貨建て債務の膨らみについては実体的には大した問題ではないのですが、ソブリン格付けにおいては格下げの要因になります。
格付け会社大手3社のうち、現在最上位の格付けを付与しているのは2社ですが、米国経済の失速、低迷が明らかになると対GDP比で財政赤字比率が上昇します。これをネタに、格付け会社は格下げに動くことになるでしょう。米国債は日本国債とは違い、海外の政府や投資家の保有が多いために、為替変動も大きく動くことになります。
上記記事の「ドルの信認低下を伴う形で、ドルの大幅下落と、長期金利の大幅上昇を生じさせかねない」というのは、そういったことになります。そして、金利上昇には、「良い金利上昇」と「悪い金利上昇」とがあります。現在の米国の短期金利の利上げは良い金利上昇と見なされています。しかし、米国が利上げを進めるうちに、景気失速を招く悪い金利上昇だと判断が変わる時点で一変します。
また、長期金利は通常、市場に委ねられていますが、FRBやECB、日銀など中央銀行が莫大な国債保有するようになり、長期金利もコントロ-ルするようになりました。FRB保有する米国債を減らす方向に動き始めており、ヘッジファンド米国債価格下落、金利上昇を目論んだ空売りを膨らませていますが、新興国国債などから逃避してきた資金は米国債に回ってきており、米国債は底堅く推移しています。
しかし、今度は米国債自身に問題が生じると、米国債市場から資金流出が起こります。再び、危険な新興国へ逃げるわけにもいかない、リスキ-な株や社債に逃げるわけにもいかない、とにかく安全資産へと資金移動が起こります。そうすると、米国よりも遥か格下にもかかわらず、日本国債が選好されます。これは「投資」ではなく、あくまで「投機」目的ですが、円高外貨安になれば海外投資家は為替差益が得られますから、文句のない常套手段となっています。
まぁ、これらのことはまだ先の話です。
目先は、米国経済もピ-クアウトしたとはいえ、利上げも継続され、年内は米国経済が大きく崩れ出すことはないでしょう。問題は来年2019年です。