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原油価格上昇はどこまで?

Japan Business Press

不発に終わる可能性が高い「さらなる原油高」のシナリオ

2018年5月の米国の原油生産量は日量1070万バレルを突破し世界一のロシアに急接近しているが、直近の国内の石油掘削装置(リグ)稼働数も834基となり、2015年3月以来の高水準となった(前年同期のリグ稼働数は703基)。
原油輸出も好調である。足元の輸出量は日量230万バレルと過去最高となった。米国の財輸出に占める原油・石油製品の割合も9%を超え(実質GDPベース)、21世紀初頭に比べ3倍に迫る勢いである(市岡繁男氏の分析に基づく)。
前回のシェールオイルブームの最盛期の価格水準には及ばないが、米国南部のパーミアン地域を中心に「単位面積当たりでより多くの原油を抽出できる」技術が確立し、シェール企業の採算水準が1バレル=25ドルにまで下がっていることから、現在の原油価格は当時の100ドル並みの価値があるようだ(5月1日付ロイター)。
シェール企業の財務状況も大幅に改善している。キャッシュフローが潤沢となったことから、大手のシェール企業は新規油井の開発費用を初めて自社資金で賄えるようになった(4月24日付フィナンシャルタイムズ)。
このような情勢から米国の原油生産の増加幅が拡大することは必至であり、OPECがさらなる減産努力を行わない限り、世界の原油市場の需給は緩み続けることになる。
ゴールドマンサックスは5月2日、「原油価格は7月に1バレル=82.5ドルに達する。商品への投資は再び安全になっている」との見方を投資家に示した。「2020年に向けて1バレル=100ドルの大台も視野に入ってきている」との予測も出始めている(5月4日付東洋経済オンライン)。
強気筋にとっての決め手は「米国のイラン核合意破棄」である。イランの原油生産量は2015年の制裁解除以降日量約100万バレル程度増加し、現在同380万バレル超となっており、4月の輸出量も同約262万バレルと過去最高となった。だが、米国のイラン核合意破棄により輸出が低迷し、年末までに日量約50万バレルの減産を余儀なくされるとの見方が一般的である。
だが、今回米国が核合意を破棄しても、中国(日量65万バレル)やインド(日量50万バレル)はイラン産原油の購入を続ける可能性が高い。「米国の制裁が全面的に発効される11月までにイランは原油生産量を駆け込み的に増大させる」とする見方(ドイツ銀行)もあり、そうなれば逆に「失望売り」が発生するのではないだろうか。
「第2の中国」と目されるインド(世界第3位の原油輸入国)で、悪影響が出始めている(4月30日付OILPRICE)。1バレル=50ドルの原油価格を良しとするインド経済ではインフレ懸念が高まり、景気が急減速する懸念が高まっている。原油高に苦しむインドに対して、ベネズエラは「官製仮想通貨ペトロで決済すれば原油価格を30%割り引く」との提案をしている(4月30日付OILPRICE)。
2007年半ばに原油価格が1バレル=80ドルを超えると米国の原油需要の減少が顕著となったが、リーマンショック後の病み上がり(借金漬け)の世界経済の下では1バレル=70ドルがその分岐点になるのかもしれない。
原油市場で供給増に加えて需要減という要因が重なれば、地政学リスクの高まりにもかかわらず、2014年後半に生じた「逆オイルショックの再来」の再来が起きる可能性があるのではないだろうか。


まぁ、今回の米国のイラン核合意破棄は、明らかに原油価格上昇を狙ったもの。トランプが貿易赤字を少なくする施策の一つでしょうね。
原油価格の上昇がどこまでいくかはわからないものの、バレル70ドルあたりは満足しているでしょう。
ただ、米国がその先に見据えているのは、イラン過激派を刺激することによって引き起こされる戦争でしょう。これはボルトン大統領補佐官にとって熱望していることであって、イランを叩き潰しておきたい思惑がある。イラン過激派が挑発的行動に出れば、待ってましたと言わんばかりにイスラエルをけしかけることでしょう。
原油価格が上昇するかどうかは、中東情勢の緊張がどこまで高まるかによると、個人的には推察しています。