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原油価格急落は米国に不幸をもたらす

原油価格の下落、世界最大の産油国・米国に打撃か

(CNN Business)

シェール革命による原油天然ガスの増産が進み世界最大の産油国となった米国にとって、最近の原油価格の下落は以前に起きた原油価格の急落時よりも経済にとってより大きな打撃となる可能性がある。
米金融大手モルガン・スタンレーは、原油価格が低水準にとどまると、1~3月期の国内総生産(GDP)に対して0.15~0.35%の下押し圧力となるとの試算を発表した。ガソリン価格が下がったことで得られた貯金についても消費者が使わないとの懸念を示している。
ムーディーズ・アナリティクスによれば、原油価格の下落はかつて米経済にとって明確な好材料だったが、いまでは「せいぜい、さざ波程度」だという。運転手や航空会社などは原油価格の大幅な下落の恩恵を受けるものの、石油業界では経営破綻や債務不履行、雇用の減少などが起こり、他の業界にも影響が出る可能性が高いという。
トランプ大統領ツイッターへの投稿で、原油価格の下落は米国にとって良いことと述べた。しかし、専門家からは懸念する声も出ている。
キャピタル・エコノミクスによれば、原油価格の下落が米経済に与える打撃はより早く感じられるほか、ガソリン価格の下落によって消費に回される支出による押し上げよりも大きなものとなる可能性がある。人々が在宅や自宅の近くで仕事をするならば、いずれにせよガソリンの消費は多くなく、そのためガソリン価格の減少もたいして助けにならない可能性があるという。
石油産業の雇用数は2019年は約150万人だった。ガソリンスタンドでの雇用が94万5000人。石油やガスの採掘をはじめ、その支援やパイプラインの運営といった分野の雇用が47万1000人。製油所の雇用は6万9000人にのぼる。


(DIAMOND ONLINE)
先行き不安感が一気に強まった米経済だが、とりわけ影を落とすのが原油価格の暴落だ。
国際指標の米国産WTI原油先物価格は、新型コロナウイルス問題による世界の需要鈍化への懸念から、2月末には、1バレル50ドル前後まで徐々に下がっていたが、先週金曜以降、同30ドルを割る大幅な下落になった。WTI原油先物の期近物は米国東部時間9日の未明に1バレルあたり27.34ドルと、2016年2月以来の安値となった。
コロナショックによる株価の下落ペースを見れば、2008年のリーマンショック時を上回る速度であり、市場関係者などの間でも世界金融危機の再現といった懸念が聞こえる。
しかし、「金融危機」と後に命名される時期には、必ず共通する事象として流動性の枯渇があるのだが、今のところは、当局による資金供給やFRBの緊急利下げなどもあって、ごく一部に調達コストの上昇はあるものの、全体として目立った問題としては表れていない。
言い換えると、世界最大の決済通貨である米ドルの資金調達に甚大な問題が生じない限り、事態が世界的な金融危機に発展するリスクは抑えられたままとなる。
しかし、原油価格が大幅に下落したとなると、事態は新たな段階、第2ステージ入りしたと考えたほうがいいいかもしれない。
原油価格の下落が米国にとって負の影響を及ぼすことは、すでに2015年から2016年2月にかけての大幅な価格下落で経験済みだ。
原油価格の大幅な下落によって、米国などのエネルギー関連企業の採算が急速に悪化することは必至だ。それが米国での社債などクレジット市場で価格下落(利回り上昇)を加速させる恐れがある。
さらには、採算の悪くなったエネルギー企業は投資を抑制するだろう。
2015~2016年の原油価格下落時には、鉱業探査施設で設備投資が長く抑制されるなどで、米経済は停滞色が強まった。
この時と同じ経路をたどるシナリオが突如、現実味を帯びてきたと考えられる。
事態が長期化するとの不安が募れば、結果として、コストの回収の時間のかかる設備投資は先送りされると考えるのが自然だろう。(三井住友銀行ニューヨーク チーフエコノミスト 西岡純子)


両記事に共通するのは、原油価格急落は米国に不幸をもたらすということになります。
今から約5年前、2015~2016年あたりの記憶がある方は思い起こすといいでしょう。

2015年6月24日 朝日新聞
伊藤忠商事は24日、シェールガス開発事業から撤退したことを明らかにした。米国で石油・ガス開発をてがけるサムソン・リソーシーズ社の株式25%を持っていたが今月、同社へ1ドルで売却した。ガスや原油の価格が下落し、市況の回復が見込めないと判断したためだ。伊藤忠は2011年、サムソン社に780億円を出資してシェール事業に参画。だが、15年3月期に435億円の追加損失を出すなどし、累計で損失額が約1千億円にふくらんでいた。

 

その後、シェール大手サムソン・リソーシーズ社が41億5千万ドルの負債を抱え、9月16日に破産法の適用を申請しました。
世界経済の鈍化と特に中国の需要低迷によって、エネルギー価格が低迷し、シェール開発の採算は急激に悪化しました。
この状況は、これからの展開を見通す上で重要です。今回も過去から学ばなくてはなりません。

2015年当時のデ-タを振り返りましょう。

WTI原油先物価格

 

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米国 ガソリン価格

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米国GDP

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米国 設備稼働率

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米ISM製造業景況感指数

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米株 NYダウ  上のISM製造業指数を照らし合わせると、株価の「根拠なき熱狂」ぶりがよくわかります。

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ドル/円  この時期、米国のは利上げ、日本の異次元金融緩和により参考にはならず?

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 代わって、カナダドル/円

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 最後に、上記の中で「世界金融危機」には程遠いような記述がありました。

確かに、現時点では流動性の枯渇は観られません。しかし、前回の世界金融危機サブプライムロ-ンという、ロ-ン全体ではごく一部の不良債権が、それを組み込んだデリバティブ金融商品全体を腐らせ、世界中の銀行総破綻の一歩手前まで金融危機が進みました。

昔も今も変わらず、シェ-ル企業などジャンク債が組み込まれたデリバティブ金融商品はもうすでに大量に既発済で、高利を求める投機筋、投資家、資産家に出回っています。現在、正常債権と位置づけられている優良企業債務でも、業績悪化とともに灰色債権や不良債権に変わることがあります。そうなったら、信用不安、クレジットクランチに陥ります。

クレジットクランチっていう単語、懐かしいでしょ?2008年あたりの金融危機で、よく聞かれた言葉です。忘れかけられたこの言葉、再び耳にするのはいつでしょうか?早ければ年内・・・、まぁ予想はやめときましょ。予想も無理、無駄(苦笑)。成るようにしか成らないですし、我々は何だかんだ「サプライズ」として受け入れるしかないのですから。