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トルコ  「後期流動性貸出金利」を0.75%引き上げ年13.5%へ


トルコ中央銀行は25日開いた金融政策決定会合で、複数ある政策金利のうち事実上の上限金利である「後期流動性貸出金利」を0.75%引き上げ年13.5%とした。引き上げは2017年12月以来、3会合ぶり。6月の大統領選で再選を目指すエルドアン大統領は利上げ反対を公言していたが、通貨リラの下落を食い止めるため、米金利の上昇に対応した。
中銀は声明で、リラ安の進行による輸入物価の上振れリスクなどをあげ、「物価安定支援のため慎重な金融引き締め実施を決めた」と表明した。
事前の市場予想の中心は0.5%の利上げだった。実際の利上げ幅がこれを上回ったことで、外国為替市場で1ドル=4.08リラ台で推移していたリラ相場は中銀の利上げ発表の直後、同4.04リラ前後に上昇した。それでも「相場を反転させるには不十分」(市場関係者)と受け止める声が多い。
エルドアン氏は19年11月に予定していた大統領選と国会総選挙を18年6月24日に前倒しすると決めたばかり。利上げが景気に与える打撃をなるべく抑えて有権者にアピールする考えだったが、このままリラ安が進めばインフレ懸念が強まり、かえって国民の不満が高まると判断したもようだ。
トルコの景気は政府の様々な刺激策で拡大している。17年の実質成長率は7.4%の高さで、過熱感も指摘される。国内の需要増による輸入の伸びや、原油など資源の輸入価格上昇が経常赤字の拡大につながっている。
直近の消費者物価指数(CPI)上昇率は10.2%と、中銀が目標とする5%の2倍だ。リラ相場は年初から24日までに対ドルで7.3%、対ユーロで9%下落し、いずれも最安値の水準。先行きの景気への影響を見通した投資家の売りで、代表的な株価指数BIST100は1月下旬のピークから約10%下げた。
企業は外貨建て債務の返済に苦しむ。食品最大手のユルドゥズや有力財閥のドウシュは銀行に返済猶予期間の設定など債務再編を要請した。成長のための資金調達でなく、債務返済を目的とした新規株式公開(IPO)の動きも広がっている。
政府統計によると、トルコの民間部門の対外債務残高は過去5年で約4割増え、3163億ドル(約34兆円)に達する。
トルコの場合、エルドアン氏の強権的な統治手法による法の支配の弱体化、シリアへの軍事介入、対米欧関係の悪化といった事情もリラ相場の下落につながっていた。しかし、新興国に流れ込んでいたマネーの逆流はトルコだけの現象でない。
米欧は相次ぎ、緩和型の金融政策の修正を進めている。新興国が通貨防衛のため金利を引き上げれば、成長の抑制要因となり、市場拡大を期待する外国企業からの直接投資の受け入れにもブレーキがかかりかねない。
マネーの逆流に対する新興国の耐性は、条件によって様々だ。トルコや南アフリカは対外債務に占める短期債務の比率が2割を超え、資本が流れ出すことに対し、十分な準備ができていないとみられている。


まぁ、個人的には、インフレが収まらない以上、トルコリラの通貨価値減価は進むものと観ている。

では、本邦機関投資家トルコリラへの観方はどうなっているのか、参考まで。


トルコの主要選挙は今年6月へ前倒し  ~リラは足もとで持ち直しも、注意は怠れない~

トルコでは、来年11月に実施予定だった大統領選挙および総選挙が今年6月24日に前倒しされる方向となりました。通貨リラは、4月に入って最安値を更新したものの、選挙前倒しの発表を受けて、足元では持ち直しています。 同国では、2016年7月に起きたクーデター未遂事件の影響の反動や景気刺激策などを背景に、2017年に経済成長率が4年ぶりに7%台に高まった後だけに、景気は今後、鈍化に向かう見通しです。また、内戦が続く隣国シリアへの対応などを巡り、外交面でのリスクが高まっています。エルドアン大統領は、これらの状況が時間の経過と ともに自身や与党に不利に働きかねないと考え、選挙の前倒しを決断したとみられます。なお、前倒しは、大統領が党首を務める与党AKP(公正発展党)と連携する右派政党の党首の呼びかけを機に決まりましたが、選挙日程 は呼びかけよりさらに2ヵ月も早められました。同国は、クーデター未遂事件以降、非常事態宣言下にあり、大統領を中心に強権的な政治が行なわれ、反政府勢力などへの締め付けが厳しくなっています。さらに、選挙が急遽、大幅な前倒しとなることなどから、野党の選挙対策が十分に整わない可能性が高まり、エルドアン氏が大統領の座を、 AKPは第1党の座を、維持するとの見方が現時点では有力です。また、2017年4月の国民投票憲法改正が承認され、実権大統領制への移行が決まっており、今回の前倒し選挙を経て移行が実現します。このため、強権的な 政治は続くとみられるものの、大統領や政府が議会を通さずに新法を成立させたり、権利や自由を制限・停止した りすることができる非常事態宣言が選挙を経てようやく解除されると見込まれることは、明るい材料と考えられます。
さらに、憲法改正の是非を問う国民投票の際と同様に、前倒し選挙に向けて、今後、大統領や政府が通貨リラの安定に配慮するようになるとみられ、通貨安の阻止に向けた金融引き締めへの期待が高まっています。
しかし、大統領や政府が、国民からの支持の取りつけなどに向け、反米などの排他的な感情を煽るような言動を今後、エスカレートさせる場合などには、市場心理の悪化につながることも考えられるだけに、注意を怠れません。



MARKET LETTER
~目先は金融引き締め、長期的には経常赤字体質の改善が求められる~

トルコ・リラは、3 月以降急速に下落し、足元では一時対米ドルでの安値を更新しました。この背景には、市場のリスク回避姿勢の高まりや、市場関係者からの信頼が厚いシムシェキ副首相が辞任するとの観測、シリア
情勢の緊迫化などが挙げられます。
トルコの経常赤字は他の主要な新興国と比較しても大きく、赤字の埋め合わせを海外からの証券投資資金の流入に依存しています。そのため、トルコ・リラは市場のリスク・センチメントの影響を受けやすく、市場のリスク回避姿勢が高まる場合には、海外からの資金流入が細り、通貨安圧力が高まる傾向にあります。3 月以降、米中の貿易摩擦の強まりに対する懸念などを背景に市場のリスク回避姿勢が高まる中、経常赤字による対外バランスのぜい弱性が意識されて、トルコ・リラは下落しました。  
4 月に入ると、現地メディアが、シムシェキ副首相が辞任する意向と報じたことで、トルコ・リラ安圧力がさらに高まりました。市場や経済に精通するシムシェキ副首相は、エルドアン大統領が独裁色を強める中にあっても、政府に対する市場参加者の信頼を維持する要の役割を果たしてきました。もしシムシェキ副首相が辞任して、エルドアン大統領に忠実な人物が副首相に就任する場合、政府が市場や経済の不均衡を省みずに高成長を追求することで、インフレの加速とトルコ・リラ安をまねき、結果としてトルコ経済が悪化することが懸念されます。今回の報道により、こうしたリスクが懸念されて、トルコ・リラはさらに下落しました。
さらに足元では、シリア情勢の緊迫化もトルコ・リラ安圧力となっています。シリアのアサド政権が化学兵器を使用した疑惑に対して、米国のトランプ大統領がシリアに対して軍事行動を起こす意向を示唆したことで、中東の地政学リスクへの懸念が高まり、トルコ・リラは続落しました。
長期的な視点では、トルコ・リラの安定のためにはトルコの経常赤字体質の改善が求められますが、大幅な経常赤字となっているいびつな対外バランスを好転させるためには、引き締め的な財政・金融政策が必要とされます。しかし、2019 年 11 月に予定されている総選挙での勝利を確かなものにしたいエルドアン大統領は拡張的な財政政策を実施し、緩和的な金融政策を求める傾向にあります。そのため、経常赤字の改善は現時点ではあまり期待できず、トルコ・リラが市場のリスク・センチメントの影響を受ける不安定な状況が続きやすいとみています。