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EUR/USD 上昇を見込むレポ-トより

金融市場調査部  SPECIAL REPORT  2018/4/24

足下、ドル高・円安が進行しています。国際情勢を巡るリスクの後退と米国の金利上昇が背景にあるようです。ただし 11 月の米国の中間選挙までは、引き続きトランプ大統領を 中心とする外交・安保・通商政策等のリスクが浮かんでは消えを繰り返すと思われます。
これまでのユーロ高の原因は何だったのでしょうか。振り返れば、ユーロドルの上昇は昨年 4 月頃から俄かに始まりました。ユーロ圏で 潜在成長率を上回る好調な経済成長率が続くなか、GDPギャップが縮小し、物価が緩やかに上向き始めました。これをみて ECB が金融政策の正常化(量的緩和の縮小や利上げ)を行うとの思惑が徐々に高まり始めたことに遡ります。
ECB 理事会では慎重な金融政策正常化を約束する「フォワドガイダンス」が修正され、追加利下げの可能性が排除されました。さらにドラギ総裁が「 いま、 すべての兆候はユーロ圏の景気回復の強まりと 広がりを示している。デフレ圧力はリフレに変わった」と述べたことで、市場参加者の金融政策正常化期待は確 へと変わりました。これを機にユーロドルレートと米独実質 金利差の連動が完全に途切れ、ファンダメンタルズでは 明不能な、行き過ぎた金融政策正常化期待によるユーロ高が始まったのです。
このように、ユーロ高の原因はユーロ圏の景気回復が第一にあります。そして、それを前提に市場参加者の金融正常化期待が高まるとともに、キャピタルゲイン狙いの投機的なユーロ買いが膨らんだことにあります。
そのため大前提にある景気回復が続かないとなれば、これまでのユーロ高メカニズムは逆回転し始める恐れがあります。すなわち、景気悪化 → 金融正常化期待の後退 → 投機筋のポジション調整(ユーロ売り)→ ユーロ安という流れです。
ECB は 1月の理事会で「ユーロ高が景気の強さを反映したものなら良いが、足下のように正常化期待に起因するものである場合、インフレへの下押し圧力が強い」との認識を示し、3月の理事会でインフレ見通しを下方修正しました。また、ユーロ高による景気減速懸念を受け、利上げの時期やペースの予想を表す Euribor先物のカーブは既に大きく変化しており、市場参加者の金融正常化期待が後退し始めていることを示唆しています。Euribor先物のカーブにみる利上げ時期の予想は、年初は 19年6月でしたが、足下では 12月へと半年ほど後ずれしています。
米国のトランプ大統領は日本に対して円安批判を強めず、中国を為替操作国に認定することも見送ってきました。また、米国自身が積極的なドル安政策を標榜することもありませんでした。この立役者がこれまでのユーロ高であ ったことは明らかです。
ドルの価値の 6割はユーロとの比較で決まります。過去を振り返っても ECB の金融緩和でユーロ安が 進めばドル高、ECB の金融政策正常化への期待でユーロ高となればドル安と、ドルインデックスはユーロの動向に振 らされて来ました。そのため、今後ユーロ安が進行すれば、それはドルインデックスの上昇に直結することでしょう。
今後ユーロ安によってドルインデックスが上昇してくれば、ドル安政策に打って出ることに躊躇はないでしょう。中間選挙までにはまだ 7ヵ月もあります。今後のユ ーロの動き次第ではいつまた米国がドル安政策を強めてもおかしくはありません。
 
メインシナリオの骨子は、下記の通りです。
 ① ユーロ高によって輸出は停滞しているものの、内需の回復が頑健であり、当面は潜在成長率を上回る経済成長 が続く
 ② そのため需給ギャップの改善と緩やかなインフレが続き、 ECB は金融政策正常化を着実に進める
 ③ ECBの資産買入れ(月300億ユーロ)は9月で終了し12 月までにゼロ、利上げは 19 年 7 月との見方を維持
 ④ ユーロドルは米独金利差とともに緩やかに上昇

EUR/USD 月足)

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