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逆イールドを踏まえた 2020 年の米国経済

Market Flash / 市場分析レポート
第一生命経済研究所 調査研究本部 経済調査部

・2018年12月3日に部分的な逆イールド(2年5年金利差)が発生してから約1年が経過。しかし ながら、現在のところ米国の景気後退を強く示唆するサインはなく、実体経済は堅調に推移して いる。消費、雇用、設備投資は何れも底堅いデータが多く、GDP成長率のトレンドは潜在成長 率を明確に上回っている。そうした下で金融市場は楽観論が支配的。主要株価指数NYダウの 3万、NASDAQの9000pt突破が現実味を帯び、クレジット市場ではハイイールド債1の利回りが5% 割れに迫っている。
・製造業の循環はISM製造業指数や製造業PMIに代表される企業サーベイの波形をチェックす ることでおおよその姿が把握できる。製造業は、主にIT関連財の在庫循環によって生み出され る片道2年程度のサイクルを持つことが知られている。その上で企業サーベイの波形をチェック すると、ISM製造業と製造業PMIを平均した数値は秋口頃からトレンドが上向きつつあり、 下降トレンド終了を示す動きになっている。これは世界的なIT関連財の在庫調整進展を反映し た動きと考えられ、その前提に立てば、上向きトレンドが2年程度続くとイメージすることがで きる。飽くまで過去の経験則に基づく漠然とした姿に過ぎないが、2020年に5Gが本格稼働し、 更にAI、自動運転といった次世代の技術革新を担うテーマが数多く控えていることを踏まえる と、過去のパターンが繰り返される蓋然性は相応に高いように思える。
・次にクレジットサイクルに目を向けると、こちらも異常な動きは観察されていない。クレジット サイクルは特定の周期を持たず、5年から10年といった時間軸で変動するため、過去の経験則を 当てはめることは難しい。ただし、少なくとも現時点で、既往の長短金利差縮小(逆イールド) が実体経済を蝕んでいる様子はない。逆イールドが景気後退を引き起こすメカニズムとして、長 短金利差の縮小(逆転)が銀行の信用創造機能を破壊する経路が指摘されているが、上述のとお りクレジット市場からリスクマネーが流出している様子はなく、また非金融法人の債務残高をみ ても、リーマンショック後の深刻なデレバレッジからの回復が続いており、企業のバランスシー トには債務が積み上がっている。米非金融法人の債務残高GDP比がトレンド線(片側HPフィ ルターで抽出)を上回って推移しているのは、良くも悪くも、米企業が支出に前向きであること を示していると思われる。少なくとも企業がデレバレッジを優先している様子はない。