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fxdondon presents 世界の政治・経済・財政を考察し、外国為替相場を読み解きましょう

かなりの円高が進む可能性  元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一氏

約10年半ぶりに利下げを行った米国をはじめ、各国が金融緩和基調を強めている。秋に消費増税を控える日本に円高懸念はないのか。
為替決定の理論は、経常収支で解説される「フロー・アプローチ」、マネーサプライ(通貨供給量)に基づく「マネタリー・アプローチ」、長短金利に基づく「アセット・アプローチ」、物価指数に基づく「購買力平価」などがある。
為替は資産市場での価格形成なので、ストックで考えざるを得ない。政府が介入しない変動相場制であればストック均衡だ。この意味で、フロー・アプローチは現時点では意味がない。
マネタリー・アプローチとアセット・アプローチ、購買力平価は、根本原理は一つで、それぞれ見ているところが違うだけだ。マネタリーベース(中央銀行が供給する通貨)からマネーサプライが決まり、同時に実質長短金利差も決まる。また、ちょっと長い目で見れば物価水準も決まる。
というわけで、円相場は、日米のマネタリーベースの比率で「だいたい」説明可能で、中短期では日米の実質金利差でも比較的うまく説明できる。
10月に消費税率が10%に引き上げられると、日本の予想インフレ率が低下する可能性がある。となると、名目金利から予想インフレ率を引いた実質金利は高まるかもしれない。
一方、米国では、今後の金融政策次第であるが、追加利下げがあれば名目金利は下がる。もし追加利下げがなければ当面は名目金利は動かない。いずれにしても、日米の実質金利差は広がり、日本の実質金利のほうが相対的に高くなるだろう。これは、円高懸念だといえる。
日米の中央銀行の行動についてみると、米国は予防的な観点から金融緩和を行った。日本は現状では待ちの姿勢であり、黒田総裁らのリップサービスはあるが金融緩和を実行していない。
需給ギャップと予想インフレ率からみれば、日銀は行動してもいいはずなのに動かない。一方、トランプ大統領はさらなる金融緩和の掛け声をかけている。こうした日米の金融政策をめぐるスタンスの差も、円高懸念につながる。
日銀もさすがに白川総裁当時のように無策でひどい円高になることはないと期待しているが、最近の黒田日銀の動きをみていると心許ない。黒田総裁は、財務省主税畑の出身なので、消費増税論者であることはよく知られている。2014年4月の消費増税も強く勧め、財務省の別動隊とも揶揄されていた。
今年10月からの消費増税に、黒田日銀は金融緩和で応えるとの見方もあった。ところが、最近やや風向きが怪しい。米中貿易戦争、英国の欧州連合(EU離脱や中東情勢など世界経済での懸念事項が多く、景気悪化の原因は消費増税ではなく世界経済だということになるかもしれない。となると、景気が悪くなるまで金融緩和を出し渋るかもしれない。その場合、かなりの円高が進む可能性がある。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一