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「中国撤退」はもはや時代の流れ

Wedge
米カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)の経済学者、兪偉雄氏は台湾系中国語メディア「大紀元」の取材に対し、米中貿易戦争の激化・長期化で中国当局が直面する最も深刻な課題は、各国企業の中国撤退が加速化することだと指摘した。
「過去30~40年間、世界の工場とされた中国には、世界各国企業の製造拠点が集中した。米中の戦いの激化によって、このサプライチェーンが崩壊の危機にある」
サプライチェーンの移動について、兪氏は「現在中国で生産されている製品のほとんどは輸出向けだ。米国の関税引き上げで、中国に進出する製造企業の競争優位性が低下し、台湾企業や韓国企業、日本企業、米国企業が今後それぞれ自国、または東南アジア諸国に生産移管するのは、大きな流れになってくるだろう」と分析する。
中国市場を対象にしていない製造業は、一刻も早く中国から撤退しないと、新たなサプライチェーンの構築や競争に乗り遅れるわけだから、必死だ。産業の中核は何といっても、このサプライチェーンである。
サプライチェーンが中国から転出した場合、中国経済は弱化する。輸出型の加工製造業を中心に運営してきた中国は新たな成長源を見つけない限り、大問題となる。大量の外資撤退だけではない。輸出系の中国企業も海外への脱出に乗り出す。相次ぐ企業の撤退や脱出に伴い、産業空洞化が進み、失業も急増する。この辺、中国ではすでに異変が起きつつある。
中国人民大学が4月に発表した「中国就職市場景気報告」によると、1~3月期の就職市場景気指数(CIER指数)は5年ぶりの低水準となった。同期の中国の求職申請者数は前期比31.05%増で、一方、企業側の求人数は同7.62%減少。CIER指数は1.68ポイントまで下がり、2014年以来の低水準となった。
同期の中国民間企業の求人数は前期比で13.05%減少。求職申請者数は同52.94%増で、CIER指数は0.8ポイントとなった。前期の1.41ポイントから大幅に落ち込んだ。同期の国有企業のCIER指数は、求職申請者数が大幅に増えたことで、0.43ポイントに低迷。「1つのポストに対して、求職者2人が競い合っている」状態であるという。
中国では今年、過去最大となる約834万人が大学を卒業する見通し。米中貿易戦争の激化に伴い、外資企業の撤退だけでなく、中国系製造業もアジアへの移転に動き出している。リストラの急増とともに、新卒の需要が大幅減少している。中国にとっては経済よりも失業問題が最大の危機となるだろう。
ワーカーよりも、ホワイトカラーの失業問題がより深刻な結果をもたらす。失業すれば、住宅ローンが払えなくなるからだ。中国の不動産バブルの崩壊は、おそらく時間の問題だろう。
立花 聡 (エリス・コンサルティング代表・法学博士)

NEWS ポストセブン
トランプ米大統領は今後、米国向けに輸出する中国製品すべてに対して、ほぼ25%の関税を上乗せ、一方の中国も米国製品に対して同様の措置をとることを発表するなど米中貿易戦争は激化の一途をたどっている。そんな中、在北京および在上海の米国商工会議所のアンケートに対して、中国に進出している米国企業の約75%が「米中貿易戦争の影響を強く受けている」と答えた。
このほか、40%が「生産拠点や営業拠点を中国以外の国・地域に移転することを検討している」と回答していることが分かった。米政府系報道機関「ボイス・オブ・アメリカVOA)」が報じた。
このアンケートは在北京および在上海の米国商工会議所が共同で5月中旬、米企業250社を対象にして行ったもので、その結果を5月22日に発表した。
それによると、3分の1の米国企業が当初予定の中国での投資の拡大予定を取り止めたり、遅らせているという。また、3分の1の企業が今後は中国内で生産した製品について、輸出ではなく、中国内での販売拡大を重視する方針に転換すると答えている。
また、今回のアンケート調査では、米中関係が緊張するにつれて、20%の企業が中国政府機関からの製品の検査が多くなっていると答えているほか、15%の企業が中国政府機関から製品の輸出や販売についての許可に要する時間が長くなっていると回答している。また、検査の方法も複雑になっているのに加えて、中国側が意図的に検査を遅らせていると感じているという。
今回のアンケート調査では「生産拠点や営業拠点を中国以外の国・地域に移転することを検討している」は40%だったが、今年2月の調査では全体の20%だったので、倍に激増していることになる。かくしての貿易戦争激化で中国に進出している米企業が大きな影響を被っている実態が明らかになった。
また、「米中貿易戦争の影響を強く受けているかどうか」との質問について、昨年9月の調査では「強く受けている」が6割以上だったのに対して、今回の調査では75%となっており、影響がより深刻化していることが分かる。
今回の調査を受けた250社の業種別は、62%が製造業、25%がサービス業、4%が小売業、9%がその他となっている。このうち、米国の代表的な自動車製造・販売のフォード・モーターは中国工場の従業員の約1割に当たる2000人の人員削減に踏み切ったほか、全世界に点在するホワイトカラー従業員の約1割に相当する7000人を削減すると発表している。