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円高にブレーキ?

為替フォーラム
ロイターコラム:円高にブレーキをかける日本経済の構造変化=佐々木融氏

佐々木融 JPモルガン・チェース銀行 市場調査本部長

日本が巨額の貿易黒字国だった時代は過去のものになりつつある。1980年代後半から90年代にかけて日本は年平均11兆円の黒字を計上。2000年代に入るとやや減少したが、それでも2007年までの平均黒字額は9兆6000億円だった。
しかし、2008年以降は一度も10兆円を超える貿易黒字を計上していない。2011年には31年ぶりの赤字に転じ、2014年に赤字幅は12兆8000億円まで拡大した。その後いったんは黒字を回復したものの、その規模は5兆円にも届かず、財務省が23日発表した2018年の貿易収支は1兆2033億円の赤字と、再びマイナスに転落した。
貿易収支の構造変化は円相場に影響する。当時と今とで何が変わったのかを検証するため、日本が10兆円規模の黒字を維持していた最後の4年間(2004─2007年)と、直近4年間(2015─2018年)の年間平均額を比較してみると、前者は9兆8000億円の黒字、後者は7000億円の黒字だった。
この期間に貿易収支が年平均9兆1000億円も悪化した背景には、輸入の増加がある。輸出額は年平均71兆5000億円から同76兆4000億円へと6.8%の伸びにとどまっているが、輸入額は同61兆7000億円から同75兆6000億円へ22.7%も増えている。
貿易相手国別の収支も、対中東を除いて全体的に悪化している。アジア全体に対する貿易黒字は、輸入増加を主因として年平均7兆3000億円から同4兆3000億兆円に減少。うち1兆8000億円分が対中国の赤字額増加、1兆1000億円分が対台湾の黒字額減少となっている。
特に注目されるのは、対欧州連合(EU)の貿易収支が同3兆8000億円の黒字から同3000億円の赤字へ、4兆1000億円も悪化したことだ。今回検証した全体の貿易収支悪化額の45%を占める。内訳は2兆1000億円が対EU貿易における輸出減少、2兆円が輸入増加だった。
こうした構造的な変化をみると、日本が近い将来、再び10兆円台の貿易黒字を計上することはなさそうだ。日本企業の多くが生産拠点を海外に移し、対外直接投資に積極的な現状を考えると、むしろ赤字が常態化していく可能性のほうが高い。
一方、貿易収支を含む経常収支は過去最高に近い黒字水準を維持している。これは貿易黒字に代わり、過去に行った投資のリターンである所得収支の黒字が増加しているためである。
1980年代後半から1990年代までは、貿易黒字が経常黒字を上回る状態が続いていた。日本の経常黒字はすべて貿易黒字で構成されていたということだ。それが2000年代に入ると貿易黒字が頭打ちになる一方、所得収支の黒字が増え始め、2008年以降は経常黒字の中で圧倒的な存在感を示すようになった。
経常収支の変化は、円相場の動きを見る上で重要だ。単純化して言えば、貿易黒字は日本のメーカーが国内で作った製品を海外に輸出して得た代金である。コストの大部分は円建てと考えられ、貿易黒字の大部分は速やかに円資金に換える必要があると推測できる。一方、所得収支は過去の投資に対する対価であるため、すぐに円に換えずに再投資をする部分も多いと考えられる。
つまり、経常黒字が20兆円近い水準であっても、その大部分を所得収支の黒字が占める現状は、実需による経常的な円買いフローが多いとは言えない状況にある。
投資家のセンチメントが悪化し、短期的に円が上昇した時でも、加速度的に円高が進まなくなった背景には、こうした構造的な変化があると考えられる。


なるほど、貿易収支からの考察は上記の通りでしょう。
ただ、それだけで 円高が進まなくなったと語るには早計です。
貿易収支で為替レートが決まるなら、米ドルの価値なんて無くなってしまう。経常収支にしてもそう(苦笑)
そもそも、インフレ格差抜きで為替レートを語るのはおかしなもの。ましてやドル/円のレートは、経常収支より財政収支でレートが変動していることをわかっていません。少しは名の知れた人なんでしょうから、「木を観て、森を観ず」的な相場論は控えた方かいいと思いますがね。
「投資家のセンチメントが悪化し、短期的に円が上昇した時でも、加速度的に円高が進まなくなった」とありますが、 センチメントの悪化なんて今まで無いに等しいもんです。アップルの業績下方修正、中国経済の減速、米中覇権争いなど、まだ序の口に過ぎません。


さて、ドル/円。
109円を割れるかどうか。

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