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日本には円高を和らげる術が事実上残されていない

野口悠紀雄早稲田大学ビジネス・ファイナンス研究センター顧問
日本銀行による異次元緩和策で金利抑制が続けられているため、市場機能が働かず、金利の本当の水準が分からなくなっている。金利抑制策をやめると、金利が暴騰する危険がある。このために、日銀は金融緩和策から脱却できないのだ。」

なんてことが、世間一般で言われる。お偉い先生でも、そのようなことを言うものです。
しかし、前の記事で紹介した機関投資家と呼ばれる一つの富国生命の例で、「グローバルな景気の方向性に不透明感がある中で、円債に戻れるならいつでも戻りたい。市場にある程度委ねてくれるなら当然我々は戻るし、いつでも戻る準備がある。日銀がもう少しイールドカーブを立たせるような政策を取っても、コントロールできないところまで金利が上がるかというと、そこはわれわれがちゃんと買うので問題はない」と述べているように、機関投資家金利のついた円債に飢えています。
日銀が恐れていることは、金利の暴騰じゃなくて、日本円の急騰でしょうね。異次元金融緩和政策から「異次元」の行為を改めた金融緩和に戻るだけで、かなりの円高に振れるでしょう。例えるなら、ECBが量的緩和を縮小し、年内で終了する方針を示したことだけで、ユ-ロは投機的な買いが膨らだケ-スと同じです。
そして、焦点は、世界経済が崩れ出すのが先か、日銀が保有する大量の国債を手放して国債の買い余力を広げておくのが先かで、今後の円相場は大きく左右されるのかも知れません。
世界経済が崩れ出すのが先だった場合、急激な円高圧力に対して、日本は実質的にノーガードの状態になってしまい、投機的な円買いの成すがままになってしまいます。

PRESIDENT Online
三菱UFJリサーチ&コンサルティング 調査部
残念ながら、金融危機はいつか来るものである。金融市場のグローバル化が進んだ1980年代以降、世界経済はおおむね10年おきに金融危機を経験してきた。ブラックマンデー(87年)、アジア通貨危機(97~98年)、リーマンショック(08年)である。
今年は2018年であるから、近年の経験則から言えば、そろそろ世界的な金融危機が生じてもおかしくはない。筆者を含めたエコノミストやアナリストの多くが、楽観と悲観の立場を問わず、心のどこかにこうした警戒感を持っていると言えよう。
1980年代以降の世界的な金融危機の背景には、必ずと言っていいほど米国の利上げがあった。つまり米国が景気回復を受けて利上げに転じたことがトリガーになって、その数年後に世界的な金融危機が生じたのである。
なぜ米国が利上げに転じると世界的な金融危機が生じるのか。米国が利下げを行うと、金融市場に大量のマネーが供給されることになる。ダブついたマネーは米国のみならず、世界各国の金融市場へと向かう。当然、世界各国の相場は上昇する。
その後、米国景気が回復し、利上げに転じれば、ダブついたマネーが米国に回帰することになる。そうなれば上昇が続いた世界各国の相場は下落することになる。この流れが何らかのショックを受けて一気に加速したとき、世界的な金融危機が生じる。かなり単純化しているが、基本的にはこうしたロジックで、近年の世界的な金融危機は発生した。
そして近年は、通貨危機金融危機に転じやすくなった。通貨売買が容易になったことで、各国とも外国からマネーを調達しやすくなった。そのため、通貨危機下でマネーが流出すると経済全体の資金繰りが悪化し、金融危機が生じるのである。もちろん、金融危機もまた世界的に伝染しやすくなっている。
通貨危機は世界的に伝染する性質を持つ。そしてそれが世界的な金融危機につながるリスクも大きい。新興国を中心に世界的な通貨危機が生じ、金融危機に転じれば、投資家は低リスク資産である日本円を買うことになる。1ドル100円割れは当然であり、再び90円や80円を目指す展開になるだろう。
問題は、日本に円高を和らげる術が事実上残されていないことだ。強烈な円高が生じた時、それを和らげる手段は大きく2つある。1つが為替介入であり、もう1つが金融緩和だ。うち為替介入は、日本だけが行う単独介入ではあまり効果がない。米国や欧州の中銀と協力して行う協調介入でさえ、急速な下げ相場だと効果は限定的だ。
では金融緩和はどうかというと、日銀に残された弾はほとんどない。金利は下げようがないし、買い入れる国債も残っていない。つまり金融緩和を強化したくても、それを強化する術を今の日銀は持っていないのである。日本は急激な円高圧力に対して、実質的にはノーガードの状態にある。
そもそも欧米の金融機関の多くは、日本円は主要通貨の中で割安であると評価しており、当面は円高気味に推移すると予想している。そうした基本的な流れがある中で世界的な通貨危機が生じれば、円高は一気に加速する。世界では通貨危機金融危機、ひいては急激な円高の足音が強まっていることに留意したい。