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英国GDP速報値は、確報値で下方修正されると予想

今まで米国経済のリセッション入り予想を数々とりあげてきたが、それよりも早い時期にリセッション入りすると思われるのが英国経済でしょう。(日本経済も同様ですが)
英政府統計局(ONS)は4月27日、第1四半期(1~3月)の国内総生産(GDP、速報値)が前期比0.1%増加、前年同期比では1.2%増加と発表した。
これはあくまで速報値であり、3月度の経済デ-タは予測値で試算されたデ-タに基づく。私fxdondon的には、3月度の確定デ-タが反映された確報値は、速報値が下方修正(▼0.1%~▼0.2%)されるものと観ている。
速報値を産業別四半期別に見ると、英経済の原動力であるサービス業は0.3%拡大し、伸びは前期から0.1ポイント減速した。うちビジネスサービス・金融と自動車販売を含む運輸・倉庫・通信は共に0.4%伸び、流通・ホテル・レストランは0.1%減少した。
このあたりは、デ-タが膨大過ぎてなかなかデ-タ分析ができない。英金融大手ロイヤル・バンク・オブ・スコットランド(RBS)が、イングランドウエールズで162支店を閉鎖すると発表したというニュ-スはあるが、金融全体では大きな問題ではないのでしょうか。
低調な小売販売、観光客減、観光収入減などホテルの部屋利用低下、個人消費の落ち込みがもちろん低成長の要因。このあたりにも、下方修正が入る可能性がありそうか。

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テロの標的とされやすいロンドンを含め、英国への観光客、観光収入は減り続けている。

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これらを受けて、サ-ビス業PMIは悪化。

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2016年6月の欧州連合(EU)からの離脱を決めた国民投票以降の通貨ポンド安を受けた輸入物価の押し上げ、消費者物価の値上がりが響いている。

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そして、製造業GDPが0.2%増加していることが疑問である。
自動車製造取引業者協会(SMMT)は、3月の英国の乗用車生産台数が14万7,471台となり、前年同月比13.3%減少したと発表した。国内向けと輸出向けが共に2桁減と不振、全体の8割弱を占める輸出向けは11.9%減の11万4,675台。国内向けは3万2,796台と大きく17.7%減となっていた。
また、日産自動車は、英イングランド北東部のサンダーランド工場で数百人を整理する。ディーゼル車の需要縮小と、新モデルの生産開始に向けた準備の一環で、一時的に生産量を落としたことが理由。
4月の英国の製造業PMI(購買担当者景気指数)は53.9ポイントとなり、4月は過去17カ月で最低だった。これは4月のことだが、それは前月3月からの流れを汲んだものと観ることができる。

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英国の雇用状況は好調です。しかし、企業の雇用は遅行性を有していますので、おそらくこれから悪化していくでしょう。

私fxdondon的には、英国政府、民間を含め、英国のEU離脱を軽く観過ぎていると思っています。
英国が2019年3月末のEU離脱以降も、20年末まで激変を避ける「移行期間」が設けられている。しかし、双方が19年3月末までに離脱協定を批准できず、無秩序に関税が復活するリスクは消えていない。

ギリシャ、スペイン、ポルトガル、イタリアのように危機に瀕している諸国は追加的な資金注入を常に求めている。これらの諸国に英国からも多くの資金が消えていった。その資金は英国のEU離脱が完了すると元に戻されることになる。この目先の損得勘定で短絡的判断した英国民は、おそらく後悔することになる。

日本に政策研究大学院大学(GRIPS)という公共政策の先進的な研究、高度な知識を持った行政官の育成を目的に1997年に設立された独立大学院大学がある。そこのお偉い先生が、英国欧州連合離脱: 企業退出と財の多様性の喪失を研究しました。
内容はかなり高度で専門的なもので、私fxdondonには理解できないような内容も含まれています(苦笑)。
そのため、ここでは、結論だけご紹介します。

英国欧州連合離脱 :  企業退出と財の多様性の喪失
政策研究大学院大学
細江宣裕 氏

本研究では、英国の EU 離脱の影響を、企業の異質性を考慮した最新の CGE モデルを用いて分析した。そこでは、企業の異質性があるために、企業の退出による生産性の変化と財の多様性を失わせる効果を持つ。ここで考えた EU 離脱シナリオが考慮する範囲は、英国と EU27 カ国との間の貿易障壁に関わる要因のみに限られていた。この意味で、離脱の影響に関する推定値は一種の(もっとも楽観的な)下限値を示していると考えるべきであろう。輸出固定費の増加幅に関する仮定に依存するとはいえ、英国の EU 離脱は、期待される英国の財政負担の廃止額にも匹敵する、大きな経済的損失を生む可能性があることがわかった。もちろん、こうした推定値は、企業の異質性を考慮しない従来型のモデルで
は明らかにできないものである。
EU離脱シナリオについて、ここで考えた以外のシナリオ要素を追加すれば、当然、予想される離脱の負の効果は大きく推定されるであろう。いくらかの経済的な損失があったとしても、それでもなお、英国の自主独立、ブリュッセルEU 政府から受ける規制と官僚主義からの解放という政治的な価値のためには正当な費用であると、英国有権者は考えるかもしれない。

さぁ、英国経済がこの先どうなっていくか、注目されます。悪い方向に進むことはあっても、短期的には良い方向に進むことはない、そう確信しています。

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