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「人民元建て原油先物」取引開始

中国が仕掛けた「オイル元」爆弾 米ドル覇権への挑戦状

2018年3月26日、世界初の「人民元建て原油先物」取引が上海で正式にスタートした。
初日に2100万バレルを超える石油の取引が成立。その価値は183億元(29億ドル)と大きな数字ではないが、中米が話し合いのテーブルに戻った際には、中国側の交渉カードとなる。
だが、今回の戦略的意味はそれより遥かに勝る。長期的に見て、これは人民元が米ドルの世界的な覇権を崩壊させる鍵を握る駒になるかもしれないからだ。それは「オイルダラー」に取って代わる「オイル元」という戦略だ。
第2次世界大戦後の国際通貨システムであるブレトン・ウッズ体制の崩壊後、米ドルの覇権の根本は石油によって打ち立てられていた。
1974年10月、国務長官ヘンリー・キッシンジャーサウジアラビア王子と話し合い、最終的に世界経済と米国にとって極めて重要な協議を結んだ。協議では、米軍はサウジアラビアに軍事保護と先進的な武器装備を提供することを約束したが、それには二つの前提があった。一つ目は、サウジアラビアは必ず米ドルを石油交易の唯一の定価と決済の通貨にすること、二つ目は、サウジアラビアは石油の余剰収益を米国の国債に投資することだ。
そして一部の「オイルダラー」は米国へ流れ、財政赤字を補填し、経常収支の輸入超過と資本収支の輸出超過のバランスを取り、米国経済を安定させた。サウジアラビアという産油大国の地位を借りて、1975年までほぼ全てのOPEC加入国はサウジアラビアのやり方の真似をし、石油と米ドルをリンクさせた。巨額の石油貿易は安定した資本流動のクローズドループを支え、国際金融における米ドルの覇権はもはや揺るぎないものになった。石油は黄金の代わりとなって、米ドルが世界通貨の道をますます安定して走る信用書となった。
中国は今回の人民元建て取引について、「上海石油先物取引のねらいは世界で影響力のある石油定価の中心になることだ」と公言している。なぜなら、中国は石油について、すでに極端に輸入に依存しているからだ。米国エネルギー省エネルギー情報局(EIA)は2018年1月31日、「中国の2017年の1日当たりの原油輸入量が840万バレルで、初めて米国の790万バレルを超え、世界最大の原油輸入国になった」と発表した。
石油は工業の血液であり、「世界の工場」である中国にとって、原油価格が一夜にして3%も上がる不安定さに耐えなければならないうえ、米ドルで支払うことを余儀なくされているため、為替相場のリスクも更に原油価格の波を激しいものにしている。
中国のさらなる望みは、中国及びアジア太平洋市場の需給関係を反映した原油定価基準をつくり、原油価格の決定権をつかみ取ることだ。さらに、この体系の最も重要な柱は「人民元建て」であるということだ。
現在、事実上、「オイル元計画」に参加し、人民元決済に同意している主要な産油国はロシア、ベネズエラ、イランなどで、これらはみな米国と緊張関係にある国だ。
だが、現状でオイルダラー時代が終結すると言うのは時期尚早である。「オイル元」そのものにも、まだ解決すべき問題が少なくない。
オイル元を中国に還流させたいのであれば、相応の投資可能の人民元資産がなければならない。2017年、中国は香港に交易口座を開設している世界の投資家が中国銀行の債券市場に参入する利便性を高めるよう促している。ブルームバーグは先ごろ、2019年に中国債券をブルームバーグ・バークレイズ国際総合インデックス(Bloomberg Barclays Global Aggregate Index)に組み込むと述べた。
だが、国際投資家は人民元に対してまだ疑念を抱いている。中国資本市場はさらなる開放が待たれるし、金融監督管理も一定のリスクをもたらすであろう。また、人民元為替相場もまだ市場を完全に開放しておらず、国際通貨としての交換性と自由な流通性も備わっていない。
「オイル元」が実現できるかどうかのより重要な一環は、やはり「オイルダラー」の創始者の一つであるサウジアラビアによるものだ。2017年10月、中国資本がサウジアラビアの石油資本サウジアラムコに5%の株式を購入することを提案した。サウジアラビアは現在転換期にあり、中国からの資金を必要としているので、この交易が結ばれる可能性は相当高い。そして中国がサウジアラムコの株を購入することは、中国が巨大な原油供給源をコントロールし、サウジアラビアの石油の定価決定権が米ドルだけに依存してきた状態から、米ドルに加えて人民元にも依存するように転換するのに役立つことを意味している。
(在北京ジャーナリスト 陳言)

中国が仕掛けた「オイル元」爆弾 米ドル覇権への挑戦状
https://www.j-cast.com/2018/04/08325589.html?p=all

まぁ、fxdondon的推測では、中国の外貨ドル獲得能力が減少していく中、人民元で石油が買える世の中にしたい狙いがあるのでしょう。まぁ、無駄なこと。反米国の仲間が集まっただけみたいですね。「米ドル覇権への挑戦状」とか大げさなタイトルには、いささか呆れてしまいます(笑)
しかし、この件とは別にしても、サウジアラビアの動向には、これからも注意が必要です。2018年のサプライズは「サウジアラビア」だった、という可能性もゼロではありません。


サウジと米国の特別な関係の基礎にあった「石油安定供給と安全保障の交換」を変質してきた。石油市場が注目するのはシェールオイルに対抗して協調減産を実現したサウジとロシアの関係。「石油同盟」(「エコノミスト」)ともいわれるが、地政学上の力関係の変化が「シェール革命」といわれるゆえんだ。
サウジと米国の利害関係は複雑で交錯している。対イランなど地域の安全保障についてサウジは依然として米国に依存せざるを得ない。反面、石油市場ではシェール革命によって米国とは完全にライバル関係で、むしろ、ロシアとの協調が重要になる。イスラエルも加えると状況はいっそう複雑化する。それでも石油をめぐって敵と味方が変わる複雑さは今に始まったことではない。昔から常にあり、「本音」 (win-lose) と「建前」 (win-win)  を使い分けてきた。しかし、トランプ政権では政策間の整合性が調整されない。それだけにサウジと米国、そしてロシアの関係はいっそう複雑化する。