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fxdondon presents 世界の政治・経済・財政を考察し、外国為替相場を読み解きましょう

「合意なき離脱」でポンド無差別売り、ポンド/ドルは1.10へ?

ロイター
バンク・オブ・ニューヨーク・メロン(BNYメロン)のストラテジストは、英国が条件などで合意できないままEUを離脱する事態になれば、英ポンドは1.10ドルまで急落する可能性があるとの見方を示した。
BNYメロンの首席外為ストラテジスト、シモン・デリック氏は、暫定合意した離脱協定案が議会で承認されず、12月もしくは来年1月に条件などで合意できないまま離脱することが確実になれば、ポンドは激しい売りにさらされる。「ポンド相場は動く時は実に動く」とし、動きは「急激」なものになる可能性があると述べた。
●三菱UFJモルガン・スタンレー証券 チーフ為替ストラテジスト 植野大作
英国のEU離脱協議も難航しているが、双方が強烈な経済的打撃を受ける合意なき無秩序な離脱は誰の利益にもならない。最悪の事態は恐らく回避され、協議の時間が足りない場合も、交渉するために必要な善後策が採用される可能性が高い。
もちろん、来年3月末に「無秩序な離脱シナリオ」が炸裂する可能性はゼロではない。ただ、仮にそうなった当初は、ポンドとユーロがドルや円に対して無差別に売られそうだ。


今現在のこのような推測、予想は、第2次ブレグジットショックに当たります。私fxdondonが想定する「ブレグジットショック」は、現在のところ3部構成のシナリオです。
序章にあたる第1次ブレグジットは、もちろん国民投票でまさかのEU離脱が決定した2016年。この時は、残された時間でEU離脱後も秩序ある英国社会が形成されるという期待や楽観もあり、2017年以降は騒動も沈静化しました。
そして、第2次ブレグジットショックが今現在です。期待や楽観は吹き飛ばされ、EUとの合意なき離脱という事実が確定される時期です。
最終章である第3次ブレグジットショックは、英国の政治・経済・財政すべてにおいて窮地に追い込まれるという悲観的シナリオそのものです。想定する第3次ブレグジットショックは、第2次ブレグジットショックが確定されてからのシナリオですので、ここでは簡単に書いてみます。
●欧州本土(原材料・部品) → 英国(生産・製品) → 欧州本土(最終消費地)というようなビジネスモデルがあった場合、早かれ遅かれ英国での工程は省かれ、本州本土(EU諸国)内に集約される。
●英国(原材料・部品) → 欧州本土(生産・製品・最終消費地)というようなビジネスモデルは、より一層困難で、コストの安いEU加盟東欧諸国に太刀打ちできません。英国の高い人件費に新たに関税が付加されるのですから、この取引は消滅です。
●英国の製造業はEU離脱でさらに弱くなることは避けられない。それは、貿易収支で赤字の拡大を招く結果につながります。英国は現在でも継続的な貿易赤字ですが、EU離脱後はさらに赤字が拡大すると観ており、経常収支全体で赤字拡大になると観ています。
●EU離脱により、ポンド建て貿易取引は皆無になる。EUとの貿易では力関係もあり、ユ-ロ建て取引に代わる。通貨ポンドの需要は世界的に縮小し、IMFの通貨バスケットでのポンド組み入れ比率低下や外貨準備としてのポンド建て資産は縮小される。国際的に、通貨ポンドは重要性は薄れる。
●英国の金融サ-ビス部門では、いろいろ報道されている通り、金融機能がロンドン離れを加速。
●英中銀総裁のカ-ニ-さんも述べる通り、不動産、株価、国債等を含めて資産価値は大きく下落する。もちろん、ポンドも下落。ソブリン格付けも、みるみるうちに格下げラッシュへ。

今現在、ポンド/ドルが第2次ブレグジットショックで1.10まで急落する可能性があるとの予想ですが、第3次ブレグジットショックが現実的となれば1.0割れ、つまり米ドルよりポンドの価値は低くなるというのが、今現在の個人的推測です。まぁ、このあたりはもっと先になってみないとよくわかりません。また、ニ-マルショックの展開にもよりますし。

では、第1次ブレグジットショックのポンド急落時の状況を、日本経済新聞の記事より振り返ってみましょう。

日本経済新聞
2016/10/7 11:53
英ポンドが7日早朝の東京外国為替市場で急落した。ドルに対しては1985年以来31年ぶりの安値を更新。わずか数分の間に大きく下げ幅を広げる局面もあった。独仏など欧州連合EU)側、英国の政府首脳が互いにけん制する強気の発言が市場を駆け巡ったことが引き金だ。経済的な打撃をいとわずにEU離脱に突き進む「ハード・ブレグジット(強硬離脱)」が現実味を帯びるにつれ、ポンドの動揺が大きくなった。
「何があったんだ」、「こっちも急いで売れ」、「いや買いだ」――。証券会社や銀行などの為替ディーラーたちは、英国時間では深夜に当たる東京市場早朝での突然の英ポンドの急落の対応に追われた。
異変は7日の午前8時5分すぎに起きた。1ポンド=1.26ドル前後で推移していたポンドは、そのわずか2分後の8時7分に節目となる1.20ドルを割り込み、さらに2分後には1.18ドルまで急落。わずか5分足らず間にポンドの下げ幅は6%に上った。
対ドル相場の下落が余りに急激だったことから、その影響は円やユーロなどほかの通貨にも及んだ。ポンドは対円でも数分で10円近く下がった。
プロのディーラーも予想していなかったタイミングでのポンドの急落。あまりに急激な値動きは、一部に「誤発注が原因だったのではないか」との声も出ていたが、さらなる下落に向かう伏線はあった。
英国の保守党大会で今週、メイ首相が示した離脱方針である。「2017年3月末までにEU離脱を通告する」と宣言。市場は、非公式な会合を通じてEU側と地ならしする柔軟なスタンスと一線を画したと見て、メイ首相の発言を強硬姿勢で離脱交渉に臨む「ハード・ブレグジット」の意思表示と受け止めた。
「断固とした姿勢を取らなければEUの原理原則を危機にさらすことになる」。オランド仏大統領は6日、パリでのユンケル欧州委員長との会談で、強硬姿勢を改めて示した。
オランド大統領は、英国の主張を認めれば、「他国も英国に続き、義務を逃れつつ、利益は得ようとEU離脱を望むかもしれない。組織を守るためには、英国と厳しい交渉が必要だ」と促したという。
経済的な便益は欲しいが、難民は受け入れたくない――。そんな英国の身勝手な態度は絶対に認めない、と言わんばかり。英国とEU諸国との間に漂う空気は不穏そのものになっている。
オランドと並んで影響力が大きなメルケル独首相も6日、呼応するかのような発言を口にしている。「移民を含めた、すべての自由を尊重せずに、今まで通り、EU市場へのアクセスを求めるような圧力には屈してはならない」。
メルケル氏の発言について、欧米メディアは「いいとこどりはさせないという、けん制」などと報道。今後の離脱交渉が英国にとって厳しくなると解説した。
英国は来年3月までにEU離脱を通告し、離脱交渉がスタートする。交渉期間は2年間。その間、政治の空気を読むのにたけた投機筋が、今朝のようなポンド売りを仕掛ける場面を何度も目撃するのかもしれない。(浜美佐、岸本まりみ)