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関税が与える貿易への打撃

バロンズ誌
アップ・アンド・ダウン・ウォールストリート

関税が与える貿易への打撃ーTariffs’ Toll on Trade.

米株相場を圧迫したのは、貿易戦争激化への懸念に他ならない。トランプ大統領は18日夜、既に中国輸入品500億ドル相当に25%の関税を課す案を発表していたにも関わらず、追加で2,000億ドル相当の中国輸入品10%の関税を課すと警告。おまけに、トランプ大統領は22日にツイッターで欧州からの輸入車に20%の関税を賦課すると表明した。
経済的な影響も見逃せない。ナンシー・ラザー氏率いるコーナーストーン・マクロによれば、中国輸入品500億ドルに対する25%の関税額は125億ドルだが、二次的な影響として米経済に0.1%の増税効果を与え、中国輸入品2,000億ドルに10%の関税を賦課する場合は米経済に0.2%の増税効果を及ぼすという。つまり、経済への影響は限定的とはいえ「税制改革での景気押し上げ効果を抑制する」わけだ。さらに「二次的効果は企業の信頼感を損ねる他、ドル高という向かい風をもたらし、サプライチェーンの混乱を引き起こし、部品を輸入に頼る米国輸出企業の競争力を喪失させる」。
トランプ大統領は中国の対米貿易額が米国の対中貿易額を上回る現状を捉え、対中貿易戦争での勝利は容易との見解を示す。しかし、世界第1位と第2位の経済大国の貿易戦争は、不確実性と成長押し下げ効果をもたらしかねない。またコーナーストーン・マクロの分析では、2014年の中国輸入品のうち3分の2は中国製品だが、その他の3分の1は台湾やマレーシアなど他エマージング国が生産した中国を経由した部品だ。
貿易の裏には資本フローがある。トランプ政権は6月30日までに中国企業に対する投資規制を発表する予定だ。政治情報サイトのポリティコは、テクノロジー企業など「中国製造2025」と安全保障に関わる米企業1,000社への投資制限を設ける見通しだ。
貿易と資本フローでの論争はいずれ解決するのだろうが、その間に不確実性をもたらす。
Fedと言えば、保有資産の圧縮を継続させており7月からの圧縮額をこれまでの900億ドルから1,200億ドルへ引き上げる。
Fed保有する米国債など証券残高は、2017年9月28日(保有資産の圧縮開始直前)時点から6月20日までに1,280億ドル減少し4.112兆ドルとなった。保有資産の負債サイドをみると、発行銀行券が815億ドル増加し、リバース・レポが2,113億ドル増加しており米財務省によるFedの預け入れ2,192億ドル増加した分をほぼ相殺している。準備預金は2,267億ドル減少、保有資産の圧縮額を約1,000億ドル上回った。
パウエルFRB議長は「金融の不均衡」について「一部の資産価格は過去の水準と比較して高い半面、広範にわたる過剰な借入あるいはレバレッジの兆候はみられていない。また、銀行の資本は金融危機以前と比較しかなり高水準にある」と述べ、6月FOMC後の記者会見の発言内容を繰り返した。グリーンスパンFRB議長による「根拠なき熱狂」といった表現を避けた格好だ。とはいえ、過去2回の景気後退に合わせ金融危機が発生したと指摘することも忘れていない。Fedによる金融政策正常化の継続は、起こりうるバブル崩壊の阻止につながるか注目されよう。


これまでFedは、民間銀行の準備預金の水準についての議論は避けてきました。しかし金融システムの流動性確保のため、民間金融機関の準備預金が1.5兆ドル近くへ減少した段階で、Fed保有資産圧縮の再考を余儀なくされかねません。米財務省国債増発を続けるなかでは、米金利に上方圧力が加えられ続けるため、尚更でしょう。