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南アフリカ・ランド 11月1日に急落か?

ロイター
投資家が売りの標的とする新興国通貨の一番手に、トルコリラやアルゼンチンペソを差し置いて、南アフリカランドが躍り出てきた。
南アは2013年以降、新興国の「フラジャイル・ファイブ(脆弱な5カ国)」の1つに数えられ、成長を押し上げるための国営電力会社エスコムの立て直しを含めた諸改革の実行に苦戦し続けている。
しかし足元で特に危険度が増したようだ。
失業率は27%と15年来で最悪の水準となり、第1・四半期の成長率はマイナス3.2%と四半期ベースで10年ぶりの大幅な落ち込みを記録した。さらに一部の政治家が準備銀行(中央銀行)の使命の修正を試みたり、最大の貿易相手である中国が米国との貿易摩擦を激化させるといった逆風も吹く。
バンク・オブ・アメリカメリルリンチのストラテジスト、デービッド・ホーナー氏は「最近、南アには悪いニュースが束になって押し寄せている」と述べ、ランドは新興国通貨で最も売り持ちにされているとみている。
ランドの売り持ち活発化は、主に中国人民元に代替する流動的な通貨として取引されていることが原因だ。ホーナー氏は「中国が南アにとって一番大きな貿易相手国である以上、それは大いなる理がある」と指摘。ランドは、南アの地理的な位置からアジア、欧州、米州の各取引時間を網羅している面も影響しているという。
南アは、大手格付け会社の中でただ1社だけ投資適格級を維持しているムーディーズが今後どう動くかという問題も抱える。
オックスフォード・エコノミクスは、債務危機が起きるリスクが大きい主要新興国のランキングで南アをトルコとアルゼンチンよりも上位に置いており、エコノミストのEvghenia Sleptsova氏はその状況が確実に格下げ圧力になるとの見方を示した。
ムーディーズが年内に南アの格付けをジャンク級に下げるか、少なくとも格下げの可能性を警告するとの観測は強まりつつある。ソシエテ・ジェネラル(ソジェン)は、ムーディーズが11月1日に予定している次の格付け見直し時に、こうした事態が起きると予想する。
南アの格付けが完全にジャンク級に転落するという懸念が生じただけでも、市場に重大な影響を及ぼしかねない。
スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)が大手で最後にブラジルの格付けをジャンク級に引き下げた2015年には、レアルの対ドル相場が30%も急落。フィッチが17年にトルコをジャンク級にした際には、リラが25%値下がりした。
全面的なジャンク級への転落は、その国のソブリン債が、大手機関投資家が追随する世界の主要債券指数から除外され、大量の売りを招いて借り入れコストを押し上げる可能性がある。
ソジェンはかつて、FTSE世界債券指数とブルームバーグ・バークレイズ世界アグリゲート債券指数から除外された場合、南アの債券は60億─170億ドル規模で売られると試算した。
南ア国債の85%はランド建てで、それは為替のショックから守られる要素だ。しかし保有比率を目を向けると外国人が約40%を占め、2月以降ランドが20%値下がりし、保有比率が1年前の43%から低下していることから、既に売りが出ているように見える。
アバディーン・スタンダード・インベストメンツの新興国市場ソブリン債責任者エドウィン・ギテレス氏は「私は(南ア債とランドを)アンダーウエートにしている。しばらく前からだ」と語り、利下げの可能性がある点からすると債券市場の環境は壊滅的ではないとはいえ、ランド安とそれを効果的にヘッジできるかどうかが問題だと付け加えた。
以前のロイター調査では、ランドが年内に小幅反発するというのがコンセンサスだったが、第1・四半期の成長率下振れの衝撃で、そうした見通しも修正。ソジェンは、ランドの対ドル相場は足元の14.8ランドから年末までに15.4ランドに下落し、来年半ばには16ランドになると見込んでいる。