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fxdondon presents 世界の政治・経済・財政を考察し、外国為替相場を読み解きましょう

人民元対米ドル相場はどうなるか?

国際通貨基金IMF)は18日、世界の債務負担が過去最大となる164兆ドル(約1京7627兆円)に膨らんだと発表した。各国はリセッション(景気後退)や金融環境引き締めに際し、一段と難しい対応を迫られる可能性がある。
IMFが半年ごとに公表する最新の「財政モニター」報告書によれば、世界の公的・民間債務は2016年、世界の国内総生産(GDP)の225%相当となった。開示可能なデータとしては16年が直近。中国を中心に民間債務が急増しており、世界全体の負債を押し上げている。IMFによると、世界的な金融危機以降における民間債務増大のほぼ4分の3を中国が占めているという。また、IMFは米政府の債務状況が今後5年以内に、主要7カ国(G7)中最貧国のイタリアより悪くなると予測した。
IMFのデータによれば、米債務の対GDP比率は23年までに116.9%に達する見通し。一方、イタリアは116.6%に低下すると予想されている。加重ベースでみれば、米国はモザンビークブルンジより高い債務負担を抱えることになる。
対GDP債務比率が世界で最も高い日本は、6年連続で比率が低下するが、それでも23年に229.6%と最悪国の立場に変わりはないと予測した。(ブルームバーグ


出ました~、日本の債務最悪説。まぁ、バランスシ-トの負債側だけをとりあげているだけなので、前にも書きましたが、「すごい国だね、ニッポンは!」と感心して下さいね。
この記事の中で覚えておくことは、「民間債務増大のほぼ4分の3を中国が占めている」という異常ぶりでしょう。バブル経済の収縮局面では、民間債務の負の清算が必ずつきものですから、特に重要です。
通常、日本や米国、その他資本主義経済では、民間債務の負の清算=銀行等金融機関の負の清算、(官民は分離)になりますが、中国は違います。
中国では民間とは言っても名ばかりで、国有企業、公営企業が多いですから、民間債務の負の清算=政府債務の負の清算、(官民とも)という、国家全体が負の清算を行わなければならないわけですが、ここで重要なことが忘れられがちです。「民間の債務は国家が引き受けます」=「民間の資産も国家が引き受けます」という等式です。だから、よく耳にするのは、中国の富豪が海外へ資産を移したり、移住したりすることです。成功した者は中国から「逃げるが勝ち」、そうなるのは無理もありませんね。
世界の債務負担が過去最大、これを言い換えれば、中国の債務負担が過去最大、となりますね。


では、2018年の人民元対米ドル相場はどうなるか?
福山大学名誉教授 大久保 勲氏の予想から。
結論として、元高ドル安を予想している。バブル経済の崩壊は予想していない。

1.2018年は6.35元から6.80元の間で変動すると予想
2017年1月4日の人民元対米ドル相場基準値(中間値)は、1米ドル=6.9526元となり、人民元は7元台になるとの見方が増えた。結果としては、2017年末の人民元対ドル相場は6.5342元と2016年末比6.16%上昇した。2018年の人民元対米ドル相場はいくらになるか。人民元相場に影響を与える各種の要素から、2018年は、6.35元から6.80元の間で変動すると予想したい。
外部要因としては、2018年の米連邦準備理事会(FRB)は、3回の利上げを見込んでいる。FRBの慎重路線で米長期金利の安定とドル安が継続して来た。米金利上昇とドル高が進めば、人民元対米ドル相場の下げの要因となる。
内部要因としては、金融リスクの問題がある。19回党大会でも中央経済工作会議でも、”システミック金融リスクが発生しないようにボトムラインを守る“、”重大リスクの防止解消、重点は金融リスクの防止解消“が強調された。金融リスク防止解消のために、為替相場も安定的に推移することが求められている。そのために、中国当局は域外への資金流出が起きないように諸施策を講じている。19回党大会報告は、中国経済は既に高速成長段階から質の高い発展段階に転向した、とした。質の高い発展段階では、消費が成長の主要な動力となる。消費依存の経済では、為替相場の安定が望ましい。
人民元の国際化は逆戻りと批判されても、中国当局は当面、資金流動と為替相場を慎重に管理するであろうし、世界景気の回復で、中国の輸出も増えており、内部要因として大きな波乱要因はないとみたい。
2.人民元対米ドル相場の推移 
2005年以来の人民元対米ドル相場基準値(中間値)の推移をまとめると次のようになる。

2005年末 8.0702元 前年末比2.56%上昇(2005年7月21日の人民元対米ドル相場2%切り上げを含む)
2006年末 7.8087元 3.35%上昇
2007年末 7.3046元 6.9%上昇
2008年末 6.8346元 6.9%上昇
2009年末 6.8282元 0.1%上昇
2010年末 6.6227元 3.0%上昇
2011年末 6.3009元 5.1%上昇
2012年末 6.2855元 0.25%上昇
2013年末 6.0969元 3.1%上昇
2014年末 6.1190元 0.1%下降
2015年末 6.4936元 5.77%下降
2016年末 6.9370元 6.4%下降
2017年末 6.5342元 6.16%上昇

1994年1月に、人民元対米ドル相場が一本化された時、公定相場の水準を勘案せず、外貨調整センター相場の水準の1ドルが8.7元と決められたため、徐々に8.2~8.3元に上昇した。その後、固定相場のような動きであったが、2005年7月に2%切り上げられた。

3. 中国の外貨準備の推移
2016年末に6.9370元と人民元が大きく下がったが、この一つの要因として中国の外貨準備の減少があげられる。中国当局が資金流出に歯止めをかけたことで、2017年には外貨準備は上昇に転じた。

・2014年6月残高 39,932.13億ドル(史上最高)
・2014年末残高 38,430億ドル 前年末比217億ドル増加
・2015年末残高 33,304億ドル 前年末比5,127億ドル減少
・2016年末残高 30,105億ドル 前年末比3,198億ドル減少
・2017年末残高 31,399億ドル 前年末比1,294億ドル増加

4.人民元相場指数
中国通貨当局は、人民元相場指数を導入したが、最近一年間、中国外為取引センター(CFETS)人民元相場指数は極めて安定している。BIS通貨バスケットを参考にした人民元相場指数もSDR通貨バスケットを参考にした人民元相場指数も安定している。以下は、2016年12月30日と2017年12月29日の人民元相場指数である。人民元対米ドル相場に具体的に影響を与えているのは米ドル指数といえる。

2016年12月30日
中国外為取引センター(CFETS)人民元相場指数 94.83
BIS通貨バスケットを参考にした人民元相場指数 96.24
SDR通貨バスケットを参考にした人民元相場指数 95.5
2017年12月29日
中国外為取引センター(CFETS)人民元相場指数 94.85
BIS通貨バスケットを参考にした人民元相場指数 95.93
SDR通貨バスケットを参考にした人民元相場指数 95.99

5.米ドル指数
米ドル指数(u.s.dollar index)とは、米ドルの動きを先進国市場の主要六通貨(ユーロ50.14%、日本円13.6%、英ポンド11.9%等)と比較する指標である。通貨の割合はその国と米国の間の貿易量による。 
2010年以降の年末の米ドル指数は次の通りとなっている。本稿の2.の人民元対米ドル相場の推移を見ると、総じて米ドル指数が弱いときに人民元対ドル相場は強くなっている。最近一年間を見ても、米ドル指数が弱くなった時に、人民元は強くなっている。

2010年12月30日 79.49
2011年12月30日 80.21
2012年12月28日 79.68
2013年12月30日 80.00
2014年12月30日 89.34
2015年12月30日 98.26
2016年12月30日 102.21
2017年12月29日 92.30

6.人民元実質実効相場
人民元実質実効相場(Real effective exchange rate)とは、中国の貿易相手国との複数の為替相場を貿易額に応じて加重平均したうえで、物価変動の影響を調整した指標である。
最近一年間、人民元実質実効相場はかなり安定的に推移している。
国際決済銀行(BIS)発表の人民元実質実効相場(2010年=100)  CPI-based, Monthly average

2011年12月 102.5
2012年12月 108.7
2013年12月 118.3
2014年12月 125.54
2015年12月 130.27
2016年12月 122.86
2017年11月 121.39