fxdondon’s blog

fxdondon presents 世界の政治・経済・財政を考察し、外国為替相場を読み解きましょう

イールドカーブのフラットニング

バロンズ誌 アップ・アンド・ダウン・ウォールストリート

これまで、長短金利のスプレッド縮小は経済に異変が生じる前触れだった。米2年債と米10年債の利回り格差は43bpと金融危機と景気後退入り直前にあたる2007年以降で最小に。ストラテガス・リサーチ・パートナーズのダン・クリフトン氏が、通商摩擦という向かい風が税制改革実現と歳出増3,000億ドルの追い風の効果を減退させると指摘するなか、米長短金利スプレッドはトランプ政権の鉄鋼・アルミ関税発動後に縮小を続け、S&P500は税制改革法案成立後の上げ幅を相殺している。同時に金融市場は、米連邦公開市場委員会FOMC)の利上げと共に財政赤字の急拡大にも懸念を寄せる。国際通貨基金IMF)は、GDP比で債務が拡大する唯一の主要国と指摘した。

米国の債務と言えば、4月23日週に米国は2,740億ドルの入札を予定する。年限は短期ゾーン、つまり金融政策に影響を受けやすく、イールドカーブはさらにフラット化の圧力を受けるだろう。しかし、G+エコノミクスを率いるリナ・コミレバ氏によれば、単に引き締め策の影響とは言い切れない。足元の長期金利の低下は金融環境の長きにわたる中銀の資産を象徴とした緩和状態を表すと同時に、中国や日本、ドイツなど高齢化に直面する国々の年金運用の影響に他ならないという。コミレバ氏は「米金利の低下とフラットニング、そしてFedが利上げを継続する状況下でのドル安は、ドルの供給過剰を示し、過剰な投資ファンドの利回り追求が長期金利の低下を助長した」と説明する。コミレバ氏はまた「経済拡大が終焉に近づくなかでも、金融環境は大いに緩和寄りで、その状況で前例のない財政拡張を行うことで、投資家のリスク資産への需要を高め、労働生産性の低迷にも関わらず債務を拡大させる」と極めて慎重だ。これらの代償は「将来における金融面での打撃であり、景気後退入りを促す市場変動」と警告するのも忘れない。

どんな理由であれ、短期金利に連動する融資の借り手は短期金利上昇に無傷でいられない。同時に、原油価格が情報するなかで、トランプ大統領20日ツイッターで批判したように商品先物もつれ高となり、ドルは下落中だ。トランプ大統領と言えば、16日に「米国が利上げを行う過程で、ロシアと中国が通貨安ゲームを展開している。容認できない!」とツイートした。それでも、トランプ大統領の公約に反し財務省が公表した為替報告書で中国は”為替操作国”に認定されなかった。

2015年11月14日付けのバロンズ誌カバーで指摘した通り、中国は元安誘導していない。むしろ2016年10月にIMFのSDRバスケット通貨に組み入れられてから、断続的に上昇基調にある。2017年初めから、元は対ドルで11%も上昇してきた。逆にルーブルは対ドルで7%下落してきたが、トランプ政権によるロシア制裁が原因で為替操作しているわけではない。

トランプ大統領の矛盾をはらむツイートが注目される一方で、Fedへの言及はそれほど注意を引いていない。どの段階で、Fedの利上げは「容認できない」水準に到達するのだろうか?

ナバロ通商製造業政策局長は4月初め、Fedが「年内3回の利上げを行うと発表した」ことに「当惑した」と述べた。既に3月FOMCで追加利上げを実施済みであり、トランプ大統領の発言はFedを狙ったものなのだろうか?だとすれば、トランプ大統領がリチャード・クラリダ元財務次官をFRB副議長に、カンザス・バンクのコミッショナーであるミシェル・ボーマン氏をFRB理事に指名した。こうした面々を踏まえ、JPモルガンのマイケル・フェローリ米国担当主席エコノミストは、潜在成長を上回る経済拡大を続ける限り、パウエルFRB議長、クラリダFRB副議長、ウィリアムズNY連銀総裁に率いられるFedが利上げを継続させると予想。特に非農業部門就労者数(NFP)が前月比で20万人増を超えるのであれば、「特に其の可能性が強まる」という。トランプ大統領Fedツイッター砲のターゲットにする日は、そう遠くないのかもしれない。