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南アフリカの対外債務 危険水準へ

今月23日に南アフリカ中銀が金融政策を発表する予定です。市場では 政策金利を据え置くと見る向きが大勢で、大きな波乱なくイベント消化となる公算が大きいと報じられています。
ちなみに、南ア中銀は3月理事会時に、今後、政治要因などによって通貨が大きく減価するような事態になれば、利上げによって通貨防衛することもあり得るような姿勢を示していました。
これからの経済低迷の中で、経済活動や景気を犠牲にしても利上げして外資や投資家をつなぎとめておくしかない苦しい台所事情があるようです。

去る2015年9月、米国の利上げ観測、利上げ開始により、南アフリカ・ランドは高金利優位性が失われるということで下落しました。
当時の記事では、こう綴られています。

ロイター
南アフリカ準備銀行(中央銀行)は外貨準備が低水準にとどまっているため、通貨ランドの急落を食い止める力を失っている。
米国の利上げ観測を背景に新興国資産全般が売られていることに加え、中銀が同日発表した南アフリカの8月の外貨・金準備額が412億2440万ドルと、ほとんど増えていないと判明したことが打撃になった。
同国が国内総生産(GDP)の5%近い経常赤字を抱えている点を踏まえると、投機的なランド売りに対しては極めて脆弱な状況に置かれている。
BNPパリバ・カディス・セキュリティーズのエコノミスト、ジェフリー・シュルツ氏はロイターに「他の新興国と比べた南アフリカの外貨準備の少なさは、通貨価値に影響を及ぼせる力を備えていないことを意味する」と指摘した。
中銀もかねてからその点は認めており、クガニャゴ総裁は前週末にあらためて「外貨準備の水準が通貨防衛には不十分だ」との考えを示した。

というものでした。
現在では、米国が利下げへ動くとの観測がある中で、米金利上昇によるドル高ランド安要因は後退したにもかかわらず、南ア・ランドが選好される気配がありません。
その要因として、南アフリカ経済の低迷が予想されていることが主な要因ですが、南アフリカ経済のファンダメンタルズの悪化が問われています。
さらに、2015年当時注目された南アの外貨準備ですが、現在の外貨準備は当時に比べれば若干増加しているものの、その外貨準備がここ最近減少してきている事実を投資家は見逃さないようです。
なぜ外貨準備が必要なのかというと、もちろん対外債務を返済するための原資として必要だからですが、2015年当時と比べて現在は危険水準へ向か合っているとの観方があります。

南アの外貨準備(ミリオン$)
イメージ 1

南アの対外債務(ミリオン$)
イメージ 2


外貨準備 対 対外債務で観ると明らかに現在の方が劣悪になっており、2015年当時の中銀総裁が述べた「外貨準備の水準が通貨防衛には不十分だ」という認識を超えて、「危険」であるという認識に変わりつつあります。

南アフリカの対外債務
2015年 1400憶ドル 
2018年 1723憶ドル

南アフリカの外貨準備
2015年 420憶ドル
2018年 483憶ドル

外貨準備が2015年当時より63憶ドル増加しているものの、対外債務はおよそ320憶ドル増加しています。
外貨準備 対 対外債務比率で観れば、2015年当時は30%あったものが、現在では28%へと低下しています。これは2018年のデ-タですが、2019年はさらに低下しているものと思われます。
今回の長らく続いてきた世界的好景気で南アフリカが積み上げてきたのは、外貨準備や総貯蓄ではなく、借金・対外債務だったわけです。
まぁ、これが実際に問われるのは、債権者(資金提供者)が資金回収に大きく動き出す時です。資金回収に大きく動き出さなければ、いくら外貨準備が不足気味でも自転車操業で回していけます。現に、現在は回っています。
ただ、以前にも増して、外貨準備が通貨防衛には「不十分」ではなく「危険」であるという認識が必要となってきているようです。