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fxdondon presents 世界の政治・経済・財政を考察し、外国為替相場を読み解きましょう

円高を想起させる3つのイベント

マネ-ポストweb
円高を想起させる3つのイベントが浮上 

1 . 米中貿易戦争の激化
5月6日(月)、トランプ大統領は中国からの輸入2000億ドルに対する関税の引き上げをツイートしました。それまで中国との交渉は「大変うまく行っている」と連日の様に言っていたのに、突如の豹変です。
完成しかけていた150ページの合意文書を、中国側が予告もなく50ページほど切り落とし送り返してきた、ということが事の発端のようです。
中国としては、一方的に妥協する内容は受け入れられないし、知財補助金に関することは貿易というよりも国内政治の問題であり、内政干渉であると主張しています。客観的に言えば、2つの相容れない経済システムがついにぶつかったと言えるでしょう。
これは容易に解決しません。大阪G20である程度の合意があるとの見方もありますが、本質的には困難です。習近平氏は、これは新しい「長征」だと言っています。「長征」といっている以上、長期戦にもなるし、絶対に引き下がらないとの「宣言」にも聞こえます。
金融市場では質への逃避(Fly to Quality)が起こり、米国10年債の金利は2.3%を割り込みました。米国株も調整し、為替市場では「円」や「スイスフラン」といったリスクオフマーケットで買われやすい避難通貨に買いが集まっています。対立が激化すれば、この傾向はますます強まるでしょう。

2 .  米国、通貨安誘導をする国への相殺関税を提案
競争的通貨切り下げを行っていると米財務省が認定すれば、その国からの輸入品に関税を課すことができるとしています。ただ、独立した中央銀行による金融政策やそれに付随する政策は含まれないとしていることは救いです。
しかし、日本の場合、為替介入はしてないとは言え、円が非常に割安であることは事実であり、将来的に円安に歯止めをかけ、円高の際には介入できないために円高の動きが激しくなる可能性があります。
例年4月に発表される米財務省「為替報告書」が、今年はまだ発表されていません。相殺関税のことも含めて、何らかの包括した形で近々発表があるでしょう。そのとき、ドル円も影響を受ける可能性が高いと思われます。

3 . ブレグジット問題
メイ首相がついに辞任しました。EUとの間で合意した離脱案を、英下院通過させようと3度トライしましたが、大差で否決され続けました。EUとの合意案の内容があまりにもひどかったからです。その後、労働党との間で、よりソフトな離脱を目指しましたが、合意に至らず、また保守党を諦めて労働党に走ったことで、保守党内からの反発を招きました。
次に誰が首相となるのかが問題です。下馬評ではボリス・ジョンソン氏がトップを走っていますが、彼はハードブレクジット派です。EUとの合意案をテレグラム紙上のコラムで、さんざんこき下ろしていました。
また、ボリス・ジョンソン氏の意向はともかく、メイ首相を悩ませた議会の構成が変わるわけではありません。よって、ボリス・ジョンソン氏もメイ首相と同様のジレンマに直面する可能性があります。何も決まらないまま10月末日を迎える可能性も高そうです。
その時まで決まっていなかったらどうなるのか? その時は、「合意なき離脱」となりそうです。
米中貿易問題の激化、相殺関税をちらつかせての外交、そして英国の「合意なき離脱」。円高を想起させるイベントが近づいています。米国経済のファンダメンタルズの良好さは否定できないものがありますが、円高イベントが3つ、同時に浮上してきました。考え方を変えて、円高リスクに向き合う局面が来たと言えるでしょう。

【PROFILE】志摩力男:ゴールドマン・サックスドイツ証券等、大手金融機関にてプロップトレーダー、その後香港にてマクロヘッジファンドマネジャー。