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景気サイクル後期における投資 PIMCO

景気サイクル後期においてリスクが高まっています。投資家はどのように対応すべきでしょうか?
By PIMCO Mihir P. Worah

投資家を取り巻く環境に変化の兆しが数多く見られます。米国では、米連邦準備制度理事会FRB)が短期金利の引き上げを進める一方で、2012年以来初めてインフレの政策目標が達成されました。数十年間にわたって続いた国際貿易の秩序が変わろうとしています。米国の景気拡大局面が10年目を迎える中で、いくつかの経済指標が過熱状態にあります。投資家の間では深刻な結末を予想する見方と、より楽観的な見方に分かれ、ボラティリティが上昇する中で、相対価値の投資機会が生じています。
PIMCOでは、高格付け債券は、景気後退局面においてはパフォーマンスが最も高くなる公算が大きいため、引き続きポートフォリオアロケーションにおいて重要な役割を担うと考えています。また、インフレが加速する前段階においては物価連動債は投資妙味があります。とはいえ、ポートフォリオにおけるリスク資産のボラティリティを抑制する効果について債券に多大な期待を寄せていた投資家にとっては、サプライズが生じる可能性もあります。
最近数年間は、中央銀行が供給する流動性の絶大な影響力と長期金利の低下がバリュエーションを押し上げる中で、投資家はコモディティを除くほぼ全ての資産においてロングすることで、利益を上げることが可能でした。しかしながら、景気サイクルの現段階において、FRBが利上げとバランスシートの縮小を積極化する中でバリュエーションが割高になったことを受けて、セクター間、地域間、ファクター・スタイル間のリターンの格差はさらに拡大する見通しです。株式市場ではよく知られているように、景気サイクル後期においては、モメンタム・ファクターにはアンダーパフォームする傾向が、クオリティ・ファクターにはアウトパフォームする傾向が見られます。同じように、クレジット・スプレッドはリスク調整後ベースで株式をアンダーパフォームすることが多いのに対して、コモディティは需要が供給を上回るようになる結果、パフォーマンスが改善する傾向があります。こうした傾向が既に顕在化し始めています。今後の景気サイクル進行に伴う動きを正確に理解するために、投資家は資産クラス・レベルではなくファクター・レベルでポートフォリオにストレステストを適用するべきであるとPIMCOでは考えています。また、各セクターにおいて、リスクを管理しつつ魅力的な投資機会を特定する精緻なグローバル・リサーチ機能の重要性も増しています。資産、国、ファクターの間の相対価値をより的確に分析する能力が、大規模なベータ・リスクをとるよりも、一段と重要になっています。
景気サイクル後期において、FRBは予想以上のペースで利上げを進めるため、イールドカーブはフラット化する傾向があり、その後の景気後退局面では、FRBは利下げに転じるため、スティープ化する傾向があります。FRBの引き締めサイクルにおいて、イールドカーブは想定通りの動きを見せていますが、フラット化は行き過ぎであり、リスク・リターンのトレードオフによって修正が入ると予想する根拠が数多く存在します。
(景気サイクル後半のFRBによる利上げ以外に)フラット化の大きな3つの要因として、新規発行国債の平均年限の長期化を停止するという米財務省の決定、世界的な長期金利低下による下支え効果、年金拠出の税控除に適用される税率が2017年の39%から20%に早晩引き下げられることを踏まえた、米国企業による長期債購入意欲の向上が挙げられます。米国では、財政赤字拡大やFRBのバランスシート縮小を背景に大量の長期債が市場に供給され、欧州では、欧州中央銀行(ECB)が年末までに量的緩和プログラムを終了する見通しです。また日本では、日本銀行が10年国債金利の誘導目標(0%)の柔軟化を示唆しているため、足元の流れは反転する公算が大きいとPIMCOでは考えています。