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fxdondon presents 世界の政治・経済・財政を考察し、外国為替相場を読み解きましょう

注目の英国小売指標

英国立統計局(ONS)は、小売統計と国内総生産(GDP)統計の発表を従来予定から1日後にずらすと発表した。ONSは「新型ウイルス感染拡大による混乱で、経済指標の公表前に内容を精査するために若干の時間が必要になった」とした。3月の英小売統計は4月23日から24日に、GDP統計は5月12日から13日に延期される。
なぜ精査する必要があるのか?様々な憶測を生む。余りにもひどい結果に驚きを隠せなかった、と観るのが私fxdondon。
小売統計結果が『統計開始以来、過去最大の落ち込み』、それは世界各国で共通することです。この4月度はさらに悪化しますが。
ここで、米小売りの結果を振り返ってみる。
米商務省が15日発表した3月の小売売上高(季節調整済み)は前月比▼8.7%で、統計開始の1992年以来過去最大の下げ幅。ダウ・ジョーンズまとめの市場予測(▼8.0%程度)より大きく減少した。
前月比での売り上げ減少が著しかったのは、一時閉鎖などを余儀なくされた飲食サービス(26.5%減)、外出減で需要が減った上、価格も下落したガソリン給油所(17.2%減)、衣料・装飾品店(50.5%減)、自動車・関連部品(25.6%減)などが大きく落ち込んだ。
一方、消費者が自宅で過ごす時間が増えたり、買いだめしたりしたため、食料品店(25.6%増)やオンラインストアなどの無店舗小売り(3.1%増)の売り上げは伸びた。
この傾向は、英国も同様でしょう。
ところが、今回の3月英小売りの市場予想は▼3.8%で、米国の落ち込みよりかなり低いと観られている。
その結果発表を前に毎月、英小売協会(BRC)に属する30業種の民間小売店のデ-タが発表されているが、3月度の結果は▼3.5%だった。そのデータを提供している企業は、英国全体の小売売上の60%を占めているとされるが、そのデ-タが参考にならないのがつらいところ。

      BRC    ONS   
02月度  ▼0.4%  ▼0.3%
01月度  ±0.0%  +0.9%
12月度  +1.7%  ▼0.6% 
11月度  ▼4.9%  ▼0.6%

過去の結果を観ると、まるで参考にならない。先月2月度はBRCとONSは近い結果に落ち着いているが、混乱のこの3月度となると参考にはなるまい。
英国では3月20日からパブやレストラン、カフェなどの飲食店を強制的に閉じられたが、3月中旬までは影響も小さいと市場では観られている。
特に、3月16日に英政府が感染リスクが高い人は自宅にとどまるように要請してからは、パニック消費に拍車がかかった。英国ではトイレットペーパーなど特定の商品が品薄になるだけでなく、スーパーの商品が根こそぎなくなっている。野菜や果物など生鮮食品もあっという間になくなり、スーパーの商品棚のかなりの部分が空になる店舗が続出した。

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写真は3月19日夜のロンドン西部のスーパーマーケット「セインズベリー」。店内に商品はほとんど残っていなかったという。
しかし、食後の紅茶や、アフタヌーンティーの歴史が根付いている英国で、飲食サ-ビス業店舗の閉鎖の影響は少なからずある。

世界保健機関(WHO)欧州地域事務局のトップ、ハンス・クルーゲ氏は、「欧州地域には依然としてパンデミック(世界的大流行)の暗雲が重く垂れ込めている」と発言。欧州地域は10日間で感染者数が2倍に増えて100万人に達したと指摘し、さらに感染拡大が懸念される地域として、英国、トルコ、ウクライナベラルーシ、ロシアを挙げた。
英国のドミニク・ラーブ首相代行は16日、新型コロナウイルス対策として3月23日から全国で続くロックダウン(都市封鎖)は、「少なくともあと3週間は続く」と発表した。「実施している措置の緩和を急げば、これまでのあらゆる犠牲と前進を無駄にしてしまうかもしれない。そうなればまたすぐにロックダウンに戻ることになり、ウイルスの第2波で人命が脅かされるし、2度目のロックダウンがまたしても経済に打撃をもたらす」と述べた。
「少なくとも3週間」ということは、「長ければ無期限」とも解釈できる。そのため、この4月の英国経済はボロボロだということは誰にでもわかる。しかし、先月3月度は微妙なところである。3月のパニック消費がどこまで生活必需品消費を押し上げ、失業者増加でどこまで贅沢品消費を押し下げたか、その綱引きが3月度の小売売上に表れる。