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fxdondon presents 世界の政治・経済・財政を考察し、外国為替相場を読み解きましょう

南アフリカ 悲観するしかない状況

三菱UFJ国際投信
エマージング・マーケット・マンスリー 2019年8月号

南アフリカの債務に対し懸念が高まっています。7月22日に政府が電力公社エスコムへ資本注入する方針を示し、Moody’sは24日に政府債務への懸念を表明、 Fitchは26日に国債の格付け見通しをネガティブに引き下げました。市場の注目は、大手格付け機関で唯一投資適格級の格付けを付与しているMoody’sの動向です。Moody’s はまだ格付け見通しを安定的としており、すぐに格下げされるリスクは低いとも考えられますが、格下げされた場合はグローバルな債券指数の構成国から外れ、大規模な資本流出を招く可能性があるなど、大きな影響が想定されるため注意が必要です。
電力公社エスコムへの資本注入は、2月の政府予算発表時(3年間で690億ランド)、 4月の緊急追加支援(50億ランド)、今回7月の追加支援(2年間で590億ランド)と足元の6ヵ月で3回目となっています。同社の電力供給が南アフリカ全体の 90%超を占めるため、重要企業であることに疑いはないものの、短期間に資本注入が頻発していることは再建がうまく機能していないこと意味し、懸念が高まっています。7月30日に発表されたエスコムの決算では、2019年度(会計期は2018年4月から2019年 3月)が純利益で▲207億ランド(約1,583億円)と、2年連続のマイナス、加えてマイナス幅は前年度の23.3億ランドから大幅に拡大しています。
電力公社エスコムを巡る一連の動きに対し、市場の反応はまだ限定的に留まっていると考えています。7月22日の資本注入発表後、エスコムのCDSはほぼ横ばいで引き続き低水準、南アフリカ国債の10年利回りは8.66%(7月22日)から9.04%(26日)まで上昇、通貨の南アフリカ・ランドは対米ドルで3%超下落となっています。今回の資本注入を受けエスコムの信用力は高まりましたが、資本注入を行う南アフリカ政府の信用力は下がり、国債利回りが上昇、通貨の下落に繋がったとみています。利回りの上昇や通貨の下落はあったものの、変化幅はまだ限定的で、 Moody’sの国債格下げ、債券指数からの除外という最悪シナリオを織り込み始めたという状況にはないとみられます。これは先進国を中心に進む低金利環境で、利回りを求める投資家からの資金流入が、高金利国の南アフリカの債券・通貨の下落を抑えたと考えています。ただし今後、投資家心理が弱気になった場合は、南アフリカの資産は下落しやすい面があるとみています。


この記事では、電力公社エスコムや格付けに関する情報ですが、個人的にも少し補足しておきます。
南アフリカの輸出先を観ますと、EU 23.7%(ドイツ 7.5%、英国 5.1%、オランダ 3.3%など)、南部アフリカ関税同盟 11.1%(ボツワナ 4.4%、ナミビア 3.8%、エスワティニ 1.5%、レソト 1.4%)、中国 9.1%となっており、輸出地のトップは中国の 9.1%となっています。しかし、これはあくまで直接輸出でのデ-タであり、たとえばドイツへ輸出するものでも最終消費地が中国になっているものが多いため、結局は中国依存過多となっています。
そして、輸出先上位3ヶ国を観ても、中国、ドイツ、英国と経済の減速が著しい国に集中しています。
また、以前にも触れましたが、南アフリカの総貯蓄が異常に低く、一方で対外債務は膨れ上がっています。では、このような状況下で対外債務をいかに遅延なく返済していくことができるというのでしょうか?私fxdondonは、悲観的にならざるを得ません。
三菱UFJ国際投信の「Moody’sの国債格下げ、債券指数からの除外という最悪シナリオを織り込み始めたという状況にはない」という観方は正しいでしょうし、南アフリカの外貨獲得能力は低下する方向にあると観られます。
まずは、Moody’sの国債格付けを見直す「魔の11月」に注目です。おそらく、格下げされて、投資適格級から不適格級のジャンク債評価に変わるでしょう。世界の機関投資家ヘッジファンドも、運用ポ-トフォリオからランド建て資産を排除することになると思われます。

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ポンド/円推移  ブレグジットに揺れるポンド
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豪ドル/円  利下げまっしぐらのオ-ジ-
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