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米国債市場は財政赤字膨張も利回り低水準続く

ジェローム・パウエル氏は正しい。「現代金融理論(MMT)」について問われれば、ウォール街はそう答えるだろう。米政府はいくらでも自由に借り入れができるとの主張を裏付けるMMTは、とんでもない考えであり、実行に移せば米財政には悪夢のような将来が待ち受けるはずだと。
しかしながら、MMTを実践した結果も同然の財政赤字に対し、15兆6000億ドル(約1735兆2000億円)規模の米国債市場は今のところ、慌てていないように見受けられる。
米国の財政赤字が一段と拡大し、国債発行額は過去最高に急増したにもかかわらず、米国債市場では10年債利回りが3%未満と、歴史的な低水準を続けている。MMT学派にとってこれは、ほぼ想定内のことであり、驚きに値しない。米国の借り入れは自国通貨建てであるため、そのためにいくらドルを印刷しようが破綻はあり得ないというのがその理論だ。現在のようにインフレ率が低い状況は、もっと支出を増やす余地があるという。
パウエルFRB議長は2月末、この理論は「全く誤っていると思う」と議会で証言。投資家もこの理論はいつか泣きを見ると、議長に同調する見方が優勢だが、まだ時間はあると考えているようだ。
マーケットフィールド・アセット・マネジメントのマイケル・シャウルCEOは、「マーケットはこうしたことについては喜んで、当面は辛抱強い姿勢で臨むものだ」と述べた。
過去の一例として、2008年の金融危機後に米当局が数兆ドル規模の債券を購入したことがあったが、インフレを誘発もせず、債券自警団が復活することもなく、むしろ国債利回りの抑制につながった。
セージ・アドバイザリー・サービシズの共同創業者、マーク・マックイーン氏によれば、悪い結果に至らなかったのは、他国も同じことをしていたからだ。「全ての中央銀行が競い合うように同じ方向に動いた」とマックイーン氏。「どこも大量の紙幣を印刷した」と説明した。
そして現在、トランプ政権の実験的財政政策により成長経済の下で増えた赤字は、米国が1960年代以降に見たことのない規模に拡大。財政投入による景気刺激は成長加速に貢献した。
ドイツ銀行のプライベート・ウェルスマネジメント部門のゲーリー・ポラック氏は、「債券市場が赤字を吸収し続けることは分かっている」と指摘しつつも、いつか「ささいなことで限界を超えてしまうだろう」と警告した。
セージのマックイーン氏は「いつか痛い思いをするだろう」と話しながらも、今のところは「逃げおおせている。市場の状態は極めて明るい」と述べた。(ブルームバーグ