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ブレグジットによる財政規律の甘え

英国のハモンド財務相は来年度の予算案の概要を発表し、およそ10年にわたって続けてきた緊縮策を終わらせると約束する一方、EUとの離脱交渉が合意に至らない場合などに備え予算を確保する考えを示しました。
2008年の金融危機以降、緊縮策を続けてきた結果、財政赤字が大幅に改善したなどとして「国民の大変な努力は報われようとしている。緊縮財政の時代は終わりに近づいている」と緊縮策を終わらせることを約束しました。
そして、向こう5年間で国民保険サービスに2050億ポンド、29兆円余りの予算を投じることなどを明らかにしました。
一方、EUからの離脱については「交渉が終わり、先が見通せない状態から抜け出せれば経済的な恩恵も生まれる」としながらも、政府として合意に至らないなどあらゆる可能性に備えるとして、20億ポンド、2800億円余りを離脱予算として用意する考えを示しました。
ブレグジット対策で、たったの 20億ポンド(2800億円余り)しか予算を組まないとは呆れてしまいます。「ブレグジットをなめとんのか!」と、思わざるを得ません。
そして、英国政府は今回の予算案で大手IT企業を対象にした「デジタル課税」を2020年から導入する方針を明らかにしました。
対象になるのは全世界での売り上げが年間5億ポンド、日本円でおよそ700億円以上の企業で、英国向けのデジタル事業の収入に2%の税を課すとしています。
英国政府は、税制を持続可能で公正なものにするためで、英国の利用者を対象とした事業に見合う税金を企業が確実に払うようにするためとしています。
対象となる具体的な企業の名前は出していませんが、現地メディアはアマゾンやグーグル、それにフェイスブックなどを標的にしたものだと伝えています。
アマゾンやグーグル、フェイスブックなど米国大手IT企業が加盟するロビー団体は、「英国政府が今回の予算案にデジタル課税を含めたことに失望した。デジタル課税の導入は英国への投資を冷え込ませることになり、多くの企業の雇用に影響しかねない」として見直しを求めています。
ロイターによれば、欧州中央銀行(ECB)の銀行監督部門は30日、ユーロ圏の銀行にとって来年は不良債権やサイバー犯罪、世界各国の政治的不確実性の高まりが最大のリスク要因になると指摘した。ユーロ圏の銀行システムに影響を与える3大リスクは、地政学的不確実性、不良債権および不良債権化する可能性のある債権の増加、サイバー犯罪やITの混乱と指摘し、「これらは、金融市場のリプライシングや低金利環境、銀行の規制への反応をもたらすとした。
また、英国の欧州連合(EU)離脱に伴い、中東欧諸国への悪影響も見逃せません。
チェコ自動車産業では、最大1万5,600人の雇用に影響が出る可能性があると、信用保険などを手掛ける仏コファス(Coface)の調査を元に、チェコ通信が伝えた。 それによると、英国はチェコの自動車輸出のおよそ7%を占める主要市場となっているとのこと。
チェコハンガリールーマニアなど中東欧諸国は西欧諸国の製造業拠点になっており、ブレグジットによる混乱が予想されています。
企業にとって、英国がビジネスに適した国とは言い難くなっており、これからヒト、モノ、カネ、情報が「ブレグジット」を一層加速させることにつながりそうです。