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為替条項、超円高につながる「地雷」の可能性

ロイタ-
米国の為替政策に市場の関心が集まった背景には、中国の問題もさることながら、韓国やメキシコ、カナダに続いて、日本が物品貿易協定(TAG)の本協定あるいは付帯文書で「為替条項」を米国から押し付けられるシナリオが、にわかに現実味を帯びてきたことがある。
日本についてはどのようなことが書いてあるだろうか。
概要では、米国との財貿易で18年6月までの4四半期に700億ドル(約7900億円)の黒字を計上していることや、同期間の経常黒字はGDPの4.0%に達しており、直近10年間の最高水準に近いこと、ほぼ7年にわたって日本は為替介入を行っていないことが指摘されている。
その上で、米財務省が期待することとして、「規模が大きく自由に取引が行われる為替市場において、介入(という手段)は非常に例外的な状況において、適切な(米国との)事前協議を伴った形でのみ、留保される」と明記されている。また、報告書の後半にある詳細な説明部分には、このところの日銀の金融政策運営に関する記述がある。
驚いたことに、日銀が7月末に緩和策の修正を決めた後、ややパニック的な長期金利の急上昇を抑える(市場心理を落ち着かせる)ために8月2日午後に予定外に実施した4000億円の長期国債買い入れについて、「5─10年の日本国債を36億ドル買い入れた」という表現で、しっかり書かれていた。米財務省は日銀によるオペレーションの実施状況も含め、その金融政策運営をつぶさにモニタリングしているようだ。
潜在的には非常に大きな材料になる、と筆者は認識している。
なぜなら、将来的に米国の利上げに急ブレーキがかかり、さらには同国の利上げ局面が終了したという観測が広がるなどの事態が発生して、金融政策のベクトル変化を材料に円高・ドル安が大幅に進み、「アベノミクス景気」の土台が揺さぶられる事態になった場合でも、日本の政策当局による為替介入や追加緩和といった円高阻止のための施策が封じ込められてしまうためだ。

為替条項という「地雷」を日本が踏んでしまった場合、円高の流れが強まった際に、それを阻止するために打つべき手が見当たらないという事態に陥ってしまう。
(上野泰也氏 みずほ証券のチーフマーケットエコノミスト