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ブレグジットの現状

NHK
イギリスがEU=ヨーロッパ連合から離脱するまで29日であと半年となります。しかし、離脱後、新たにイギリスとEUの境界となるアイルランドの国境管理をめぐって離脱交渉は難航し、「合意なき離脱」によって経済や市民生活が混乱する事態も懸念されています。
イギリスは半年後の来年3月29日、46年間加盟したEUから離脱することになっています。
双方は離脱の条件などを定めた「離脱協定」に合意し、それぞれの議会で批准する必要があり、ことし10月までの合意を目指して交渉を進めてきました。
これまでに、イギリスが支払うEU予算の分担金やイギリスに住むEU市民の権利の保障など、およそ8割の項目で合意していますが、離脱後、新たにイギリスとEUの境界となる、イギリスの北アイルランドとEU加盟国のアイルランドの国境の管理をめぐって意見が対立しています。
仮に妥協点を見いだせなければ、これまでに合意した項目も無効となり、離脱後の急激な変化を緩和するために設けることで合意した移行期間もないまま、離脱を迎えることになります。
イギリスとEUの貿易で通関手続きや関税が必要になって企業活動が著しく停滞するほか、食料品や医薬品などの物流の遅れによって市民生活に影響が出る事態も懸念されています。
双方は遅くともことし11月までの合意を目指していますが、今月開かれたEU首脳会議でも意見の隔たりが改めて浮き彫りとなり、合意がないまま離脱を迎えることへの懸念が一段と高まっています。

交渉難航の原因「アイルランドとの国境」問題

イギリスとEUの離脱交渉は去年6月に始まりました。
双方は、イギリスが離脱に伴ってEUに支払うべき分担金など、離脱までに明確にしておくべき事項について優先的に交渉し、去年12月に基本合意に達しました。
しかしこの時、合意できず、現在交渉が停滞している最大の原因となっているのが、離脱後、新たにイギリスとEUの境界になるアイルランドの国境の管理です。
背景には、同じ島にあるイギリスの北アイルランドとEU加盟国のアイルランドの複雑な歴史があります。
北アイルランドでは1960年代から、イギリスからの分離を求めるカトリック系住民とプロテスタント系住民との間で激しい対立が起きました。
1998年にようやく和平合意が結ばれ、北アイルランドアイルランドの国境線に設けられていた検問所が廃止された結果、人とモノが自由に移動できるようになりました。
過去のような対立が再び起きないよう、イギリスとEUは、離脱後も国境に検問所などの物理的な障壁を設けないことで一致しています。
ただ、国境でどうやってモノの移動を管理し関税を徴収するかをめぐって、両者の意見が大きく隔たっているのです。
EUは、関税の徴収などの通関手続きを北アイルランドアイルランドの国境線上で行うと分断が顕著になり、対立した過去に逆戻りしかねないとして、イギリスの本島と北アイルランドの間でモノが行き来する際に、行うべきだと提案しています。
これに対してイギリスは、EUの提案はイギリスの国土の一体性を損なうもので絶対に受け入れられないと強く反発し、双方の溝は埋まらないままです。
妥協点を見いだせなければ、これまでに双方が合意した内容すべてが白紙となることから、国境管理の問題は、離脱交渉が成功するかどうかの大きなカギとなっています。

世論調査「残留」が「離脱」上回る

イギリスの世論調査では、残留を支持する人の割合が離脱を求める人の割合を上回るなど、国民の間で不安と焦りが広がっています。
大手新聞のタイムズと世論調査会社が今月22日に行った調査では「離脱交渉がうまくいっていない」と答えた人は71%に上りました。
また、合意のないまま来年3月に離脱を迎える可能性が高いと考える人は64%で、交渉の行方を楽観視していないことがうかがえます。
離脱を阻止することを目指す市民団体は、EUとの合意がまとまったあとにその是非を問う国民投票の実施を求める運動を展開しています。
運動への支持は徐々に広がっており、最大与党の労働党は今週開かれた党大会で、合意がないまま離脱することになった場合には、再び国民投票を要求することも辞さない方針を打ち出し、メイ政権への圧力を強めています。
メイ首相は国民投票を再び行う可能性を強く否定していますが、与党内でもEUへの妥協を許さない離脱強硬派と、EUとのつながりを重視する残留派の主張の溝は埋まらず、難しいかじ取りを迫られています。

外国企業 懸念高まる

合意なき離脱への懸念はイギリスで事業を展開する企業の間で高まっています。
自動車メーカー「BMW」は、ヨーロッパ大陸からの部品の供給が滞れば混乱が起こるおそれがあるとして、イギリス国内にある工場で離脱直後の来年4月1日からおよそ4週間、車の生産を停止することを決めました。
航空機メーカー「エアバス」は、合意のないまま離脱することになればイギリスを長期的な拠点と位置づけて投資してきた方針を見直さざるをえないとして、生産拠点の縮小もありうるとする声明を出しています。
こうした状況に、IMF国際通貨基金のラガルド専務理事は、合意なき離脱がイギリス経済に深刻な打撃をもたらすと警鐘を鳴らし、イングランド銀行のカーニー総裁は閣僚が参加した会議の場で、離脱交渉が決裂すればイギリスの住宅価格は35%下落すると警告したと伝えられています。
一方、イギリスにおよそ1000社が進出している日本企業の間でも、銀行や証券会社がヨーロッパ大陸側に新たな拠点を次々と設けているほか、パナソニックがヨーロッパ地域の統括会社を、来月、イギリスからオランダに移転させ経理などの担当者10人程度を移すことを決めるなど、離脱への備えが広がっています。