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英国は『UK(ユナイテッド・キングダム)』から『UK(アンユナイテッド・キングダム』(解体)へ

英国で26日、欧州連合(EU)からの離脱に伴いEU法を国内法に置き換えるための法律がエリザベス女王の裁可を得て成立した。バーカウ下院議長が発表した。EUからの離脱日時を2019年3月29日午後11時(日本時間30日午前8時)とする規定も盛り込まれた。
同法はEU離脱の手続きを円滑に進めるためのもので、上下両院が20日に法案を可決していた。英国がEUの前身組織に加盟するのに当たって導入した欧州共同体法は廃止される。
議会での法案審議では、離脱条件を決めるEUとの交渉決裂を防ぐため、交渉への議会の権限を強める修正案が与党の一部議員から提示されたが、交渉での裁量を狭める恐れがあると反発したメイ首相の説得で否決された。
やっと、エリザベス女王も認めるEU離脱となりました。もう、後戻りはできません。

「離脱は絶対反対」―。日立の東原敏昭社長は2016年5月の記者会見で、こう強調した。
英国経済の安定性などに加え「英国がEUの一員であり、そこから欧州にビジネスを広げられるという狙いから拠点を構えた」(東原社長)。離脱が決まると、「欧州全体に影響が広がる可能性がある」と警鐘を鳴らした。
自動車業界も過去に積極的に英国に投資してきた。日産はサンダーランド工場に2200万ポンド(約33億円)を投じてスポーツ多目的車(SUV)「キャシュカイ」を増産。ホンダもスウィンドン工場に2億ポンド(約300億円)を投じ、中型車「シビック」の5ドア仕様の輸出拠点とした。
1、サンダーランド 38.7% 2、ダービー 42.8% 3、フリントシャー 43.6% 4、スウィンドン 45.3%。1は日産自動車、2と3はトヨタ自動車、4はホンダの自動車工場がある英国の都市の名前です。数字は欧州連合(EU)からの離脱か残留かを問う2016年6月23日の英国民投票における「残留」支持率である。その数字を観れば、日本車大手の工場がある都市がみな、EUへの残留に「NO」を突きつけた。
日本企業は英国へ多く投資してきた。2010年以降、日本から欧州への投資のうち、英国は常に1位だった。それが今後、大きく崩れていくことは避けられない。
そして、金融機関ではEU域内ならどこでも営業できる「パスポート制度」から英国が外れることへの懸念がある。これまでは英国で認可を受けた銀行は他のEU諸国でも活動できたが、離脱に伴って他の国では再度認可が必要になる。
そのため、今までロンドンの金融業界の重要な機能に対する権利を他のEU諸国の当局者が主張し始めた。ユーロ建て取引のクリアリング(清算・決済)拠点をどこに置くかという問題です。
「通貨ユ-ロを使用していない英国が、なおかつEUから離脱する英国ロンドンシティにユーロ建て取引のクリアリング(清算・決済)拠点を置いておくのはおかしい」、確かにそうです。
ロンドンのクリアリングハウス(清算・決済機関)は通常1日当たり9000億ドル(約92兆円)相当の取引を処理しており、デリバティブ取引や担保管理で金融収益を支えている。金利スワップ決済で世界最大のクリアリングハウスであるLCHはロンドンに拠点を置き、ロンドン証券取引所グループ(LSE)が過半数の株式を保有している。
そのLCHに、ユ-ロ建て取引のクリアリング(清算・決済)を任せるのはEUとしてよろしくないということですね。フランスとドイツの政治家らはクリアリング業務をロンドンから別の場所に移すことができるとの立場で一致し、フランスではパリ、ドイツではフランクフルトを新たな拠点にと考えています。
ある意味、ドイツやフランスは英国のEU離脱が新たなビジネスチャンスなわけです。
一方、英国はEU離脱で先行きは予測不能です。当面、悪くなることはあっても良くなることはない。どこまで悪くなるかが予想不能なわけです。
先日、航空機エアバス社の英国内生産停止の記事を載せましたが、自動車業界全般もそうです。
英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)電子版は25日、ドイツ自動車大手のBMWが、英国の欧州連合(EU)離脱後に大陸欧州からの部品の輸入が素早く確実にできなければ、英国内の工場を閉鎖する可能性があると報じた。BMW幹部が同紙に語った。
BMWは英国外の欧州各国から大半の部品を調達し、英国で組み立てた車両の多くを国外に輸出しているという。同幹部は「サプライチェーン(部品の調達・供給網)が国境で寸断してしまったら、英国で生産することはできない」と指摘した。
FTによると、BMWは英国内に車両組み立てなど複数の生産拠点を持ち、7千人以上を雇用。2000年以降、20億ポンド(約2900億円)を投資してきた。(共同)
と、いう有様。
我々は学生の頃、英国の産業革命について学びました。18世紀半ばから19世紀にかけて起こった一連の産業の変革と、それに伴う社会構造の変革のことでした。これはあくまで良い意味での産業革命でしたが、今回は悪い意味での英国産業革命が引き起こされようとしています。
英国のこれからの形を示す言葉として、住友商事グローバルリサーチの高井裕之社長は「英国がEUから離脱する現在までは『UK(ユナイテッド・キングダム)』、離脱後は『UK(アンユナイテッド・キングダム』(解体)だそうです。実にうまいネ-ミングである。