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英EU離脱協議、北アイルランド国境問題正念場迎える

モーニングスター
 
英国は3月19日、EU(欧州連合)との第2段階協議の最初の交渉を行い、19年3月のEU離脱後の激変緩和に向けた移行期間の設置でようやく合意に達した。
ただ、最大の難関だった英国領北アイルランドとEU加盟国のアイルランド共和国(南アイルランド)との約500キロにわたる国境を鉄条網や検問所などを設けて厳重に警備する「ハードボーダー」にしないという問題の解決は先送りされ、双方の体裁を繕うだけの中途半端な合意に終わった。それだけに4月から本格的に始まる貿易交渉では、北アイルランド国境問題は正念場を迎えるのは必至で、6月に開かれるEU加盟27カ国の首脳会議までに何らかの合意に達しなければ貿易交渉も平行線が続き、結局、ノーディールに終わる可能性もある。
今回の合意では、17年12月の第1段階協議で合意した、EU離脱後も北アイルランドにEUルールを合致させることでハードボーダーを避けるという解決方法(バックストップオプション条項)をEU離脱条約に盛り込むことが明記された。ただ、英国は納得していない。英国のデービッド・デービスEU離脱担当相も移行期間協議終了後にEU本部で開かれた記者会見で、「もっと良い解決策を見つける。バックストップオプション条項が発動されることがないようにする」と打開策を見出そうとしている。
また、英放送局ITVも協議終了後、メイ政権の連立与党でバックストップオプション条項に強く反対している北アイルランド民主統一党DUP)の反応について、「バックストップオプションがまだEU離脱条約の草案段階にとどまっているという事実に安堵している」と伝えたように、英国とEUは同条項について具体的なことは何も決めておらず両者の隔たりは大きいままだ。
バックストップオプション条項は、包括的貿易協定を結ぶなどの他に有効な解決策が見つからない場合、北アイルランドにハードボーダーを設置しないことを確実にするため、英国領である北アイルランドに離脱後もEU法・ルールに合致させ、EUの関税同盟の一部、つまり、EUの属州にすることを意味する。こうしたEUの要求は “英国いじめ”といわれる所以だが、EUが英国の離脱を阻止したいという意思の表れとも読める。EUにとって、欧州単一市場の完全性を死守するためには英国のEU離脱のあとに続く加盟国離脱の動きを封じ込めることが重要課題となるからだ。
しかし、最近、こうしたEUの強硬路線を弱める可能性があるいくつかの要因が出てきた。一つはメイ英首相が3月2日、ロンドン市長公邸でEU離脱交渉方針について演説し、ロンドン金融街(シティ)の最大の関心事だった、いわゆるパスポート・ルール(単一免許でEU域内での営業が可能な制度)の継続をEUに求めないと明言し、現実路線に転換したことだ。英紙デイリー・テレグラフ紙は同日、「強硬離脱派は英国の主権回復の立場が明確になったとする一方で、EUのミシェル・バルニエ首席交渉官も英国は相矛盾することは求めないというトレードオフの認識を初めて示した」とメイ英首相の演説内容を伝えた。メイ英首相は現実路線への転換によって今後の貿易交渉でEUを懐柔し、妥協を引き出せると考えているようだ。