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企業が英国に見切り

英下院が、欧州連合(EU)から条件が整わないまま離脱する「合意なき離脱」をいったん退けた。だが合意案をめぐる英政府との距離は埋まらず、危ういシナリオが現実化する恐れは残ったまま。政局に翻弄される中、日系を含む多くの企業が英国に見切りをつけ始めており、英当局の楽観的な経済見通しには疑問符がつく。
「短期的、中期的に深刻な混乱をもたらし、長期的にも経済の繁栄を小さくするだろう」。ハモンド財務相は13日の英下院での財政演説で、合意なき離脱に至った場合の悪影響を訴えた。EUとの合意に持ち込めれば、混乱回避に備えるための多額の費用が浮く計算。ハモンド氏は公的サービスの支出拡充や減税が可能になると主張し、議員らの囲い込みに必死だ。
英予算責任局は、EU離脱に伴う投資の停滞などにより、英国の2019年の実質国内総生産(GDP)成長率は1.2%と見込む。09年以来の低水準だ。一方で、20年は1.4%、21~23年は各年1.6%に復調すると皮算用し、打撃は一時的との見方を示す。
経済を支える企業の不安は高まるばかりだ。「合意なき離脱はわれわれにとって打撃となる」。ドイツ自動車大手フォルクスワーゲン(VW)のディース最高経営責任者(CEO)は危機感を隠さない。
VW傘下の高級車ベントレーは英国に本社を構えており、英EU間で円滑な税関手続きができなくなるなど影響が避けられない。VWグループ全体にとっても英国は重要な輸出先だ。
EU離脱を背景に、日系企業の間で「脱英国」の動きが広がる。同国内に生産拠点を構える自動車メーカーでは、ホンダが工場を閉鎖する方向で調整。日産自動車も主力車種の次期モデル生産計画を撤回し、高級車の製造は終了する方針だ。
電機大手のパナソニックは、欧州拠点を英国からオランダ・アムステルダムに移した。塩野義製薬も欧州統括機能のアムステルダム移転を検討している。
英経済界は、事業や雇用を守るために「無秩序な離脱を避ける具体策が必要だ」(英商工会議所)と政府や議員に懸命の訴えを続けている。(ロンドン 共同)