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米国景気後退のサイン

My Big Apple NY

バロンズ誌コラム アップ・アンド・ダウン・ウォールストリート

米国景気後退のサイン

トランプ大統領Fedに利上げ牽制を放つ前から、イールドカーブは黄信号を点灯させてきた。米2年債と米10年債のスプレッドは前週に25bpと、2007年7月以来の水準まで縮小している。
イールドカーブのフラット化は、これまで景気後退のサインとして余りにも有名だ。しかし、別のスプレッドは不吉な兆しを示すものではない。マーケットウォッチのマーク・ハルバート記者は、米短期証券と米10年債のスプレッドを挙げ、元NY連銀エコノミストでレンセラー工科大学のArturo Estrella教授や元FRB理事でコロンビア大学の教授であるフレデリック・ミシュキン氏が使うモデルを基にすれば、景気後退の確率は10%に過ぎない。
イールドカーブは完全無欠の指標とかけ離れており、特に金融危機後の中央銀行による非伝統的政策の後では尚更だ。JPモルガンは、世界全体におけるマイナス金利国債は7月11日時点で9.2兆ドル相当に及ぶと試算。バンク・オブ・アメリカメリルリンチは、イタリアの政局やドイツの連立崩壊危機が欧州の金利を低下させ米国にも波及したと説明する。
MKMパートナーズのマイケル・ダーダ首席エコノミストは、米12ヵ月物と米10年債のスプレッドを注視し、これらが逆イールドとなり、且つ狭義のマネーサプライ(M1)の伸びがマイナスに傾けば、3〜8四半期後に景気後退に陥ると予想する。しかし、現状はどちらもそうはなっていない。
ノーザン・トラストの元首席エコノミストで、現在はレガシー・プライベート・トラストで投資アドバイザーを務めるポール・カスリエル氏も、米12ヵ月物と米10年債の利回りスプレッドを指標と捉え、前週までに43bpへ低下したと指摘する。カスリエル氏によれば、同時にFedが利上げを行うことでマネーサプライが減少、銀行による貸出も鈍化してきたという。

Fedは9月25~26日開催のFOMCで25bpの追加利上げを行うことは確実だが、12月18〜19日開催のFOMCで利上げした場合、カスリエル氏は「2019年に景気後退に陥るリスクに備える必要がある」と主張する。米4〜6月期実質GDP成長率が4.5%増となる見通しで、本当に景気後退に入るのだろうか?
少なくとも、警告シグナルは黄信号を点灯させている。イールドカーブ以外に、ドル高が進行、金先物が下落し、さらに銅先物など産業関連の商品先物が下落し、流動性の伸び鈍化を示唆する。力強く成長し米株相場が過去最高値で推移する陰で、金融引き締めは経済の最大の向かい風であることに変わりはない。

イールドカーブもさることながら、銅先物など商品先物価格の下落は懸念材料です。特に銅先物は6月に過去最高値を更新してから15%下落し、弱気相場に接近中。中国が銅消費の半分を担うなかで、トランプ政権の対中関税措置が嫌気され、ドル高も重石となっていることは明白です。このままいけば、2015年夏に経験した中国ショックの二の舞を踏まないとも言い切れません。9月頃ときて思い出されるのは、2,000億ドルの対中関税措置をめぐる動きです。今年はリーマン・ショック10周年に、ひと波乱あってもおかしくなさそうです。